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長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングス「地区7連覇」懸かる天王山へ 唯一“今季未勝利”の名古屋Dに勝つポイントは…

琉球ゴールデンキングス
琉球ゴールデンキングスのゴール下を支えるジャック・クーリー=21日、沖縄アリーナ©琉球ゴールデンキングス

Bリーグ1部(B1)西地区の優勝マジックを「2」としている琉球ゴールデンキングスが27、28の両日、地区7連覇に向けて天王山の戦いを迎える。相手は3ゲーム差でキングスを追う同地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(名古屋D)。舞台は名古屋Dのホームである愛知県のドルフィンズアリーナで、両日とも午後3時5分にティップオフされる。

キングスは1勝すればマジックを一気に二つ減らし、地区優勝、そしてチャンピオンシップ(CS)の準々決勝をホームの沖縄アリーナで開催することが決まる。

ただ当然のことながら、西地区の頂上決戦を制するのはそう簡単ではない。特に名古屋Dとは今季、ホームとアウェーで1試合ずつを行い、いずれも75ー77(今年1月17日、アウェー)、95ー98(4月10日、ホーム)で惜敗。これまでレギュラーシーズン全60試合のうち56試合を消化し、キングスは23チーム全てと対戦したが、唯一名古屋Dからは勝利を挙げられていないのだ。

両チームのスタッツ(統計)や過去2試合の結果、選手らのコメントから、今週末に迫った大一番における勝利のポイントを探る。

“速さ”に違いも、オフェンス力はほぼ互角か

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レイアップシュートに行く岸本隆一©琉球ゴールデンキングス

まず、両チームの主要なスタッツを比較する。左がキングス、右が名古屋Dの数字で、カッコ内はリーグ全24チームのうちの順位。
太字はより順位が高いチームである。
平均得点     83.1点(4位):84.1点(3位)
平均失点     77.7点(9位):79.6点(13位)
平均アシスト数  17.6本(18位):21.7本(2位)
平均リバウンド数 41.0本(2位):41.9本(1位)
3P成功率     34.3%(7位):36.9%(2位)

これらのスタッツから一目瞭然だが、名古屋Dはリーグでもトップクラスの攻撃力を備える。5人全員がスリーポイントライン付近にポジションを取る「ファイブアウト」などでうまくコート上にスペースをつくり、ドライブからの合わせやスリーポイントシュート(3P)で得点を量産する。

オールコートプレスやゾーンなど様々な形を駆使する「チェンジングディフェンス」でプレッシャーを掛け、ボールを奪ってからの速攻も武器だ。オフェンスリバウンドからの得点は名古屋Dが14.7点(リーグ2位)、キングスが14.6点(同3位)でほぼ同程度だが、速攻での得点はキングスが7.0点(同22位)なのに対し、名古屋Dは13.0点(同4位)と大きく上回る。

特に司令塔として多彩なオフェンスパターンを持つ齋藤拓実と、得点とリバウンドでチームトップの数字を残すスコット・エサトンのコンビは強烈。スクリーンをかけるピックプレーからディフェンスを崩し、二人とも内外から得点できるため要警戒だ。

ここまでの数字を見ると、オフェンス力においてはキングスが劣勢に思えるかもしれないが、実はそうでもない。それを証明するのが、スタッツの中にある「オフェンシブレーティング」という項目だ。これは100回の攻撃における平均得点を示す数字で、そのチームのオフェンス能力を最も的確に表す統計とされる。

このオフェンシブレーティングでは、キングスが115.4点(リーグ5位)、名古屋Dが114.0点(6位)で、若干キングスに分がある。キングスはジャック・クーリーやアレン・ダーラム、アレックス・カークなど重量級のインサイド陣を擁し、スローペースな攻撃を主としているため、ハイペースな名古屋Dに比べて1試合における攻撃回数が少ない。ただ得点する効率が良いため、オフェンシブレーティングでは数字が高いのだ。

とはいえ、この統計でも大きな差はなく、どちらもリーグトップクラスの攻撃力を有していることは間違いない。互いに層が厚く、オフェンス能力に関してはほぼ互角と見ていいだろう。

成功率「40〜50%台」の3Pをどう止めるか

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ベンチで指示を出す桶谷大HC©琉球ゴールデンキングス

そうなると、勝敗を分ける最大のポイントはディフェンスだ。どちらがより、相手のいい部分を消すことができるかが見どころになる。直近の試合である21日の長崎ヴェルカ戦後の会見で、名古屋D戦における勝利の鍵を聞いた際、今村佳太もこう語っていた。
 
「名古屋Dとの試合では、特にオフェンスで相手に好きにやらせてしまう時間帯が多いなと思っています。コートに出てる5人に対して、どれだけ自分たちがフラストレーションを溜めさせることができるか、名古屋Dのリズムを狂わせることができるかが大事だと思います」

特に警戒すべきは3Pである。1月17日の試合では14本中8本(成功率57.1%)、延長戦までもつれた4月10日の試合では33本中14本(同42.4%)の高確率で決められた。名古屋Dはピックプレーからディフェンスのズレを作って外にパスを振ったり、速攻の流れからそのまま3Pを打ったりするため、1対1での高い強度、緻密なディフェンスの連係で対抗したい。

なかでも2017〜19年にキングスに所属し、現在日本代表候補でもある須田侑太郎は要注意だ。キングスが敗れた2試合とも、試合時間残り十数秒で勝負を決める3Pを沈めており、極めて勝負強い。最も乗せたくない相手だ。

4月10日の試合では、キングスは名古屋Dの3Pに対し、コート上の5人のサイズを大きくしてスイッチディフェンスで守ったりするなど、工夫が見えた。試合後、桶谷大HCが「3Pで簡単なシュートを打たれた場面もありました。もしかしたら何かに反応し過ぎてる可能性もある。あと2回名古屋Dとの試合があるので、もう一回映像を見て修正したいと思います」と語っていたため、次節での守り方に注目だ。

「勝利への貪欲さ」を体現できるか

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ドリブルでアタックする小野寺祥太©琉球ゴールデンキングス

もう一つ注目したいポイントがある。勝利への貪欲さを前面に出し、どれだけエナジー全開で戦えるか、である。7点差で敗れた直近の長崎戦では、前日に31点差で大敗してリベンジを誓う相手に気迫で上回られ、相手の勢いを最後まで止められなかった印象だった。

試合後に「プレーオフ以上の強度で、きょうの長崎さんは強かったです」と相手を称賛した桶谷HCも「特にディフェンスのところではすごい圧を掛けてきました。逆に自分たちがあれぐらい掛けに行かないといけなかったのかな、ということも感じています」と課題を口にした。

一方、長崎との連戦の前にあった17日の佐賀バルーナーズ戦では、一つ一つのプレーの重要度が増す延長戦で小野寺祥太と松脇圭志が激しいディフェンスからスティールを奪うなどして流れを引き寄せ、接戦を勝ち切った。21日の長崎戦後、岸本隆一はこう語った。

「ディフェンスでジャックがブロックショットを決めるなど、自分たちも強度やマインドセットなどの面でCSの準備ができてきていると思っています。結果は負けましたが、ポジティブな要素もたくさんありました」

レギュラーシーズンの最終盤に迎える西地区頂上決戦はもちろんのこと、その先にあるCSも見据え、プレーの強度のスタンダードを高い状態でキープすることが求められるキングス。それを体現できれば、自ずと名古屋D戦での勝利も見えてくるはずだ。

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