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稲嶺 羊輔

稲嶺 羊輔

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】

稲嶺羊輔アナウンサー(OTV 沖縄テレビ)のいつも笑顔で!

だいぶ久しぶりのコラム更新となってしまいました…

人様にお見せするような日常を送っておらずプライベートについて書くことがあまりないことに加え、取材先などでコラム用の写真を撮るのをいつも忘れていまして、

「映像で表現できないことを原稿で書くんじゃない!」と入社時から口酸っぱく言われてきた報道部の黄金言葉(くがにくとぅば)を盾に、コラム執筆を放棄するという暴挙に出ておりました。反省。

2024年は、何とか知恵を絞って続けていきたい…

かなり前に書いた発声練習のコラムが今も色んな方に読んでいただけているということなので、今回もアナウンスに関する内容にしたいと思います。

【アナウンサーのルーティーン】発声練習ってどんなことをしているの?

ニュースのオンエアに向けて、時にアナウンサーが自分で原稿を書くこともありますが、多くの場合は記者が取材した内容を原稿化し、デスクのチェックが入ったうえでアナウンサーが放送に臨みます。

そこで今回ご紹介するのは、
より正しく、より分かりやすく情報を伝えるために「書き込み」を行った原稿です。

それでは早速見ていきましょう!

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
(リードと呼ばれ、VTRに入る前にアナウンサーが画面に映っている状態で読む部分です)

★以下、青字部分は心の声と思ってご覧ください。

全国最下位が続く沖縄の「県民所得」。

別のことをしながらテレビを観ている人が、耳で聞くだけでも「ここから新しいニュース項目が始まったんだな」ということが分かるように、全国最下位という言葉を少しだけ強調して視聴者の注意を引こう。「県民所得」は大事なキーワードなので〇をつけておこう。

※例えば夕方のニュースは仕事帰りの車内で音だけを聞いている人、夕ご飯の準備をしながらテレビを流している人も多い時間帯なので、前のニュース項目からの転換は特に意識しています。
※小さな意味の切れ目を作る際に(、)という記号を付けています。

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
改めて掲載

これまでは仕事に就いているかいなかが全国との格差の主な要因でしたが

初めて出てくる情報なので、サラッと読んでしまうと意味が伝わりにくくなるかもしれない。意図的に読むスピードを少しだけ落として読もう。大事な情報だけどここが一番の肝ではないので、声の高さでは強調しない。

※チェンジオブペースといって、あえてその部分だけをゆっくり読むことで視聴者に「ここが大事なんだ」という注意を引く技術です。

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
改めて掲載

最新の分析では

ここは特に強調する部分ではないので、さらっと

「労働生産性の低さ」が所得格差につながっていることがわかってきました。

このブロックがこのリードの肝だ!一番伝えたい部分だ!と自分で認識しやすいように□で囲おう。「労働生産性の低さ」はその中でもキーワードだから波線を引いて、音域も少し高めに出すことで強調しよう。

こんなことを考えながら、原稿に書き込みをしています。

2枚目以降も全て解説するとものすごく長くなってしまうので一部割愛させていただきますが、

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
原稿2枚目

「く」に「、」を付けている部分
通常の「、」よりもしっかり語尾を落として間も十分にとる

「↓」を付けている部分
声の入りが高くならないように意識して読む

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
原稿3枚目
アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
原稿4枚目

「なぜ」の「な」で声を高くするためにスラッシュ

アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
原稿5枚目
アナウンサーの原稿は書き込みだらけ!? 正しく情報を伝えるために意識していることとは【稲嶺羊輔の いつも笑顔で!】
原稿6枚目

「観光業の高付加価値化」と「成長性がより高い分野への労働力人口の移動」
どちらか一方だけを強調するものではないので、なるべく対等の関係で読めるように、それぞれを□で囲って並列であることを意識

こんな感じで自分だけの原稿に仕上げていきます。

この書き込みの方法は、アナウンサーによって千差万別です。
最初はフォーマットのようなものを教えてもらえるのですが、最終的には自分が認識しやすいことが一番重要なので、徐々にアレンジしていって「オンリーワン」の書き込みにたどり着きます。

同じ原稿でも、より意味が伝わるようなニュース読みを目指していきたいものです。
(今年入社10年目を迎えますが、今も反省の日々…)

AIの自動音声が普及しつつある中、そのニュースの肝がどこにあるのかを正確に捉えた上で、時にはメリハリをつけ、正確でありながらも無機質にならないようにすることが、私たちがアナウンサーとして今後も生き残っていくための重要なスキルの一つだと思っています。

まだまだ甘ちゃんですが、色んなことを考えて原稿を読んでいるということが少しでも伝われば幸いです。

ニュースを正しく分かりやすく届けること。

そして、コラムを期限内にしっかりと書くこと。

それがアナウンサーとして大事なことではないでしょうか。

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