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くらしと経済編集部

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海のない県でも魚が特産品に?進化する陸上養殖

後間
こんにちは。後間秋穂です。
今日は水産物の「陸上養殖」について
野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんに伺います。
宜しくお願いします。

ESG投資とともに広がる「アニマル・ウェルフェア」

宮里
宜しくお願いします。

後間
水産物の「陸上養殖」とはどのような取り組みなのでしょうか。

宮里
はい。海で行われる通常の「海面養殖」に対し、陸上に水槽を設けて行うのが「陸上養殖」です。
海面養殖は、水温を一定に保てることや、自然災害の影響を受けにくい、などの養殖に必要な条件を満たす場所が限定的であること、季節や気候などの影響を受けやすいこと、
さらに、人が潜って網いけすを清掃する必要があること等の管理上の難しさがあります。
そうした課題の解決する養殖方法として「陸上養殖」に大きな期待がかけられています。

後間
なるほど。
では、「陸上養殖」の方法について詳しく教えてください。

宮里
はい。陸上養殖には大きく分けて「かけ流し式」と「閉鎖循環式」の2つがありますが、
中でも「閉鎖循環式」と呼ばれる手法に大きな期待がかけられています。
この方式は、飼育用の水を濾過システムによって浄化しながら循環させる方式で、
水道水や工業用水を海水化して使うことができます。
したがって水道水が確保できれば山の中など内陸部でも養殖が可能です。
絶えず水を浄化し、循環させるので食べ残しの餌や排泄物による海への環境負荷がなく、
飼育環境を人工的に管理できることから、気候の影響を受けず、水温の調節が可能です。
さらに、漁船や漁具を用いた作業がないため、危険性が少なく、働きやすい作業環境を実現することで地域の雇用促進にもつながります。

陸上養殖の方式と閉鎖循環式のメリット

後間
すでに「陸上養殖」に取り組んでいる企業もありますか?

宮里
いくつかあるのですが、例えば2013年に設立された埼玉の会社では、
千葉県に実証実験用のプラントを稼働し、バクテリアを活用した独自の
濾過技術で水道水から作った人工海水を循環させる養殖を行っています。
2022年中には年間2000トンを生産できる商業プラントを着工する予定で、将来的に閉鎖循環型システムを世界各国に普及させる目標があるそうです。

閉鎖循環式陸上養殖のビジネス例

後間
今後も陸上養殖産業に参入する企業が増えていきそうですね。

宮里
はい。近年異業種の参入が増加しています。
東日本の鉄道会社は2022年2月から、福島県にある鉄道駅敷地内において、
再生可能エネルギーを使用したバナメイエビの陸上養殖の実証実験を開始しています。
車一台分のスペースで運用可能な小型の設備は、初期費用を大規模な陸上養殖の100分の1、
付属する設備の運用費も3分の1まで削減して導入のハードルを低くしています。
さらに、再生可能エネルギーで電力をまかない、環境配慮も徹底しています。

異業種の参入と最近の動き

後間
陸上養殖には水産物の不足を補うだけでなく、
様々な意義があることがわかりました。
今後の進展に期待したいですね。

宮里支店長ありがとうございました。

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