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松永 多佳倫

松永 多佳倫

沖縄尚学の末吉良丞は、この夏の甲子園はどういう思いだったのか。「俺の責任」といった真意とは

沖縄尚学の末吉良丞は、この夏の甲子園はどういう思いだったのか。 「俺の責任」といった真意とは

沖縄の夏が終わった……、ゲームセットになった瞬間県民の誰もがそう思った。

最初は半信半疑でいた甲子園夏二連覇が、末吉良丞が華麗なる復活を遂げての甲子園出場を決めたことで応援の糧となった。他県の強豪校が地区予選でことごとく敗れていくのを見て、日に日に甲子園二連覇が現実化し、誰もが願い、本気で応援した。

初戦に大本命の横浜高校と当たること自体、ドラマチックだった。
だが実際はドラスティックな展開に過ぎなかった。

紛れもなく末吉の剛腕は、県民に夢をたくさん与えてくれた

沖縄尚学の末吉良丞は、この夏の甲子園はどういう思いだったのか。 「俺の責任」といった真意とは

そもそも去年の夏の優勝自体がドラマチックであり、ファンタジーだった。

無印だった沖縄尚学が、全国的に無名だった2年生の剛腕サウスポー末吉良丞と快速右腕の新垣有絃の両輪が甲子園の大舞台で大輪を咲かせるがの如く大活躍し、深紅の優勝旗を沖縄に持ち帰る。その後、沖縄尚学が高校野球界のリーディングヒッターとなり、特に末吉の動向には目が離せなかった。

春の選抜は帝京に3対4と惜しくも一回戦負けを喫したが、調子を落としていた末吉がそこそこの水準で投げられたことで夏に期待がかかった。
そして異変が起こった。選抜が終わって高校代表合宿が終わった4月上旬から末吉の動向がさっぱり聞こえなくなったのだ。

春季九州大会はもちろん、練習試合にも招待試合にも一切登板していない。右肘靭帯損傷ということで重病説が流れたが、3カ月間きっちりと保存治療と肘を休ませられたおかげで、ギリギリ夏に間に合うことができた。

エナジックとの決勝戦最終回4対2のワンアウトから末吉がマウンドに上がったときの球場内は蜂の巣を叩いた状態でボルテージはマックス。そして初球に147キロの剛速球。
「うおおおおおーー」
旧盆と正月がいっぺんに来たようなお祭り騒ぎだった。
あの興奮を知る者は、甲子園での活躍も確信した。
一回戦屈指の好カード「沖縄尚学対横浜」は事実上の決勝戦とも言われ、チケットは完売。

昨夏甲子園優勝vs昨年選抜優勝校、世代最強左腕末吉良丞vs世代最強右腕織田翔希と、キャッチーな構図がいくらでも作られ、試合が行われる8月10日がいまだかつてない特別な日に感じられていく。
横浜の先発織田、沖尚の先発末吉で13時30分、プレイボールのサイレンが鳴った。

指揮官として比嘉公也の胸中はいかに……

沖縄尚学の末吉良丞は、この夏の甲子園はどういう思いだったのか。 「俺の責任」といった真意とは

“思いで探訪”はここまでで、次からは試合を徹底検証していく。

「よくやったよくやった」で終わっては何の進歩も発展もない。負けたときこそ徹底分析、検証をしてこそ次に繋がる。高校野球といえども勝負の世界。ここは傷口に塩を塗る覚悟で検証していく。

『勝ちに不思議はあるが、負けに不思議はない』と名将野村克也の訓示があるように、この横浜戦に関しては、あくまでも結果論という前提だが、正直勝てた試合だ。
まず、先発の末吉の起用。

確かに県大会決勝戦の最終回を見る限り、末吉完全復活を想起させるほどのピッチングだったのは相違ない。それゆえに横浜戦先発は、それ以上のピッチングを見せてくれるのかと誰もが期待した。ついついファン目線で語ってしまったが、末吉を1年間追いかけてこんなに状態が悪い末吉を初めて見た。

まず最速が143キロ。スピードがどうこうではない。末吉本来の勢いある強い球であれば143キロでもそうそう当てられないし、前に飛ばない。それなのに、高めで空振りは取れない、ファウルにもならない。殿下の宝刀のスライダーも簡単に当てられる始末。これは前日や当日のピッチングでわからなかったことなのだろうか。

いくら大舞台に慣れているからといって故障明けで長いイニングを投げられない末吉を先発にする勝算はどこにあったのか。
一か八かではなく勝ちに行くためには、今までのリズムを壊してはいけないのが勝負の鉄則。

県大会では、先発久髙大瑚からの継投がひとつの必勝パターンになっていたはず。故障明けの末吉は短いイニングのストッパーが適任。横浜は織田が先発してくる以上、責任感の強い末吉が力んでしまうのは容易に想像できたうえで先発を決めるべきだった。

勝負事に“たられば”は禁句であるが、先発久髙であれば間違いなく展開は違っていたはずだ。

横浜の織田選手よ、末吉の力はこんなもんじゃないから!

沖縄尚学の末吉良丞は、この夏の甲子園はどういう思いだったのか。 「俺の責任」といった真意とは

そして攻撃陣。

まず好投手織田から2点取っていることに注目。そもそも試合前から監督の比嘉公也はロースコアの展開と公言している。まさしくそうだった。勝つためには、投手陣の継投がキーだったのだ。

細かい点でいうと、二回表のレフト仲村虹星の後逸はイレギュラーだから仕方がないのでない。去年の夏にあれだけ経験しているのだから甲子園の外野の芝はワンバウンド目がきれる傾向ということを口すっぱく言っていたのだろうか。

横浜の織田は五回まで球が荒れていた。確かに低めの140キロ超のフォークと縦のスライダーはすごすぎた。あれはプロでも打てない。あの低めの変化球を空振り三振することで、投手は乗ってしまう。沖尚ベンチとしては三振になっていいから低めの変化球は捨てろという指示を徹底していたのかどうか。

それとバント。
賛否両論だと思うが、高校野球におけるバントがどうにもこうにも釈然としない。バントすること自体が悪いと言っているのではない。
きちんと塁に進められるバントは立派な戦術であるのも重々承知だ。ただ試合のあやというか相手ピッチャーがあたふたして塁を溜めるほうがプレッシャーをかける意味でも先決なのに、みすみすバントしてアウトカウントを増やすことで助けてしまうケースがただある。

今回で言えば5回裏、先頭バッターの仲間夢祈がショートのエラーで出塁した後に、二番の玉那覇宝生がバントを空振りしてランナーが三本間に挟まれアウト。
織田が荒れていただけに、ここはバントするよりもヒッティングのほうが吉と出たのでは、と思ってしまった。バントさせるのなら100パーセントの確率で決めなければ、勝てる試合も勝てなくなる。それと4回裏、3対1で一死一、三塁の場面、八番秋江駿斗にはスクイズのサインだったが…

前の打席でタイムリーを打っているだけに強行策に出たのだろうけど、取れるときに確実に取る。これで3対2と1点差に詰め寄ることで横浜に心理的圧迫を感じさせられた。こんなことを言うのもあとの祭りだが。

中盤まで横浜は三度のバント失敗があり攻撃が拙攻でモタモタしていただけに、織田を乗らせたくはなかった。

大本命の強豪校に勝つためには、念入りな準備を怠らず、少ないチャンスを確実にものにする。少しの隙を見せない。それが横浜戦だった。

すべて結果論ゆえの検証であり、なんとでも言える。
監督の比嘉公也が県大会までバシバシ戦術が決まっていただけに、本当に残念でたまらない。
織田の快投と点差を見る限り、完全に力負けに感じるが、実はほんの少しのほころびを見せなかったら十分に勝てた試合でもあった。

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