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東京から移住して13年目。海と風、月桃の香りに包まれて”石垣島”で見つけた自分らしい暮らし『教えて島暮らし〜沖縄移住者の声〜』

東京から沖縄本島の那覇まで南西に約1,600km、那覇からさらに南西に約400~500km離れた場所に位置する八重山諸島は、石垣島を中心とした12の有人島と多くの無人島から構成されています。
この連載では、石垣島を中心に八重山諸島の島々に暮らす移住者から「島暮らし」のリアルな体験談や想いを紹介していきます。
今回は、東京から移住して13年目、栃木県出身の髙橋直美(たかはし なおみ)さん53歳を紹介します。
目次
東京から石垣島へ移住
Q:出身地はどこですか?石垣島へ移住して何年目になりますか?
A:栃木県出身、高校卒業後東京へ。石垣島へ移住して13年目になります。
Q:家族構成を教えてください。
A:主人と二人です。
島の植物「月桃」に魅せられて

Q:お仕事は何をしていますか?
A:「癒布(ゆうふ)」という名前で、服飾作家をしております。主にリネン服や布小物を製作しております。移住して出逢った「月桃」という植物にはまり、月桃染めを始めました。
月桃は、お茶にしたり、民具づくりの材料にしたり、虫除けや、スキンローションなどに使用したりと、昔から島の暮らしの中で大切に受け継がれてきた植物です。



また、東京で暮らしていた頃から洋裁教室を主催しており、石垣島やオンラインでも教室を続けています。
子育て中のお母さんが、家で子どもを見ながら手仕事で収入が得られるようになったら良いなという想いがあり、そんな活動を応援できるような洋裁教室にしていけたらと考えています。

毎年開催される石垣島の作り手が一斉に集う「石垣島てづくり市」の運営を、2019年に前主催者から引き継いで運営しています。
最近では、若い世代が今後引き継いで行けるように、運営を手伝ってもらったり、活動を共に頑張ったりしています。

海が見える家

Q:石垣島でのお住まいはどうしていますか?(アパート、一軒家を借りている、島の人から家を購入したなど)
A :一軒家をお借りしてます。家の前には月桃の葉が茂っていて、窓からは海が見えるところが気に入っています。

Q:石垣島へ移住した理由を教えてください。
A:主人と石垣島に旅行に来て、いいなと思って。主人がやりたい仕事がこちらでできることになったので一緒に移住してきました。
Q:石垣島の魅力を教えてください、それはなぜですか?
A:石垣島の魅力は、やっぱり自然と人の温かさだと思います。
青い海や緑の山々、広い空や夕焼け、夜に広がる満天の星空。色とりどりの花や植物も豊かで、どこにいても自然に包まれているのを感じます。
そこに三線の音が響き、年間を通した祭り事があり、織物や染物といった手仕事も暮らしの中に息づいています。昔から続くものを大切にしながら暮らす島の人たちの姿も、とても魅力的です。
特別な理由があるわけではなくて、ただ石垣島が好きで、自然がそばにあるだけで十分に幸せを感じられる。そんなところが、この島のいちばん好きなところです。

石垣島への移住のメリットとデメリット
Q:石垣島へ移住してよかったことを教えてください。
A:日々、自然を感じながら、一年中暖かな気候で過ごせることです。
鳥の鳴き声や海風、強い日差しや美しい星空…そうした自然と共に暮らせるのは、本当に豊かだなと感じます。もちろん台風や日焼け、塩害やカビなど大変なこともありますが、そのすべてを含めて「人は大自然の中で共存しているのだな」と感じられるようになりました。
Q:石垣島へ移住して困ったことはありますか?
A:仕事で使う材料が届かず、予定どおりに進められなくてアタフタしたことは何度もあります。
Q:石垣島の医療はどうですか?
A:石垣島では医療に不安を感じることが多いです。だからこそ、普段から食事や運動に気をつけたり、定期的に健診を受けるようにしています。移住後に結婚し、40歳を過ぎて流産を経験しました。不妊治療を希望して産婦人科を受診した際、「出身地で受けた方がよい」と言われ、治療を受けられなかったことはとてもショックでした。
また、乳がん健診で再検査となったとき、「石垣島では手術ができない」と告げられ大きな不安を感じました。最終的に東京の病院で診てもらったところ異常はなく、安心できましたが、医療の選択肢が限られていることを実感しました。
石垣島での暮らし
Q:地域の行事に参加していますか?
A:現在の集落に引越してきて、初めて豊年祭に参加しました。基本的に踊りが苦手で不安もありましたが、先輩方に「楽しめばいいさ〜」と声をかけてもらい、本番はあっという間で、とても楽しい時間になりました。先輩と誘ってくれた友人に感謝してます。
また、「石垣島てづくり市」の主催を引き受けて6年になります。地域のビーチクリーン(海岸清掃活動)にも参加しています。
Q:本土に帰ることがあればどのくらいの頻度で帰りますか?
A:両親が高齢なので、何かしら仕事を作っては、年に4〜5回は帰るようにしています。

Q:石垣島での普段の買い物はどうしていますか?
A:地元のマーケットやスーパーで買い物をしたり、最近は「オイシックス」のお世話になっています。材料や日用品もネットで買うことが多いです。
石垣島のために、好きな仕事を通してできること
今後の目標や、やってみたいことを聞きました。
「石垣島てづくり市」では、次の展開を考えております。アンテナショップになる場所を作ったり、島の素敵な作家さんの作品を海外や全国の皆さんにも手に取っていただけるように、石垣島外へのイベントの出展やポップアップの開催を考えたりしています。
また、石垣島では織物をされている方が多く、昔に織った反物が家に眠っていることもあるようです。そんな反物をオーダーメイドで洋服に仕立てるお手伝いができたら良いなと考えています。
こんな素敵な島に住んでいるので、何かのかたちで、石垣島に貢献したいと思い模索中です。
島のために、好きな仕事を通して貢献できる道を模索する髙橋さんの生き方からは、石垣島という新たに選んだ住処への感謝の心と敬意を感じます。

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