公開日
OTV報道部

OTV報道部

“産後パパ育休” 男性の育児後押しで社会全体にもメリットが

男性の育児への参加を促すことを目的に2022年10月1日から始まった「産後パパ育休」。
新たな制度は男性の育児参加の後押しとなるのか。積極的に導入する企業とその意義を取材した。

2025年までに男性の育休取得率を30%へ

厚生労働省の調査によると、2021年、育休を取得した男性は13.97%で、女性の85.1%に比べると低くなっている。

政府は2025年までに男性の育休取得率を30%にするという目標を掲げていて、そこで新たに打ち出したのが、2022年10月1日からスタートした「産後パパ育休」だ。

この制度では、妻が子どもを出産してから、生後8週までに夫は最長で4週間の育休を2回に分けて取れるようになった。

従来の育児休暇制度よりも柔軟に休めるようにすることで、男性の育児参加を促進するねらいがある。

沖縄銀行などでつくる、おきなわフィナンシャルグループは国の制度が始まるのに先立ち2022年7月から4週間の育休取得を「義務化」した。

沖縄銀行 人事部 原和也さん
「実は企画段階では我々は義務化というところまで踏み込んでおりませんでした。トップがおっしゃってくれてですね。我々としては非常にやりやすかった」

沖縄銀行 人事部 原和也さん
「(取得した男性職員からは)やっぱりよかったっていう声が今のところ、もうほぼ100%でございます。安心できる職場の中で活躍できる土壌というのを作っていけると思います」

「妻を何とか休ませてあげたい」

沖縄銀行の大村昌寛さんは2022年10月1日に長女・琉歌ちゃんが誕生し、「産後パパ育休」を取得した。

育休取得中の大村昌寛さん
「(長女の誕生は)本当にもう待望だったので、とても感動しました」

育休取得中の大村昌寛さん
「夜に限らず、もちろん赤ちゃんはずっとミルクとか母乳とか欲しがって。もう1、2時間おき(妻は)睡眠がほとんど取れないのが現状で、逆に何とか休ませてあげたい」

妻 大村美由希さん
「家事全般と赤ちゃんのお風呂を毎日入れてくれたり。もう産後のこの体力の身体的な回復がまだまだなのでその面と精神面が不安定なので、そばにいてくれてとても助かってます」

育休取得率向上は業務の属人化の解決がカギ

男性の育児休暇取得を推進していく上でどういう課題があるのだろうか。
キャリアコンサルタントの福島知加さんにお聞きした。

ワダチラボ 代表取締役社長 福島知加さん
「よく言われる課題は、代替要員が確保できない、もう一つがですね、代替要員を確保する予算がない、三つ目が業務が属人化していて引き継ぐ相手がいない」

沖縄銀行では2021年まで男性職員の育休取得が14%と低い水準にとどまり、行員を対象にしたアンケートでは男性が育休を取得しづらい雰囲気があるという回答が目立った。
こうした結果を踏まえ、おきなわフィナンシャルグループでは育休中を「有給」とし収入面の不安の解消を図り4週間の取得の義務化に踏み切った。

育休取得中の大村昌寛さん
「この有給でというのはとても大きな挑戦だと思うんですね、とてもいい施策ではないかなと思いました」

育休取得の義務化は、各部署に計画的な業務の引き継ぎを促し、仕事を「属人化」せず誰もがカバーできる体制作りにつながっている。

育休取得中の大村昌寛さん
「みんな本当に協力的だったのが精神的にも支えられて本当に気兼ねなく取れたので、逆に自分もそういう立場になったときに、今度は本当に応援する側でそうやっていきたいなと感じました」

職員同士の結びつきや相互理解が深まりモチベーションの向上にも

男性の育休取得を促すことは、企業側にも大きなメリットとなると考えられている。

ワダチラボ 代表取締役社長 福島知加さん
「まず一つ目で言うと定着率、二つ目は人材確保の部分、三つ目はその企業のブランディングっていうところです。四つ目はやっぱり従業員の家族を守れるっていうところが大きいかなと思います」

仕事と育児の両立を支援することで、企業への信頼感が高まり。ワークライフバランスを重視する若い世代に選ばれやすい職場になる可能性がある。

企業側も育休を取得することで新たな価値観が生まれ、職員同士の結びつきや相互理解が深まることで、仕事へのモチベーションの向上に繋がると考えている。

沖縄銀行 人事部 原和也さん
「育児をすることで今まで仕事ばかりやってた人が、全く違う環境で切磋琢磨していくことで新しい発想が生まれる。新たなサービスとか、お客様へを還元していくということができると思います、それは今すぐではないですけれども中長期に見て大きな効果があると思っています」

国が産後パパ育休を推進するもう一つの側面 女性の産後うつを防ぐために

「産後パパ育休」を国が推進する大きな理由の一つに挙げられるのが、女性の「産後うつ」防止だ。厚生労働省の調査で妊産婦の死因で最も多いのは自殺。
出産後、体も心もボロボロの状態の妊産婦をいかに守っていくかが大きな課題だ。

ワダチラボ 代表取締役社長 福島知加さん
「やっぱり1人で全部いろんなことを抱えちゃって、(産後うつになる割合は)2週間後で25%まで上がっている特に初めての出産になってくると互いに初めて(不安)じゃないですか。互いに一緒に成長していくことを目指していただきたい」

これから「産後パパ育休」を取得する宮城寛人さん。
頼れる先輩の存在で引継ぎも順調に進んでいます。

沖縄銀行 美里支店 田里夏子 支店長代理
「宮城さんが育児休暇取ることに対してはみんな本当に協力的で、応援体制とかしっかり取れてるなと思います」

心置きなく育休を取れる環境に感謝するとともに、育児に向き合う決意を語った。

これから育休を取得する宮城寛人さん
「このかけがえのない時間を、やっぱり3人で支え合いながら、一歩一歩進んでいければいいなと、全力で一生懸命育児取り組んでいきたいと思ってます」

ワダチラボ 代表取締役社長 福島知加さん
「(産後パパ育休は)一言で言うと命を守る施策だと思っています、なので今後沖縄の可能性をもっともっと広げてくれる施策でもあると思います」

男性の育児を後押することで、社会全体でそのあり方を見直し新たな価値観の形成への可能性も秘める産後パパ育休。
社会の営みを維持・発展させながらかけがえのない命を守る取り組みとして広がっていくことが期待されている。

産後パパ育休制度では、給与の3分の2が国から取得した本人に支給され社会保険料も免除になる。

夫が休日に家事・育児に参画している時間が長いほど、第二子以降の出生の割合が増えるという政府の調査結果もある。

あわせて読みたい記事

HY 366日が月9ドラマに…

あなたへおすすめ!