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くらしと経済編集部

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医療も農業も酒造りにも「ニオイセンサー」でITをフル活用

後間
こんにちは。後間秋穂です。
今回は様々な分野で活躍するAIを活用した「嗅覚センサー」に関するお話を今月は野村証券那覇支店の石山昇平さんに伺います。よろしくお願いします。

石山
よろしくお願いします。

医療も農業も酒造りにも、「ニオイセンサー」でITをフル活用

後間
AIを使った「嗅覚センサー」とは具体的にどのような仕組みなのでしょうか。

石山
はい。このセンサーはまさに人間の嗅覚と同じように、様々なニオイを嗅ぎ分けられるセンサーと言えます。

こちらが国立研究機関が開発したAIを活用するセンサーの仕組みです。1ミリにも満たないセンサーが1円玉より小さいチップの上に、4個搭載されています。
センサーには様々な材料で作られた「感応膜(かんのうまく)」というものがあり、この膜の変化を検知して電気信号として記録し、データ化しています。

このAIを活用した嗅覚センサーは、ニオイの分子ひとつひとつを認識するのではなく、人間の嗅覚と同じように、その組み合わせのパターンをひとつの信号として認識し、そのデータをAIが学習することで何のニオイかを判断しています。

AI嗅覚センサーの仕組み

後間
このセンサーは社会でどのように活用されているのでしょうか。

宮里
はい。まずは農業分野での事例です。青森県弘前市の大学では、2017年に西洋ナシの一種「ラ・フランス」の最適な出荷時期を、このセンサーで見極める実験が行われました。熟す段階で出てくる甘い香りをセンサーで捉え、硬さとの関係をAIに学習させることで熟れ具合を判断しようという実験です。得られたデータをもとに、生産農家での出荷時期の判断や販売店での品質保証の基準として使うことが期待されています。

続いては酒づくりの現場での事例です。
2020年、新潟県長岡市の日本酒メーカーでは、日本酒の製造過程でこのセンサーを使う実証実験を行いました。この実験では、酒づくりの工程で重要な「もろみ」を発酵させるタンクにセンサーを取り付け、発酵の進み具合を測定する仕組みを作りました。
センサーの設置によって、リアルタイムで発酵の度合いを確認でき、作業の効率化が図れるほか、職人の経験に頼っていた作業を数値化することで安定した品質を確保できるようになります。

AI嗅覚センサーの実証実験例~その1~

3つ目は、医療・ヘルスケア分野での活用です。茨城県内の県立病院と大学では、このセンサーで患者の呼気のニオイを調べ、ガンを早期発見する研究が進められています。ガン細胞からは正常な細胞とは違うニオイが出ています。
このニオイ成分は呼気にも含まれるため、この実験ではセンサーを組み込んだ専用の小型装置を入れたビニールパックに吹き込んだ息をセンサーで捉え、AIで分析します。
手術の当日、術後1週間、術後1か月に同一条件で呼気を採取したところ、8割の確率で肺ガンを患っている状態か判別できたということです。現在、肺ガンの検診は放射線を使うCTスキャンで行っていますが、センサーで検診できれば、放射線に被ばくすることなく、安心して検診を受けられます。
将来的にはガンの種類に関係なく、1回の検査で早期発見が飛躍的に進む可能性もあります。

AI嗅覚センサーの実証実験例~その2~

後間
今回は「医療も農業も酒造りにも「ニオイセンサー」でITをフル活用」について野村證券那覇支店の石山昇平さんにお伺いしました。ありがとうございました。

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