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「サトウキビは島の宝」物価高の影響でこれまでにない苦境に立たされているサトウキビ農家
世界的な原材料価格高騰の波が沖縄のサトウキビ産業に暗い影を落としている。
「見えない出口産業クライシス」サトウキビの安定的な生産に欠かせない化学肥料の価格が跳ね上がり生産者は、これまでにない苦境に立たされている。石垣島の農家を取材した。
肥料価格がこれまでの価格の1.5倍に
これはサトウキビ栽培に使われる化学肥料、約3か月分だ。
伊敷繁光さん
「もう今肥料が大体1倍半ぐらいになってるんですよ。だいぶ値上がりしているんです」
石垣島でサトウキビを栽培する伊敷繁光さん。中学生の頃から父親の畑を手伝いはじめ今では13ヘクタールの畑を営んでいる。
世界的な穀物需要の増加やエネルギー価格の上昇に加え、ロシアによるウクライナ侵攻などの化学肥料の国際価格が大幅に上昇した。
サトウキビの安定的な生産に欠かせない化学肥料の価格は2022年5月までの価格と比べ55.1%上昇し過去最高となり、2022年11月の価格改定ではさらに高くなる見通しだ。
伊敷さんが住む石垣島では1袋20キロで2268円だったものが、2022年10月では3429円に値上がりした。伊敷さんの場合、肥料は2か月に1回、1.5トン近く消費するため、値上げは大きな打撃となる。
“ダブルパンチ”台風の影響でさらに厳しい状況に
伊敷繁光さん
「向こうからこっちまでみんな自分の畑なんですよね。順調に成長すれば(100平方メートルあたり)10トンとかそれ以上出るときもあるんですけど、肥料を入れないことにはトン数あたり増産できないもので」
サトウキビの価格は、糖度によって変動する。同じ面積の畑からより多くの利益を生むためには、肥料を効果的に使って質の良いキビを育てなければならない。
2022年、サトウキビの単価は基準となる糖度13.7度で1トンあたり2万2千円あまり。
この価格は1年毎に決まっていて肥料が高くなったとしても、単価が上がることはない。
石垣島では2022年9月の台風12号が通過後雨が少なかったため塩害が続き、一部のサトウキビでは成長が遅れたり、枯れたりしているという。
伊敷繁光さん
「農家にとってはダブルパンチって感じですよね。生活に直結していますので、生産が継続できるようにやっぱり支援してほしい。国や県もそうしないことにはもう、そのままの状態だととてもじゃないけどマイナスになってしまう」
対策実施も継続できる目処は・・・
この厳しい状況では自助努力だけでは、もはや限界にきているとして2022年10月6日、県内各地のサトウキビ生産者の代表が玉城知事に窮状を訴えた。
全沖縄製糖労働組合 石川幸治 執行委員長
「肥料1袋20キロ、今まで2000円くらいで買えたものが、3500円とかそういう事になっていまして、かなり生産現場では厳しい」
玉城知事
「肥料コスト上昇分を沖縄県が全額を負担させて頂くにはあまりにも財源が乏しくてなかなか、心痛い思いではありますけども。県としてもできる努力を最大限やっていきたいと考えている」
全沖縄製糖労働組合 石川幸治 執行委員長
「サトウキビは肥料を入れないと育たないです。我々の力だけではどうにもならないですが、とりあえず訴えてみようと」
化学肥料の高騰を受けてJA沖縄では2022年6月から独自の支援策として約2億円を投じ、右肩上がりにある肥料の価格を据え置きとする対策を実施。
それでも資金には限りがあり、2022年11月以降、これを継続できる目処はたっていない。
農林水産省は生産者が肥料を購入した場合、値上げ分の7割を負担する支援策を導入したが、制度設計が複雑で県内では思うように申請が進んでいないのが現状だ。
「サトウキビは島の宝」守るために持続的な支援が必要
県内の全耕地面積の約半分、農家の7割が栽培するサトウキビ。
沖縄のサトウキビ産業は出口の見えないトンネルの中を進んでいる。
──農家にとってサトウキビは外せない?
伊敷繁光さん
「外せないですよね。どこの島にもキビはありますよね。どんな小さい島までも。だから、そういうのを考えるとやっぱりキビは島の宝じゃないですかね」
これまでにない苦境にあえぐサトウキビ生産者。そして、地域経済に密着した産業の未来を守るために、持続的な支援が求められている。
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