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長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングスに「二つの恩恵」をもたらしたEASLの“台湾キングス”戦 元NBAジェレミー・リンを封じ大勝

琉球ゴールデンキングス。EASLの“台湾キングス”戦 
元NBA選手のジェレミー・リン(左)とマッチアップするキングスの今村佳太=24日、沖縄アリーナ@琉球ゴールデンキングス

プロバスケットボールの東アジアスーパーリーグ(EASL)に参戦している琉球ゴールデンキングスは24日、元NBA選手のジェレミー・リンを擁する台湾のニュータイペイキングスと沖縄アリーナで対戦し、90ー67で快勝した。

日本、韓国、フィリピン、台湾から前シーズンの上位2チームずつが参戦しているEASL。開催は2回目で、キングスは2シーズン連続で出場している。計8チームがAとBの2グループに分かれ、原則ホーム&アウェーで予選リーグを行い、上位2チームずつが決勝トーナメント(ファイナル4)に進出する。

グループBのキングスはリーグ戦の全6試合を消化して3勝3敗となり、自力で決勝トーナメント進出を決めることはできなかった。2勝2敗となっている韓国のソウルSKナイツが1月31日と2月7日にあるグループステージの残り2試合をいずれも負けることが、キングスが勝ち上がる条件となっている。

この日はEASL初優勝への望みを繋いだという意味で大きな一勝となったが、その他にもキングスにとっては自らに“二つの恩恵”をもたらした意義深い一戦でもあった。

松脇が“3P5本”でけん引 特別指定の脇も攻守で躍動

琉球ゴールデンキングス。EASLの“台湾キングス”戦 
プロ初得点を挙げるなど、攻守で活躍した脇真大@琉球ゴールデンキングス

試合は、序盤からキングスが持ち味のボールムーブメントでフリーをつくり、松脇圭志が高確率でスリーポイントシュート(3P)を沈めた。ただディフェンスでローテーションのミスが散見され、リズムを崩してシュート成功率が悪化。普段は出場機会が少ない荒川颯や植松義也、脇真大らがハッスルしてプレッシャーの強度は上げたものの、35ー40とリードされて前半を折り返した。

しかし、後半に入ると今村佳太と松脇が3連続で3Pを射抜き、すぐに逆転。硬いディフェンスを維持して相手のターンオーバー(ミスから相手に攻撃権が移ること)を誘い、速攻や3Pで一気に突き放した。

ゴールにアタックし続けたアレン・ダーラムはチームトップの21得点を挙げ、松脇は5本の3Pを含む17得点。昨年12月に特別指定選手として加入した白鷗大学4年の脇は、3Pでプロ初得点を挙げ、8得点、2リバウンド、1スティールの活躍で会場を沸かせた。

ディフェンスではニュータイペイキングスのエースであるリンに対し、マッチアップする選手が積極的に間合いを詰めて7ターンオーバーを誘発。わずか8得点、2アシストに抑え、波に乗せなかった。

自身の初得点シーンを振り返った脇は「チームが繋いでくれたパスを自分がしっかり決めることができました。チームメートの選手達もみんな喜んでて、自分もやっと、このチームの一員として馴染めてると思えたので、とても嬉しかったです」と話し、控えめに笑った。

幼い頃からテレビ画面で見ていたリンからスティールを奪った場面もあり、「こういう機会がないとマッチアップできないので『何かやってやろう』『抜かれたくない』という気持ちはありました。止めることができて良かったです」と振り返った。Bリーグの試合でも「もっと自分の名を上げられるように、どんどんこのチームに馴染んで、プレータイムを勝ち取っていきたいです」と意欲を見せた。

苦しみの中に“光明”「これを続けていけるように…」

琉球ゴールデンキングス。EASLの“台湾キングス”戦 
ベンチで指示を出す桶谷大ヘッドコーチ@琉球ゴールデンキングス

将来有望な若手にとってメモリアルなゲームとなったこの試合。前述のように、キングスや沖縄アリーナという施設にとっても大きな意味を持つ一戦となった。
 
一つ目は、最近の苦しい戦いに“光明”が差し込んだことである。

Bリーグに目を向けると、キングスはレギュラーシーズンの全60試合中31試合を終えた現時点で21勝10敗、西地区首位に立っている。しかし、調子が良いかというと、首を縦に振れる状況にはない。

1月の成績は2勝4敗と負け越しており、1月6日にアウェーで行われた中地区のファイティングイーグルス名古屋戦では今季最少の57得点しか奪えず、試合後のロッカールームでは桶谷大ヘッドコーチ(HC)が「ふざけるな」と喝を入れたことを自ら明かしている。審判の判定に不満を溜めてプレーが荒くなったり、1対1を仕掛ける場面が増えてチームワークに綻びが見えていた。

BリーグとEASLを並行して戦う過密日程で練習日が極めて少なく、チーム作りに苦慮している点が不調の要因となっていた。

それでも最近は少しずつチームで戦う姿勢を取り戻してきていた中で、ニュータイペイキングス戦ではオフェンスの改善が顕著に表れた。桶谷HCも「何試合かぶりに非常にボールがよく回り、これをやり続けられたら、どこのチームも自分たちのオフェンスを止められなくなるんじゃないかというぐらい良いボールムーブメントができました」と高く評価した。

キングスが得点を90点台に乗せたのは、BリーグとEASLを通じて昨年11月12日にホームで行った島根スサノオマジック戦以来で、実に2カ月以上ぶり。攻守で際立った活躍を見せた松脇は「これをいつも出せるようにすることが課題なので、キングスらしいバスケを続けていきたいです」と展望した。

「沖縄を世界へ」増える世界的名選手の“足跡”

琉球ゴールデンキングス。EASLの“台湾キングス”戦 
試合中、アリーナ内のスクリーンに度々映し出されていた「沖縄を世界へ」の文字

もう一つ、この試合が大きな意義を持った理由は、また一人、世界的に有名なバスケットボール選手が沖縄アリーナに足跡を残したことである。

台湾系アメリカ人で元NBA選手のジェレミー・リンは全くの無名だった2012年、当時低迷が続いていたニューヨーク・ニックスで毎試合20〜30得点を荒稼ぎするセンセーショナルな活躍を見せ、チームを立て続けに勝利に導いた。圧巻のプレーは世界中のNBAファンを熱狂させ、その現象は“リンサニティ”(「Insanity=熱狂」と名前を掛け合わせた造語)と称された。

沖縄アリーナでは、昨夏のワールドカップでもNBAのトッププレーヤーであるスロベニアのルカ・ドンチッチや、優勝国ドイツのデニス・シュルーダーなど著名な選手が何人もコートに立っている。

今シーズン、キングスが「沖縄を世界へ」という挑戦を掲げる中、桶谷HCはこの現状に対して「NBAでプレーし、そこで活躍した選手が沖縄アリーナに来てくれることは本当に素晴らしいことだと思います。クラブで国際大会に出られるという意味で、EASLもとても意義のある大会だと思います」と語る。

リンも沖縄アリーナは「この雰囲気が素晴らしいと思わない人は、この世にいないと思います。素晴らしいアリーナで、ファンもすごい」と好印象だったよう。続けて「Just unfortunately for us. A bad memory.(私たちにとっては残念なことです。嫌な記憶になった)」と語り、独特な言い回して高く評価した。

世界的スターの足跡を蓄積していけば、アリーナの存在がより広く認知されるようになり、それに伴って価値が向上していくことは間違いない。キングスは将来的にNBAチームを沖縄アリーナに招くことも構想しているが、それすらも近い将来実現する可能性は十分にありそうだ。

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