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「少し消化できた」と岸本隆一、琉球ゴールデンキングスがQF突破…9年越しに乗り越えたBリーグ元年の“壁”と最多ベスト4の勲章
9年前に跳ね返された分厚い壁を、奇しくも同じ場所で乗り越えた。
Bリーグ西地区3位(ワイルドカード2位)の琉球ゴールデンキングスは5月8日と9日、プレーオフ「チャンピオンシップ(CS)」のクオーターファイナル(QF)に臨み、同地区2位のシーホース三河に79-65、82-79で連勝してセミファイナル(SF)進出を決めた。
今回の勝利は、キングスにとってシリーズ突破という結果以上の意味を持つ。
会場となった三河のホームコート、愛知県のウィングアリーナ刈谷は、Bリーグ元年の2016-17シーズンにもQFを戦った場所だ。その時は、日本バスケ界で深い伝統を持つ三河を相手に、今回とは真逆の2連敗で敗退した。
Bリーグ創設10年目の節目を迎えた今回のCSで、9年越しのリベンジを果たしたことは、チーム、そしてクラブとしての成長を印象付けるものだった。
また、キングスのSF進出は8大会連続8回目。以前の記事でも触れたが、今回を含め計9回行われてきたCSに全て出場したのはキングスと千葉ジェッツのみ。ただ、ベスト4入りした回数に限れば、今回も共に駒を進めた千葉Jは7回だ。来シーズンから新リーグ「Bプレミア」に移行し、今シーズンが最終年度となる現行リーグでは、キングスが最多回数となることが確定した。
ベスト4入りの3番目以降は宇都宮ブレックスが5回、アルバルク東京が4回と続く。優勝経験のある強豪でも、選手やコーチの顔ぶれが変わる中で、長期間にわたって強さを維持するのは容易ではない。また一つ、キングスの歴史に大きな勲章が加わった。
※関連記事:https://www.otv.co.jp/okitive/article/100118/
9年前の刈谷…「スター軍団」を相手に僅差の連敗
2017年5月14日、ウィングアリーナ刈谷。客席が青く染まる中、キングスが優勝候補の一角だった三河と善戦を繰り広げていた。9年後と同様に、アウェーベンチ裏はゴールド&ホワイトに染まり、大声援に負けじと、会場に「ゴーゴーキングス」の掛け声と指笛を響かせていた。しかし、結果は75-81で惜敗。試合終了のブザーとともに、シーズンが終了した。
旧bjリーグで最多4回の優勝を誇ったキングス。bjリーグとNBLが統合して迎えたBリーグ元年の2016-17シーズンは、日本のメインストリームを歩んできた選手たちがひしめくNBL勢のレベルの高さに苦しみながらも、29勝31敗の西地区2位でCSに滑り込み、初戦のQFで、46勝14敗という圧巻の成績で同地区を制した三河とぶつかった。
当時の三河は、比江島慎や金丸晃輔、桜木ジェイアール、橋本竜馬、柏木真介、ギャビン・エドワーズら、日本代表歴のある名だたるプレーヤーが顔を連ねる「スター軍団」だった。ちなみに、沖縄出身で元キングスの狩俣昌也も所属していた時期だ。
伊佐勉HC(当時)の指揮の下、キングスは5月13日の初戦から激しいディフェンスと素早いトランジションで格上に挑んだ。キャプテンを担っていた岸本隆一、経験豊富な金城茂之、アンソニー・マクヘンリー(現アシスタントコーチ)、得点源のレイショーン・テリーらを中心に得点を重ね、3点リードで第4Qを迎えた。しかし、このクオーターでわずか9得点と失速し、72-76で惜しくも初戦を落とした。
第2戦も、試合時間残り3分を切った最終盤で2点差まで迫る善戦を見せたが、金丸らの勝負強さの前に競り負けた。
当時主将だった岸本「壁を乗り越えられた」
当時の第2戦の試合映像には、最終盤でファウルアウトし、ベンチで試合終了のブザーを聞く岸本の姿が映る。会場に金テープが舞い、ホームのファンが歓喜に包まれる中、下を向き、しばらく動けなかった。表情をうかがい知ることはできないが、悔しさを押し殺していたのだろう。
試合結果を報じた当時の新聞記事には、「高さがないと言われた中でも戦える可能性を示した。目指しているバスケットに間違いはなかった」「(ファンに)伝えたいことはたくさんあるが、ただただ感謝。来年のCSはホームでやりたい」など、気丈な言葉が並ぶ。
あれから9年。
現行リーグの1年目と最後の10年目に、数奇な巡り合わせで同じ会場、同じステージで三河と相対した。コート上で両シリーズも経験したのは岸本だけだ。
自身も26歳の中堅から、チーム最年長の35歳となった。月日は流れたが、「Bリーグが始まった年のプレーオフで、『ここで負けて終わったな』という思いは、このシリーズに入る前から個人的に意識していました」といい、当時の悔しさは鮮明に覚えているという。
キングスはその後も全てのCSに出場し、いずれもQFを突破。直近では4シーズン連続でファイナルに進み、2022-23シーズンには初優勝を飾った。1年目の岸本の決意通り、2年目以降は全てのCSでホーム開催を実現してきた。
「今回2つ勝てたことで、10年越しに壁を乗り越えられました。もちろん、お互いの状況はいろいろ変わっていますけど、自分の中で消化し切れなかった気持ちが、少し消化できたかなという気持ちです」と穏やかな表情で語った。
今回のQF突破は、個人、そしてクラブとしての成長を実感する要素の一つになったようだ。
SFでホーム帰還へ、ファイナル最多出場なるか
bjリーグ時代から掲げる「毎シーズン優勝争いをできるチームづくり」を体現し、今回もQFを突破したキングス。しかも、勝ち上がってきた名古屋ダイヤモンドドルフィンズがレギュラーシーズン西地区4位でキングスより下位だったため、SFはホームの沖縄サントリーアリーナで行われることになった。
ファンにとっては毎シーズン、応援できる期間が長く、しかもホームで大声援を送れる機会があることは何よりの喜びだろう。
昨季はレギュラーシーズン終盤で負傷離脱し、初めてCSの舞台に立てなかった岸本は、QFでの戦いを通して、「CSのためにレギュラーシーズンを戦っているので、僕らはこの舞台に立つために日頃から頑張っていることを再認識できました。これからもチームメイトと団結して戦っていければと思います」と充実感をのぞかせた。
今季はレギュラーシーズンと天皇杯全日本選手権を合わせ、1勝4敗と大きく負け越していた三河をアウェーで破り、「キングスが毎年CSで積み上げてきた経験値が影響したクオーターファイナルだったと思います」とも語り、チームの仕上がりにも手応えを感じているようだ。
SFは5月15日、16日、18日のスケジュールで、2戦先勝方式で行われる。現状で、最も多くファイナルを経験したチームはキングス、千葉J、宇都宮の4回。もし今回勝ち上がれば、現行リーグで最多5回となることが決まる。
幾多の功績を残してきたキングスが、また新たな勲章を手にするのか。注目が集まる。
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