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長嶺 真輝

長嶺 真輝

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”
キングスでキャプテンを歴任した田代直希(左)とヴィック・ロー=沖縄サントリーアリーナ(長嶺真輝撮影)

9月7~15日に沖縄サントリーアリーナで行われたプレシーズンゲーム「ISLAND GAMES 2026」。琉球ゴールデンキングスのホームに、かつてこの場所で大歓声を浴びた元キングスキャプテンの2人が、違うユニホームを着て帰ってきた。

2024年に千葉ジェッツへ移籍した田代直希、そして今夏に茨城ロボッツへ移ったヴィック・ローだ。

田代はBリーグ創設1年目の2016-17シーズンから8年にわたってキングスでプレーし、キャプテンとして2022-23シーズンの初優勝を経験した。千葉Jへ移籍してから、沖縄サントリーアリーナでプレーするのは今回が初めて。一方、ローは昨季まで3シーズン、毎年ファイナルまで進んだキングスをエースとしてけん引し、今夏に茨城へ移籍したばかりだ。

キングスに所属した期間は違う。それでも、2人の言葉や表情からは、沖縄で過ごした時間が、今もキャリアのハイライトの一つとして色濃く残っていることが伝わってきた。

田代「まだ忘れないでいてくれている」

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”
パース戦後、沖縄のファンに挨拶する田代直希(長嶺真輝撮影)

9月7日、キングス対千葉Jのティップオフ前のウォーミングアップ時間。赤いジャージ姿の田代が一人でコートに飛び出してくると、客席が沸いた。「たっしー!」「おかえり!」。歓迎の声をかみ締めるような表情を浮かべ、両手を挙げてファンに応えた田代。胸中には感慨が湧いた。

「本当にうれしかったです。チームメートも(自分が一人になる)時間を取ってくれたので感謝しています。まだ自分を忘れないでいてくれているっていうのは、うれしいですね」

ココナッツの木が描かれたコートに足を踏み入れた瞬間、懐かしい記憶を呼び起こしたのは「匂い」だった。「率直な感想が、『この匂い、懐かしい』でしたね。木の匂いなのか、何なのか。懐かしい匂いがしました」。記憶を呼び起こしたのは、それだけではない。「音楽とかも僕がいた頃と変わってなかったりして。それが印象的ですね」と笑顔で振り返った。

試合中にも象徴的な瞬間があった。田代が3ポイントシュートを沈めると、アウェーの選手にもかかわらず、歓声が上がった。「きつすぎて、あんまり覚えてない」と笑いながらも、「でも、うれしかったですね。応援してもらえてると思って」と頬を緩めた。

試合後の取材は会見室ではなく、時間の都合などもあって廊下での囲み取材に。椅子に座ると多くのカメラやレコーダーに囲まれ、「多いな、多いな」とおどけた田代。今なお、沖縄で愛されるプレーヤーの一人だ。

新指揮官の下で「アジアで一番速いバスケ」を

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”
脇真大とマッチアップする田代直希(長嶺真輝撮影)

一方、試合は千葉Jはキングスに86-110で敗れ、翌9月8日に1クオーター8分制で行ったオーストラリアNBLのパース・ワイルドキャッツ戦も45-98で完敗した。新たに加入した外国籍選手を中心に負傷者が多く、インサイドの攻防で劣勢に立たされ、新シーズン開幕前に厳しい状況に置かれている。

それでも、田代は現状を受け入れたうえで、前を見据えている。以下もキングス戦後のコメントだ。

「練習から結構ハードにやっていますが、けが人がずっと出ていたりして、なかなか厳しい状況ではあります。それでも、コーチがやりたいことは明確なので、それを最後までやり切ることが大切だと思っています。琉球相手に不甲斐ない結果にはなりましたが、すごくいい経験ができた試合でした」

新指揮官のアドリアン・コヴァーチHCが目指すのは「アジアで一番速いバスケ」だという。アップテンポなスタイルで、相手が守る準備を整える前にシュートを決め切る。「今日はトランジションを出せたり、走れたりっていう場面があったので、それは収穫として大きかったかなと思います」と語り、一定の手応えを感じたようだ。

「タノシカッタ」ローも笑顔で帰還

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”
キングス時代から仲の良かった脇真大と笑い合うヴィック・ロー(長嶺真輝撮影)

9月15日には、今度はローが帰ってきた。

フリースローを打つ際には、笑みを浮かべながら両手を動かし、ファンを煽る場面も。アリーナは楽しそうな笑い声と盛大なブーイングに包まれ、昨シーズンまでエース、そしてキャプテンの一人としてキングスを引っ張ったローを歓迎する空気が流れた。

試合後の記者会見。感想を聞かれると、日本語で「タノシカッタ」と即答。その後は英語で、こう続けた。

「本当に楽しかったです。また、こうやってキングスのファンに会えて、この雰囲気の中でプレーできて、すごくうれしかった。またシーズンで会えることを楽しみにしています」

試合の前後では、元チームメイトと会話する場面も多かった。満面の笑みを向け合っていた脇真大はこの日、苦手な3ポイントシュートを2本中2本成功。それを念頭に、笑いながら「脇が3ポイントを2分の2で決めるなんて。できたら昨シーズン決めてほしかった」と冗談も口にした。

「彼らと一緒にプレーできたことはうれしいし、彼らの成長を見られたこともうれしいです」。まとうユニフォームが変わっても、激闘を乗り越えて毎年ファイナルまで勝ち進んだキングスの選手たちには、特別な思いがあるのだろう。

茨城で新たなやりがいを感じるロー

元キングス主将の田代直希とヴィック・ロー、違うユニホームで沖縄へ 古巣で感じた「懐かしさ」と受け継ぐ“勝つ文化”
チーム最多得点で茨城を引っ張ったヴィック・ロー(長嶺真輝撮影)

キングス側に負傷者が多かったため、1クオーター8分制で行われた古巣との一戦は60-60の引き分け。ローはチーム最多の15得点に加え、6リバウンド、6アシストを記録した。

それでも、試合後には「キングスはけが人がいた中でも、ウイニングカルチャーがしっかり出来上がっているチーム。自分たちはそれを作り上げている段階で、まだまだ足りない部分がいっぱいありました」と語り、言及したのは自身の活躍よりも茨城にまだ足りないものだった。

自身は2022年にBリーグ入りして以来、千葉ジェッツ、キングスと、長く優勝を争うチームに身を置いてきた。一方、2021-22シーズンにB1昇格を果たした茨城は、まだトップカテゴリーで勝率5割以上を記録したことがない。だからこそ、ローは強豪で体感してきた「勝つ文化」を一から築こうとしている。

「自分はキングスだったり、千葉Jだったり、出来上がっているチームでずっとプレーしてきました。茨城はまだそこまで出来上がっていない。これから何かをつくり上げていくチームの一員としてできるのも、すごく楽しいなと思いました」

新天地で新たなやりがいを感じているロー。ともに茨城に加入した日本代表の吉井裕鷹や渡邉飛勇らとともに、クラブの浮上に貢献していくだろう。

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