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OTV報道部

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辺野古移設で翻弄された街 名護市長選挙 市民の選択は…

1月23日に投開票された名護市長選挙は現職の渡具知武豊氏が新人の岸本洋平氏を5,000票あまりの差をつけ破り、2期目の当選を果たした。

名護市長選2022

岸本 14,439票
渡具知 19,524票
投票率 68.32パーセント 前回4年前を8・6ポイント下回り過去最低となった。

名護市長選2022

渡具知氏は普天間基地の名護市辺野古への移設について、「国と県の裁判の行方を見守る」として、一貫して賛否を示さなかった。

一方、新人の岸本洋平氏は移設阻止を前面に打ち出して選挙戦を戦うも及ばなかった。

名護市長選2022

渡具知氏 1月24日 選挙から一夜明け
「あと4年間市民の負託を受けたわけですから掲げた公約の達成に向けて頑張っていきたいと思います。」

当選翌日、渡具知氏は新型コロナウイルスで打撃を受けた
地域経済の立て直しなど2期目の市政運営に当たる決意を語り、政府が進める普天間基地の辺野古移設については改めて国と県の裁判を見守る姿勢を強調した。

市民の判断は―勝因と敗因―

沖縄テレビが選挙の1週間前に実施した情勢調査では投票する際に重視する政策として、基地問題と経済振興・雇用対策が拮抗した。

名護市長選2022

今回の名護市長選挙は普天間基地の移設先として辺野古が浮上してから7度目の選挙。
市民は選挙のたびに安全保障という重いテーマを背負わされてきた。

名護市長選2022

市民の声
「政策もそんなに変わらないと思うんですけど、現職の方がこの4年間の成果が表れたと思います。」
「今から工事をまた中止にするとなると、この土砂はどうなってしまうんですかってなってしまいますし、そこはちょっと難しいところだと思います。」
「基地のことはね賛成という人はいませんよ。だけど(再編交付金)15億円が迷惑料として入ってくる。やっぱりこれが勝敗に繋がったと思う」

過去には移設反対を掲げる市長が誕生したこともあったが、政府は選挙結果や2年前に行われた県民投票の結果にかかわらず辺野古移設を進めている。

期日前投票と投票日に実施した出口調査では移設問題の解決策について「わからない」と答えた人が2番目に多くなった。市民の間には諦め感や無力感が生まれていてなかなか解決しない基地問題より経済を優先した有権者が一定数いたとも考えられる。

渡具知氏が実現させた給食費などの無償化は辺野古移設を受け入れることを条件に、政府が支給する再編交付金が財源で、今後も積極的に活用する考えを示している。
岸本氏は再編交付金に頼らずに無償化を継続するとアピールした。しかし、十分に浸透していなかったことが結果から読み取れる。

渡具知陣営―勝因―関係者はこう分析した

選対関係者
「無償化3点セットはかなり効果があった。街頭での市民からの反応はかなりいい。実績が評価された。評価できる市長を刷新する必要はないと市民は感じているはず。」
「相手は争点の設定を誤った。」
「基地問題に寄り添うリーダーよりも自分たちの生活に寄り添うリーダーが好ましく映った。」

渡具知氏は1期4年で実現した学校給食費、保育料、子ども医療費を無償化した実績を強調し、中心市街地の活性化など経済政策を重点的に訴え有権者に浸透した結果が勝利につながったとみられる。

岸本陣営―敗因―関係者の総括

「コロナが流行して玉城県政の選挙はすべて負けている。県議選、衆院選。コロナで政権が対策を打つ、コロナだから暮らしという話になる。」
「名護で今まで何度も基地問題が争点になる中、前回賛否を言わなかった人に負けた。普通に考えて基地だけじゃあ勝てないことは4年前にわかっていた。」
「子育て無償化という相手の土俵に乗ると差別化が図れず、有権者は現職でいいと思う。それプラスアルファがないと振り向いてもらえない。再編交付金を活用しないことをもっと浸透させるやり方があったはずだったが・・」

選挙イヤーの行方を占う試金石と位置付けられた選挙 今後の県内政局への影響は・・・

夏には参院選、秋には県内最大の政治決戦、県知事選も予定され県政奪還を目指す自民・公明は大きな弾みとなった。

自民党 茂木幹事長 1月23日

名護市長選2022

「大きな勝利だと思っているところであります。今年は参議院選挙、そして沖縄では秋に知事選もまいります。選挙イヤーの大切な最初の選挙で大きな勝利を飾ることができた、良いスタートを切ることができた。」

政府からすれば普天間基地の辺野古移設は同盟国アメリカとの約束事。
この国策を推し進めるためには地元の民意という大義が求められ移設に異論を唱えない
渡具知氏の再選が必要だった。

松野官房長官 1月24日
「辺野古移設の工事を着実に進めていくことこそが普天間基地の一日も早い全面返還を実現し危険性を除去する事につながるとの考えに変わりありません。今後とも名護市をはじめとする地元のみなさまのご理解を得る努力を続ける。」

一方、移設計画をめぐり政府と対峙する玉城知事、そして辺野古移設反対の民意をよりどころとするオール沖縄にとって岸本氏の敗北は大打撃となった。

玉城知事 23日夜

名護市長選2022

「選挙の結果は我々も真摯に受け止めて、志を共にする方が、今回名護市長選挙では残念ながら届かなかったというようなこともしっかり真摯に受けとめて自分なりに分析をし、それを具体化していきたいと思います。」

オール沖縄は経済界の離脱や去年の衆院選で自公の得票を下回ったことでその退潮を指摘する声が強まっている。

今回の選挙でも支援する候補が敗北したことは辺野古阻止を最大公約数としてまとまったオール沖縄に地域の実情に即した課題の解決は望めないとする有権者の厳しい声が突き付けられたとも言えそうだ。

執筆:松本早織
沖縄県出身 知念高校卒業後、沖縄国際大学に進学 2010年に沖縄テレビに入社
2016年に報道部配属 現在、県政担当記者

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