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真栄城 潤一

真栄城 潤一

沖縄初上陸!五感と思考を揺さぶる「バンクシー&ストリートアーティスト展」

バンクシー展_沖縄

ブラックなユーモアと強烈な社会的メッセージを有した作品で、世界中の人たちの耳目を集めているイギリス出身の覆面アーティスト「バンクシー(BANKSY)」の沖縄初の展覧会が9月16日から浦添市美術館で始まった。会期は10月10日までとなっている。展示会場には、いまや時代のポップ・アイコンとなっているバンクシーの作品に加えて、さまざまなストリート・アーティストによる作品も合わせておよそ100点が並んでいる。
公共の都市空間(=ストリート)で横目に見る、あるいはもしかしたらスルーしてしまうかもしれないストリート・アートを美術館の展覧会で目にするのは少し奇妙で、違和感を覚えるかもしれない。そのアンビバレントさも含めて、五感と思考を刺激する鑑賞体験を味わえる。

バンクシー展_沖縄
15日に行われた内覧会の様子

バンクシーはイギリス出身で、1990年代初頭からグラフィティ(=落書き)活動を始め、社会に「問い」を投げかける、いやブチかますようなアート活動を世界各地でゲリラ的に行ってきている。“覆面”アーティストと言われているとおり、バンクシーが誰なのかは明らかにされていない。

バンクシー展_沖縄

美術館のエントランスからメインの展示室に向かう通路の壁面には、「BANKSY’s Voice」としてバンクシーがこれまでに発したメッセージの断片が散りばめられている。「世界を変えたくても、資本主義が崩壊しない限り、我々には何もできない。その一方で、誰もが買物という行為で自分を慰めるしかない」「旗を振るのを楽しむような奴らは、それを持つに値しない」といった具合に。

バンクシー展_沖縄
さまざまなスタイルのストリート・アートが並ぶ

警句の通路からバンクシーの作品が並ぶ展示室にたどり着く前に、ROOM1と2のふたつの部屋でストリート・アートやグラフィティの歴史にほんの少し触れることができる。これらの表現は、60年代の終わりにアメリカはニューヨークのサウス・ブロンクスで、アフリカ系やラテン系の若者の間で生まれ、流行したものだ。公共物にスプレーなどでペイントされたサイン(Tag)や絵柄は、文字とおり「落書き」だ。数十年後にそれがアートとしての価値を持ち、遠く沖縄の美術館で展示されることになるなんて、描いてる人たちは思っていただろうか?…そんなことを考えながら、色んなスタイルの表現を見比べてもいいかもしれない。

展覧会のキュレーターを務めたパトリツェア・カッタネオ・モレシさんは、ストリート・アートについて「都市空間と対話するパブリック・アートであり、それが置かれた環境や人びとと対話するものです。ある場所で生まれ、そこで終える運命にある儚い芸術です。美術館や個人のコレクションとして永遠に保存されるのではなく、与えられた時間のなかで最も多くの人に届くことが目的なのです」とコメントを寄せている。

そして、ROOM3にメインのバンクシー作品66点が並ぶ。三方の壁面に額装された作品がかけられていて、中央のテーブルにはUKを中心としたミュージシャンのアートワークもディスプレイされている。作品はオマージュとしての引用、資本主義への批判、アウトロー、社会への挑発、そして反戦といったカテゴライズで大まかにまとめられている。会場で観る楽しみを奪うわけにもいかないので、ほんの少しだけ作品を紹介したい。

バンクシー展_沖縄
「シュレッダー事件」でも名を馳せた代表作のひとつ

本展覧会のフライヤーのメイン・ビジュアルにも使用されているこの絵は、数年前にニュースやワイドショーで目にした人も多いのではないだろうか。ロンドンで行われたオークションに出品されていた同じ図柄の絵画作品が、およそ1億5,000万円で落札が決まった刹那、額縁に仕込まれていたシュレッダーで裁断された。この事件は世界中で爆発的に話題になって、日本でもバンクシーの知名度が一気に上がるきっかけとなった。
この少女が風船を取ろうとしているのか、それとも手放しているのか、いずれかの解釈でこの作品の意味合いは変わる。この作品は2017年に「イギリス人が好きな芸術作品」ランキングで堂々の1位を飾った。

バンクシー展_沖縄
もともとの絵はベツレヘムの壁に描かれている6mの壁画だ

バンクシーの名前を知らなくても、この絵は見たことがある人も少なくないかもしれない。この作品も前出した「風船と少女」に並ぶバンクシーの代表作で、もともとはパレスチナの壁に描かれた高さ6mにもなる初期作品だ。イスラエル軍の軍事的な攻撃に投石で対抗したインティファーダ(抗議運動)がモチーフになっていて、キャップをかぶり顔の半分を隠した男性が投げようとしているのは石ではなく花束になっている。

バンクシー展_沖縄
バンクシーはネズミ好き

作品に動物のモチーフを多用するバンクシーが、自らの姿やアティテュードを重ね合わせたアイコンとしているネズミ。ラジカセを持ったり、傘をさしたり、プラカードを掲げたりと、さまざまなバリエーションで描かれていることからも、好んで描かれていることがわかる。そしてこのネズミには“厄介者”から転じて、反逆者、被抑圧者、社会から疎外された人たちを象徴する意味も込められている。
 ちなみに、数年前に小池百合子都知事がツイートして話題になった、東京都港区の防潮扉に描かれていたバンクシー(のものとされる)作品も、傘をさしてカバンを持っているネズミだった。

 このほかの展示作品にもそれぞれ、ちょっと吹き出してしまうようなキャッチーな面白さや、かなり毒のあるメッセージが込められている。気になった表現を調べてみると、これまで知らなかったことを知ることができるかもしれない。会場に足を運んで、自分の目で見てほしい。

 ということで、続きはぜひ会場で!

Information

バンクシー展_沖縄
BANKSY & STREET ARTISTS(バンクシー&ストリートアーティスト展)

2022/09/16(金)~2022/10/10(月) 09:30 ~ 17:00
平日 当日券
(一般1,800円 大学・専門・高校生1,500円 小中学生1,100円)
土日祝日 当日券
(一般2,000円 大学・専門・高校生1,800円 小中学生1,200円)

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