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キングスファンが育ててくれた僕の“ディフェンス愛” #34 小野寺祥太<下>

キングスファンが育ててくれた僕の“ディフェンス愛” #34 小野寺祥太<上>はこちらから

キングスには点を取れる選手が何人もいる。それ以外で貢献できることがディフェンスだった

 キングスに入団した2019-20シーズンは岸本隆一選手や並里成選手(群馬クレインサンダーズ)、ベテランの石崎巧選手というすごいポイントガードが3人もいて、もし試合に出られなくても、この人たちと練習したら自分の成長に繋がるんじゃないか、とさえ思っていた。

 実際、僕は「アグレッシブにやればいい」くらいの考え方だったけど、みんなピック&ロールや緩急の使い方が本当に上手くて、練習でディフェンスをしていても、とてもやりづらさがあった。

 その時に思ったのは、「キングスには得点を取れる選手が多い」ということ。だから、それ以外の部分で自分がチームに貢献できることは何かな、と考えた時、キャリアの中で一番力を入れてきたディフェンスだった。それは、岩手の時も、秋田の時もそうだった。このシーズンは橋本竜馬選手(アルバルク東京)が退団した後だったから、そこの部分を補いたい、という思いもあった。

 ちなみに、僕がプロの世界に入ってから一緒にプレーしてみたい、と思っていた選手の一人が橋本選手。あとは藤井祐眞選手(川崎ブレイブサンダース)。2人ともディフェンスのエナジーが凄くて、ワンストップで会場の流れをチームに持ってくることができる。そういうプレーヤーになれたらいいな、と思ってやってきた。

 キングス1年目のシーズン、なかなか試合に出られない時期もあった。でも、アルバルク東京との試合で佐々さんに「流れを変えてきてほしい」と言われてコートに送り出されたことがあって、その時に2スティールくらいできた。それ以降は信頼を得られたのか、「ディフェンスをしてほしい」と言われて、プレータイムも増えた。

僕の強みは「はがされても追い付ける」こと。今は“手の使い方”を練習している

 キングスに入団してからディフェンスがだんだん良くなってきているのは、自分でもすごく感じている。先にも書いたように、以前は「ハードワークすればいい」「ハッスルすればいい」という精神だったけど、スタッフ陣の助けもあり、相手のスカウティングを基にしたディフェンスや守り方のスキルも増えてきた。

 自分で言うのは少し恥ずかしいが、僕のディフェンスの強みは「はがされても追い付ける能力」だと思っている。学生の頃から身体能力は高い方だったから、それを生かしてビッグマンのスクリーンとかでズレを作られても、素早く動いてマッチアップする選手に追い付く。それはオンボールの時もオフボールの時も同じ。そこはとても意識している。

 今はスクリーンが来た時の手の使い方もよく練習している。それは、オフェンスとディフェンスの間に入る時の手の使い方。そういう細かい部分を突き詰めることが、自分の入るスペースを作ることに繋がる。

 もちろん、マッチアップする選手によっても守り方は違う。スリーポイント(3P)が得意な選手であれば厳しくハンドチェックするし、ドライブが好きな選手であれば間を開けて対応することも多い。いかに相手の苦手なプレーをさせるか、ということを意識している。

 昨シーズンは桶さん(桶谷大ヘッドコーチ)が信頼してくれたからか分からないが、トッププレーヤーにつかせてもらう機会も増えた。中でも河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)は特に印象に残っている。スピード、パス、3P、全てのレベルが高くて、一人で45点を取られた昨シーズンの天皇杯準決勝は本当にやりづらかった。今シーズンの序盤で対戦した時は前回のイメージもあったから、コーチ陣とコミュニケーションを取りながら少しはうまく守れたと思う。

 相手の何を消すのか、どういうプレーをさせるのか。常に考えながらプレーしている。ここまで頭を使ってディフェンスをするようになったのは、キングスに来てからの成長だと思う。

キングスファンはディフェンスで盛り上がってくれる。あれがめちゃくちゃ嬉しい。

 シンプルな表現だが、ディフェンスは好きだ。特にキングスのファンはいいディフェンスをしたらとても沸いてくれるから、本当にやりがいがある。

 初めは驚いた。自分がいつものようにディフェンスをしていたら、急に「おおっ」と会場が沸いて、最初は僕じゃないマッチアップの人が何かしたのかな、と思った。そしたら、自分のディフェンスに対する反応だった。

 バスケはダンクとかオフェンスのビッグプレーでよく盛り上がるけど、キングスファンはルーズボールへの飛び込みとか、いいディフェンスで沸く。本当にみんなバスケが好きなんだな、というのが分かる。自分のディフェンスで盛り上がってくれている時は、どんな反応をしていいか分からないから、ちょっとスカした感じになっているけど、内心ではめちゃくちゃ嬉しい。何度でも言いたい。あれはめちゃくちゃ嬉しい。

 今、キングス在籍5シーズン目だが、そういう雰囲気の中でプレーし続けたことでディフェンスがどんどん好きになっていった。

 基本的な考え方はキングスに入団した時と変わっていない。僕がディフェンスに特化すれば、ボールハンドラーをしている岸本選手や今村選手も気持ち良くオフェンスができる。彼らは得点を取る役割もあるから、ディフェンスでも相手のエース級と常にマッチアップすると負担が大きい。僕がディフェンスの1ピースとしていることで、チームとしても戦い方がだいぶ変わると思う。

 オフェンス面の意識はずっと同じ。良いハンドラー、良いスクリーナー、良いリバウンダーがいて、チームメイトに恵まれているから、ワイドオープンになったら打つ、ということだけを意識している。昨シーズン後半くらいから、今村選手のキックアウトなどから3Pの成功率も上がってきた。空いた時にシュートを打たないとチーム全体の流れが悪くなるから、決め切れるように努力している。

チームにはいろんな役割がある。時には折れることも大事。貢献できることを考える。

 もちろんこれからもキャリアは続くけど、本当に続けてきて良かったと思っている。怪我をしたり、出場機会が少ない時期もあったりしたけど、バスケを始めた時の夢だったプロ選手になれて、その次の目標だった優勝も達成できた。昨シーズン、優勝した瞬間は今までやってきたことを思い出し、込み上げてくるものがあった。横浜アリーナのコートで、涙目になっていた。

 今11年目のシーズンに入っているが、ポジティブな気持ちでやってきたことが一番良かったと思う。ネガティブになると自分にとっても良くないし、チームにも伝染してしまう。

 自分のキャリアを通じて思うことは、少し表現が良くないかもしれないが、時には折れる事も大事だということ。言い換えれば、自分にできることを見極めるということだ。そして、それを体現するために行動する。それが、一番大切。

 昨シーズンが終わった後のオフシーズンに、地元の岩手県で小学生を対象にクリニックをする機会があった。その時、子どもたちに聞いてみた。

 「オフェンスで点を取ることも大事だけど、それ以外だったら何をする人がいる?」

 すると、あまり答えられない。もう一つ聞いてみた。

 「自分がコートに立てなかったら、何ができる?」

 それも、あまり答えられなかった。

 その時に伝えたことは、バスケットボールにはいろんな役割がある、ということ。もちろん得点をたくさん取りたいという気持ちはみんなあると思うけど、試合に勝つためにはオフェンスも大事だし、ディフェンスも絶対に大事。自分が得点を取れないなら、ディフェンスで貢献することもできる。ベンチにいても、声を出したりしてチームを鼓舞することもできる。それも大切なことだよ、という話をした。

 僕のプレーを見て、そういう事を少しでも感じてくれたら嬉しいし、そのためにも、もっとプレーヤーとして進化していきたい。キングスファンの、熱い“ディフェンス愛”にも支えられながら。

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#34 小野寺祥太

1994年11月6日生まれ。岩手県出身。
高校卒業後の2013年にプロキャリアをスタートし、2019-20シーズンにキングスに加入。キングスのディフェンスの要として、流れを引き寄せるプレーが魅力。オフは家族で過ごし、子どもと遊ぶことが趣味。

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