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松永 多佳倫

松永 多佳倫

23歳無名投手がMLBブルージェイズとマイナー契約。最速158キロの中部商業出身 金城朋弥投手の“下克上”ストーリー

23歳無名投手がMLBブルージェイズとマイナー契約。最速158キロの中部商業出身金城朋弥投手の“下克上”ストーリー

「“下剋上”の言葉をいつも胸に秘めています」
5月1日にオンラインにて沖縄市長に表敬訪問をした金城朋弥は、自信に満ちた顔つきでモニター越しにそうはっきり答えた。

4月8日、23歳の金城朋弥投手がMLBのトロント・ブルージェイズとマイナー契約を結んだことが電撃発表され、日本中の野球ファンを驚かせた。というのも、“金城”という名がまったくの無名であったからだ。

中部商業から日本文理大へと進むが思うように結果が残せず、二度のNPBの指名漏れの末、四国のアイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスでプレーを続けるも昨季、自由契約となり流浪の身となった。そんな金城がMLBとマイナー契約に合意することになったきっかけは「ジャパンウィンターリーグ(JWL)」に参加から始まった。
再起をかけてJWLのトライアウトリーグに登板し156キロを計測したことでメジャーのスカウトの目に留まり、再び野球を続ける道どころか、最高峰のメジャーへのロードを切り開いたのだ。

JWLの理念「陽の目を見ない場所に光を」

23歳無名投手がMLBブルージェイズとマイナー契約。最速158キロの中部商業出身金城朋弥投手の“下克上”ストーリー

JWLとは、「陽の目を見ない場所に光を」を理念に、若手にチャンスを与える場所を提供ということで4年前から毎年11〜12月沖縄にておよそ1カ月間トライアウトリーグを開催している。

慶応からカルフォルニアウィンターリーグを経て数年後にJWLを立ち上げた鷲崎一誠代表が満を持して語る。

「今年で開催して4年目になるんですが、まだ日本のプロ野球選手が誕生していないなかでMLBのマイナー契約が誕生したというのは、それだけ高いポテンシャルの選手がもうすでにジャパンウィンターリーグにいるということを証明できたと思ってます」

沖縄水産のエースとして1990、91年夏の甲子園準優勝し、九州共立大学から巨人に入団した沖縄のレジェンド大野倫GMから見た金城評によれば「試合がない日も彼はずっと練習していました。
常に高いところを目指し、言語としてプロに行きたい、海外に行きたいということを我々スタッフにも、周りの選手にも伝えて、彼自身の努力でこの契約を勝ち取ったと思います」

打者をねじ伏せるパワーピッチングが武器

23歳無名投手がMLBブルージェイズとマイナー契約。最速158キロの中部商業出身金城朋弥投手の“下克上”ストーリー

最速158キロを投げる右の本格派の剛腕金城投手は、メジャー挑戦について熱い思いを語ってくれた。

「3年後にメジャー昇格して投げるという目標設定があるんですけど、その先にはサイ・ヤング賞投手になりたいという一番大きな夢があります。マイナースタートからメジャー昇格するまでの3年間、一日一日を大事にして積み重ね、自分が得意とする継続する力でアメリカでも堂々勝負してランクを上げていきたいと思っています」

力強い言葉を語る金城だけれども、これだけのポテンシャルを持っているのになぜ二度に渡る指名漏れがあったのか。自身で思う原因を尋ねてみた。

「自分はもともとメンタル的にあまり自信を持って投げるピッチャーではなかったので、そういう部分がマイナスポイントだったのではないかと思います。
JWLでは、NPBの選手や社会人のベテランの選手がいるなかでいろいろな話を聞き、『自分に足りないものなんですか?』と尋ねたときに『基本いいものは持ってるんだけど、あんまり自信を持って投げてるようには見えない』って言われて、そこからメンタル面で自信を持って投げることを意識して日々取り組み始めると、みるみる状態が良くなっていきました」

いくら160キロを常時投げようとも戦う姿勢が見られないピッチャーは、最高峰の舞台に立つことなんてできやしない。これはどんな分野においても言えることで、ハートの弱い奴に勝負の下駄なんか預けられない。

「自分のストロングポイントとしては、プレー以外であれば練習量です。他の選手が終わっても自分は居残って何倍も練習をして、追いつき追い越せ精神で今までやってきました。マイナーにも化け物投手たちがたくさんいますけど、対等に戦えるようになるためにも練習量で勝たないと何も始まらないと思っていますから」

大谷翔平に始まって、山本由伸、ダルビッシュ有、今永昇太、菊池雄星、松井裕樹の活躍により日本人ピッチャーの需要は高まっている。
かつてメジャーでは身長が190センチ以上ないと難しいと言われていたのが、近年の山本由伸の活躍おかげで日本人右投手でも180センチ以下でも大丈夫というのが通説になりつつある。

誰が見ているかわからない、だから諦めるな

23歳無名投手がMLBブルージェイズとマイナー契約。最速158キロの中部商業出身金城朋弥投手の“下克上”ストーリー

「日本でジャパンウィンターリーグというトライアウトリーグが沖縄で開催されていることは、沖縄の選手にはこれ以上のないチャンスでもあり、ここで結果を残したらどこかしらオファーはもらえます。
鷲崎代表や大野GMという素晴らしいスタッフ陣がいることで心底選手を気にかけていただき、いろんな球団にアピールさせる機会を作ってくれます。
アメリカのウィンターリーグではよくこういった話は聞くんですけど、日本で、しかも地元沖縄でこういうトライアウトリーグがあること自体、本当に一番のチャンスだと思います。
少年時代に、トロントブルージェイズと契約するとはまったく考えもしなかったですし、日本のプロ野球選手にもなれると思わなかったです。
本当に何があるかわからないですし、どこにチャンスが転がっているかもわかりません。小さい頃は野球を楽しんで、勝負の時が来たらそれを掴みに行く。
悲壮感漂ってやるより好きな野球を楽しみながらやっていると、こういうチャンスが巡ってくると思うので、一番は諦めずに楽しんでやることが大事だと思っています。
絶対に誰かが見ていてくれますから」

チャンスは掴み取るものでありながらも、正直どこに転がっているかわからない。金城もJWLに参加したからこそ道が開けたわけで、行動こそが豊かな未来を形創る。
望みを捨てぬ者だけに道は開ける。それを金城朋弥は身を以って教えてくれたのだ。

大卒から独立リーグを経てのマイナー契約からメジャーリーガーになった日本人はまだひとりもいない。
だからこそ金城は自分がメジャーに上がることが日本野球の未来を変えると信じている。王道でしかプロ野球からメジャーリーガーになる道はないと思いがちな子どもたちのためにも、金城は自らの武器「打者をねじ伏せるパワーピッチング」でMLBを席巻する日を夢見て日々鍛錬に励んでいく。

すべては自分のため、そして自分と同じような境遇でいる選手のためにも––––。

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