復帰50年,文化
復帰を伝える劇「72’ライダー」国会議事堂に激突死した青年描く
「ひーぷー☆ホップ」でお馴染み 沖縄で大人気のローカルタレント真栄平仁 もう一つの顔とは…
沖縄テレビで13年以上続くバラエティー番組「ひーぷー☆ホップ」のMCを務めるひーぷーこと真栄平仁。
キレのある軽快なトークでお茶の間に笑いを届ける真栄平にはもう一つの顔がある。
それは劇団O.Z.Eの脚本・演出家という顔だ。
劇団O.Z.Eは、沖縄の本土復帰50年となる2022年、復帰をテーマにした劇「72’ライダー」を上演した。
「72’ライダー」は、今から10年前の復帰40年の節目に真栄平自身が脚本・演出を務めたもの。今回は10年前の台本を手直しし、復帰から50年たった今と復帰前後の沖縄を描く。
主人公はバイク屋を営む安隆(やーすー)。
モデルとなったのは、復帰の翌年に若くしてこの世を去った沖縄の青年だ。
国会議事堂に激突死した青年 その死が意味するものとは
復帰の翌年の1973年、国会議事堂の鉄柵に大型バイクが突っ込み、運転していた沖縄県出身の上原安隆さん(享年27)は自らこの世を去った。遺書はなかった。
真栄平仁
「この事はあまり知られていませんが、僕はこの話を聞いた時からずっと引っかかっていたんです。いつかその人のことを調べて劇にしたいなと思っていたんですよ」
脚本にあたって真栄平は、上原さんのことを調べた。
すると、上原さんは群衆が米軍の車両などを焼き討ちにした1970年のコザ暴動に参加し、後に逮捕された中の一人だと知った。逮捕後は本土に渡り運送業をしていた。
生前は酒を飲むと政治や沖縄のことを語り、「孤立無援の思想」という本を読んでいたことも分かった。
真栄平
「あくまでも予想なのですが、願っていた形の復帰ではなかったのかなと。もう本人がいらっしゃらないので、想像することしかできないのですが。『72’ライダー』を作った理由としては、安隆さんのことをもうちょっとみんなに知ってもらいたいなって言う思いが一番強いです」
復帰の陰に隠れる青年の死。真栄平は、上原さんを描いた劇『72’ライダー』を作り上げた。
マフラー音に込める心の叫び 若い世代に伝える復帰
本番当日。予定していた3回の公演全てのチケットは完売だった。
かつて上原さんも参加したというコザ暴動のシーンでは当時の音声を交えながら、うちなーんちゅの叫びを表現した。
「お前たちは沖縄人を何と思っているのか!この沖縄人の涙をわかるかお前らは!」
復帰の翌年、1973年のシーン。
復帰後も米軍の事件事故が相次ぐ沖縄の現状に対し、主人公・安隆が涙ながらにその怒りと悲しみを訴えた。
「米軍の車に火をつけました。ひどいですか?酒飲んで人ひき殺すのとどっちがひどいですか?」
「婦女暴行して何の罪にも問われないのとどっちがひどいですか?」
「酒飲んで、事故起こしたアメリカーを現場から逃がして、それに抗議したうちなーんちゅに発砲するのと、どっちがひどいですか?」
劇のラスト。安隆はバイクにエンジンをかける。会場全体に響くマフラー音は安隆の心の叫びだ。
真栄平
「復帰50年というのは今年しかないので、大きな節目だと思うんです。50年で変わったところもあるし、変わらないところも沢山あるので。バイクの音を聞いてもらって、何か胸に響いて、今後は復帰という文字に反応すると、そうなってもらえたら嬉しい」
2022年で本土復帰50年を迎える沖縄。
本土とは違う苦難の歴史をたどった沖縄のことを、若い世代にどう伝えていくか。
真栄平の模索は続く。
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