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松永 多佳倫

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四番DH 末吉良丞が二塁打2本、2打点。「本職は投手なので」とエース奪還への拘りと憤り

四番DH 末吉良丞が二塁打2本、2打点。「本職は投手なので」とエース奪還への拘りと憤り

千両役者は何をやっても華があるもの。
末吉良丞の一振りは、球場の空気をガラッと変える。

2026年7月4日コザしんきんスタジアムにて三回戦となる沖縄尚学対読谷戦で、末吉は四番DHで出場。投げられない分、打線の要へと存在感を増していく。
初打席は初回から回ってきた。沖尚の先頭打者の仲間夢祈のレフト前ヒットから送りバント、内野ゴロの間に1点。抜け目ない攻撃で先取点を入れた沖尚は、ツーアウトランナーなしで四番の末吉が打席に入った。

先取点を取ったあとだけに落ち着いた様子の末吉は、初球ファウル後の外寄りのストレートを逆らわずにおっつけるように引っ張った打球はレフトオーバーの大飛球となり、末吉は脱兎のごとく駆け抜け、二塁ベース上に悠々と立つ。

まるで「末吉、ここにあり」といった神々しい姿は、堂々たる四番の風格が為せる業だった。

先発久髙は6回までノーノー、結局7回、被安打1、三振12

四番DH 末吉良丞が二塁打2本、2打点。「本職は投手なので」とエース奪還への拘りと憤り

先発は、初戦と同じサウスポーの久髙大瑚。
スライダー、カーブを駆使した技巧派ピッチャーで、ゆったりしたモーションから繰り出されるボールはバッターの懐を差し込み、凡打を築く。

比嘉公也監督は語る。
「力入れて投げますよっていうフォームはバッターもそれなりに待ち構えているけれど、元SBの杉内投手(俊哉、現巨人投手チーフコーチ)のようにゆったりしたモーションでピュッとくるほうが打ちにくい。そういうフォームは好きですね」

古くは、金田正一、江夏豊、江川卓といったレジェンドの投球フォームは力感なくいかにもゆったりし、それでいて目が覚めるほどの剛速球が投げ込まれる。
長島、王、落合といったレジェンドのバッターでもわかっていてもゆったりしたフォームにどこか幻惑されるのか、力感バリバリのピッチャーに比べてやはり打ちにくいと口々に云う。

読谷打線は久髙のストレート、スライダー、カーブにまったく目がついていけず、7回まで1安打、12奪三振と完璧なピッチングでマウンドを後にした。
「内容は内容として、カーブの制球力がまだまだでした。ノーノーは別に意識してなく、三振の数も別に気になりませんでした」

浮かれることなく話す久髙は、末吉が怪我で投げられない分、新垣との二本柱という自覚と自信を持って、これからもマウンドを死守していく。

四番末吉の一打が球場を支配する

四番DH 末吉良丞が二塁打2本、2打点。「本職は投手なので」とエース奪還への拘りと憤り

一方の沖尚打線は初回に先制してからヒットで出塁しても二度の盗塁死とちぐはぐな攻撃で、7回終わって3対0。粘りがないというか簡単にポップフライを打って三者凡退になるなど、点差以上に読谷に抑え込まれているイメージが漂う。

8回表、沖尚の攻撃に入る前に比嘉公也監督がベンチ内で選手一同を集めて檄を飛ばす。
「ピッチャーがこれだけ頑張ってるんだ。打撃陣はなんとも思わんのか! もっと助けてやらんか!」

繋ぎの野球が徹しきれてない不甲斐ない攻撃陣を目の当たりにし、激しい叱咤をする。モタモタしている選手たちに早く目を覚ませとばかりに喝を入れた。

そのおかげか、選手たちの体の中に眠っていた闘争心がようやく目覚め始める。
まず先頭打者がフォアボールで出塁し、次打者がレフトへのポテンヒット、送りバントで一死二、三塁という絶好の好機で四番の末吉に打順が回ってきた。
初球のインコースの真っ直ぐをものの見事にジャストミートし、ラインドライブかかったライナーがライト線側に鋭く落ち、走者一掃の二塁打。これぞ四番という働きを見せてくれた。

試合後、末吉は四番の重責を果たしてホッとしているせいなのか、柔らかい表情でこの打席について解説をしてくれた。
「いい場面で回ってくる気がしました。ポイントをしっかり自分の詰まるポイントじゃなくて一個前に持ってくることができたので、ちょっとバットの先っぽだったんですけど、上手く弾きかえすことができました。
変化球は張っていたんですが、真っ直ぐがインコースに来たんで反応して打てました」

引っ張ってのライナー系の強い打球を飛ばしたことで、ようやく末吉の持ち味が見せられ、4打数2安打2打点と四番の重責を果たすことができた。
この回、末吉の一打が起爆剤となって3点取り、最終回にも追加点を重ね、終わってみれば14安打の猛攻で9対0と圧勝した。

本当の意味で末吉のことを考えてあげよう

四番DH 末吉良丞が二塁打2本、2打点。「本職は投手なので」とエース奪還への拘りと憤り

試合終了後の末吉への囲み取材では、今後の登板への質問が投げかけられた。

末吉はじっくり言葉を選ぶように淡々と話す。
「いつマウンドに立つかどうかは、比嘉先生が決めることなのでわからないんですけど、できれば次の試合からどうにか調整していけるようにとは思ってます。
ピッチング自体は本調子ではないんですけど、 140は超えるぐらいまでは投げれています。靭帯の痛みとかはなく、その周りの筋肉の張りが強くなっている感じなので」

比嘉公也監督が「7月にならないと投げられない」と公言している以上、メディアは当然ながら末吉の登板はあるのかどうかに焦点を注いでいる。
それは高校野球ファンにとっても同じ思いだ。

何度も何度も言うようだが、末吉良丞、ここで焦りは禁物。いくら140キロを超える球を投げられるようになったから大丈夫ということではない。
左肘靭帯の損傷がどの程度なのかはわからないが、経過観察を兼ねて慎重に慎重を重ねて対応すべきだと思う。

いくら強豪の沖縄尚学でもMLBのように専属の医療スタッフが随時メディカルチェックをし、心理学の博士号を持ったメンタルスキルコーチと医療スタッフが一緒になって綿密なプログラムによる復帰計画を立てているわけではないはず。
私学といえども一介の高校では上記のような環境設備は土台無理なため、そこを問い詰めるつもりはさらさらない。

くどくて申し訳ないが、だからこそ子どもたちの輝ける未来を守ってあげるには、良識ある大人たちの力が絶対的に必要なのだ。
程度こそあれど、成長期における左肘靭帯損傷がどれほどの爆弾を抱える事象なのかをメディアも含めて皆が、本当の意味で考えて欲しい。

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