沖縄経済
ますます重要になる「エネルギーの地産地消」
後間
こんにちは。後間秋穂です。地域で生産された農作物などを地域内で消費する「地産地消」。
今エネルギーの分野でも「地産地消」の考え方が広まりつつあるようです。
その最新事情について野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。宜しくお願いします。
宮里
よろしくお願いします。
後間
「エネルギーの地産地消」とはあまり聞いたことがありませんが、詳しく教えて下さい。
宮里
はい。農作物などの地産地消になぞらえて、地域内で電力などのエネルギーをつくり、その地域内で消費する取り組みをエネルギーの地産地消といいます。
2011年の東日本大震災等の経験を元に注目されたもので、三つの大きなメリットがあると考えられています。
一つ目は、災害時でも電力を安定的に供給できること。
二つ目は環境負荷の低減が期待できること。
三つ目は地域活性化に貢献できることです。
後間
近年自然災害による被害や規模も大きくなっていますので、地元で電気を作る仕組みがあればリスクも低減できそうですね。
宮里
おっしゃるとおりです。
エネルギーの地産地消が、災害時にどのように役に立つか見ていきましょう。
2019年に台風15号が上陸した千葉県では、最大で約64万戸が停電し、復旧まで2週間以上かかるなど大きな被害がありました。そうした中、千葉県のある道の駅では停電のわずか5時間後に温水シャワーが無料で提供され、隣接する住宅エリアにも電力が供給されました。
後間
なぜこれだけ早く復旧できたのでしょうか?
宮里
道の駅や、33万戸の戸建て住宅などエリア全体では、地下の天然ガスを利用して自家発電できる設備を運用しています。
このエリア全体の電力需要の8割がこのガス活用による発電と太陽光発電でまかなっていて、残る2割程度が大手電力会社の電力でした。
このように小規模かつ、独立した電源でつくった電気を限られたエリアで利用する仕組みは「マイクログリッド」と呼ばれます。
後間
では、「環境負荷の低減」と「地域活性化への貢献」についてはどのような事例がありますか?
宮里
はい。「環境負荷の低減」の事例でいうと、大小63の島々からなる長崎県五島市では必用な電力量のおよそ56%を風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーでまかなっていて、2024年までに再生可能エネルギーによる自給率をおよそ80%にまで高めたいとしています。
続いて「地域活性化に貢献」の事例です。福岡県八女市では地元の太陽光パネル設置業者などが、新たな電力小売り会社を設立しました。
事業に関わるプレーヤーを地域の企業や団体に限定することによって電気料金などが地域外に出ていかない仕組みを構築、地元で経済を循環させる狙いがあります。
後間
地域の電力インフラを地域で守り、育てていこうという考え方ですね。
宮里
SDGsに対する関心も高まっている昨今、地域のひとりひとりがエネルギーの地産地消の主役になることを目指す取り組みが広がっていくものと思われます。
後間
今回は「エネルギーの地産地消」について、宮里さんにうかがいました。ありがとうございました。
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