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くらしと経済編集部

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船舶の自動運転に向けて、動き出す日本

小林
こんにちは。小林美沙希です。
近年、急速に発展してきている「自動運転」の技術。今日は、その中でも船舶の自動運転について、その最新事情を、野村証券那覇支店支店長の宮里洋介さんに伺います。宜しくお願いします。

船舶の自動運転に向けて、動き出す日本

宮里 
よろしくおねがいします。

小林 
車の自動運転はよく見かけるようになってきましたが、船も自動運転の時代になるということでしょうか。

宮里
はい。自動運転については車だけでなく船の分野でも技術開発が加速しています。
しかし車の自動運転と比較して、船の自動運転を行うには、周囲の環境の違いや、船ごとの大きさや仕組みの違い、そして複数の人が作業を分担して運行に関わることなどの前提条件が異なるため、よりハードルが高くなっています。

小林 
そもそも船の自動運転は、なぜ必要なのでしょうか。

宮里
船の自動運転が求められる背景にある三つの課題と、自動運転化がもたらす効果について見てみましょう。
まず一つ目の課題は、海難事故を減らす必要があることです。AIなどの判断を活用する自動運転を導入することで、人的ミスに起因する海難事故を防止できると考えられています。

2つ目の課題は、離島の海上交通が不便であることです。日本には有人の離島が約400ありますが、生活航路の便数が不足しています。自動運行船であれば、人手やコストをかけずに、航路を維持できるだけでなく、増やせる可能性も出てきます。

そして3つ目は、少子高齢化による船員不足です。運転が自動化できれば作業を効率化でき人手不足の解消につながります。

船の自動運転が求められる背景にある課題

小林
船の自動運転の技術開発は、現在どのような段階にあるのでしょうか。

宮里
はい。国土交通省では、2018年に自動運行船の実用化に向けたロードマップを策定しました。これによると現在はフェーズⅠの段階で、自動運転システムが最適な航路の提案や、エンジン異常などを知らせて船員を支援するという段階です。

自動運行船の実用化に向けたロードマップ

宮里
2025年のフェーズⅡでは、船の上で検知した情報やビックデータをAIが解析して船員が取るべき行動を提案します。また陸上からの遠隔操縦も可能になります。
そして2025年以降のフェーズⅢでは、最終意思決定に人間が介在しないケースが多くなる、という段階になります。

小林
実証実験なども進められているのでしょうか。

宮里
そうですね。国主導の実験に加えて、民間主導による実験も進められています。
なかでも最も大きな動きは、公益財団法人が総額34億円を助成する形で2020年に立ち上げた、無人運行船の技術開発協同プログラムです。このプログラムでは5つの共同事業体が、それぞれ独自の技術開発を進めていて、2022年に入って相次いで実証実験を成功させました。

ちなみにこの公益財団法人では、2019年の報告書において、2040年には国内を運行する船の50%以上が無人運行船になると予測して、その経済効果を約1兆円と試算しています。

船の自動運転に向けた民間企業の実証実験例

小林
船の自動運転が、暮らしや産業、地域社会、あるいは人口減少社会全体にもたらす波及効果はとても高そうですね。
日本の船舶技術の今後の進展に期待したいと思います。
宮里さんありがとうございました。

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