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平良 いずみ

平良 いずみ

“楽しくないと続かない” 『水どぅ宝』のこと①【平良いずみのよんな~よんな~通信】

平良いずみアナウンサー(OTV 沖縄テレビ)よんな~よんな~通信

「ドキュメンタリー『水どぅ宝』の放送の前に、コラムを書いて想いを発信したらいいよ!」とスタッフに声を掛けてもらって早1か月。どうしてこうも私はトロいのでしょう。ようやくエンジンがかかった今は、すでに放送を終えて2週間が経とうとしています。トホホ。
遅ればせながら、番組の制作のきっかけや込めた想いの一端を書かせていただきます。

(写真:番組『水どぅ宝』より)

このほど制作した番組『水どぅ宝』は、沖縄で起きている水汚染を追ったドキュメンタリーです。
沖縄県民45万人に供給される北谷浄水場の水に汚染物質・PFAS(有機フッ素化合物)が含まれていると県が発表したのは2016年。息子を出産し育休をとっていた私が問題を知った時、すでに息子は1歳になっていました。それまでせっせと水道水を煮沸し、息子にミルクを与えていた私は怒りと不安で体の震えが止まりませんでした。
(なぜ水道水を?と思われる方もいるかもしれませんが、ミネラルウォーターのミネラルが乳児の内臓に負担になるとして、ミルクには水道水を使うことが推奨されているんです)

息子の健康に、子どもたちの健康に影響はないのか…、すぐに調べてほしい。復職してすぐに取材を始めたかったのですが、相手は目に見えない未知の化学物質。どこからどう取材すればいいのかわからず立ち尽くしていました。
そんな時に出会ったのが、子どもたち安全な水を!と立ち上がったお母さんたちでした。子育てと仕事でただでさえ忙しい彼女たち。それでも、なんとか時間をやりくりして、慣れない行政への要請に向かい、勇気を振り絞って街頭に立ち、安全な水の供給を求め声を上げていました。その切実な声を伝えるため『てぃんさぐぬ花 ママたちの沖縄』を制作し、事態が一歩でも二歩でも前進することを祈って世に送り出したのが去年5月。

(番組『てぃんさぐぬ花 ママたちの沖縄』より)

水汚染の問題が吹き出した一年

しかし、残念ながら、その後も県民を不安にさせる事が次々と起きました。
去年8月には、日米で協議中にもかかわらず米軍は汚染物質を含む水を公共の下水道に放出。PFASは、胎児や子どもの成長に悪影響を与えるとされる物質にもかかわらず…。
さらに、去年10月には金武町でも水道水に国が安全とする値を超える汚染物質が含まれていたことが発覚。その取水源が米軍基地のフェンス沿いであることなどから沖縄県や町は「汚染源は基地内である蓋然性が高い」として立ち入り調査を求めるも…、「日米地位協定」が壁となり、調査は実現していません。
私たちの命の水が汚染されていても調査すら出来ない…、それがこの国の現実なのです。

これは沖縄だけの問題ではありません。在日米軍基地がある青森県三沢や東京都でも飲み水が汚染されていることがわかっています。
この現実に目を向けてほしいと切に願い、番組を作りました(今年の年末には「FNSドキュメンタリー大賞」の枠で全国放送予定)。

悲嘆に暮れている暇はないと教えてくれたのは

正直なところ、汚染が広がる実態を知れば知るほど途方に暮れることもありました。
そんな時、光をみせてくれたのは―

(PFASのことを知ってもらうため母親たちが動画を作る様子)

やはり、子どもを守るため行動するお母さんたちでした。
さるに扮して、「PFASって何?うーん、ピーナッツ?」「それって食べられるの?」と小難しい話を面白おかしく笑いに変えて発信する彼女たち。その姿から、悲嘆に暮れている暇があったら、明るく楽しく光に向かって進め!と教わったのでした。

目のまえの大切なものを守るために

(抗議のスタンディングを続ける町田直美さん)

そして、4人の子どもを育てあげ、毎週、街頭で抗議のスタンディングを続ける町田直美さんからも多くを教わりました。汚染水を放出する米軍に抗議するため開いた会見で「声を上げなければ容認したのも同じ。声を上げよう」と真っすぐ前を見つめて発せられる町田さんの言葉に、私は伝え手としてこの言葉を届けなければと奮起したのでした。
彼女がいつも口にするのは「楽しくないと続かない!楽しくいこー!」というもの。

問題が大きいと、ついつい肩ガチガチになって思考停止に陥りがちですが、目のまえの大切なものを守るために楽しく歩み続けていかなきゃ!ですね。
放送は終わっても、残念ながら問題は山積したまま。取材で出会った方々から教わったことを胸に、また歩き出します!

最後になりましたが、番組をごらんいただいた皆さま、そして、番組HPに数えきれないほどのご感想をお寄せくださった皆さまに心から感謝しています!

OTV報道スペシャル 水どぅ宝

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