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メジャーデビュー直前!護得久栄昇先生「ノルマがプレッシャー」弟子の仲座さん「馬車馬の馬より働かせる」
昨年秋、メジャーデビューを発表した超大物民謡師範・護得久栄昇先生。沖縄だけでなく、音楽業界にも激震が走りました。OKITIVEでは過去にも護得久先生にインタビューしていますが、その後メジャーデビューに向けて準備をしていたなんて!まもなく発売される2枚目のアルバム「護得久栄昇大全II」や、2023年にチャレンジしたいことなど、護得久先生と弟子の仲座健太さんにうかがいます。
目次
メジャーデビューのノルマがプレッシャーだよ!
――さっそくですが、まもなく「護得久栄昇大全II」でのメジャーデビューを控えています。意気込みをお聞かせください。
護得久栄昇先生(以下、護得久)「2023年1月18日にテイチクエンタテインメントから全国デビューだよ。まもなくだから、待っていなさい。2枚目のアルバムについて、弟子の仲座から『新作が出たら沖縄県内41市町村ををまわろう』と提案があってね。くまなくまわろうと思っているよ。」
弟子の仲座健太さん(以下、仲座)「内地にもプロモーションしに行きますが、ウチナーンチュ代表としてデビューするからには、まず沖縄のみんなに応援してもらえる環境を作りたいんです。それで、まずは沖縄県民の方に今回のアルバムを聞いてもらおうって。沖縄県内の41市町村すべてでブースに立って、ステージをしたいなって構想しています。」
――新春特番バラエティ「ゴリん家で語やびら(ゴリんちでかたやびら、OTV沖縄テレビ)」の収録では、CD発売日から3ヶ月以内に1,000枚完売というノルマの話が出ていましたね。
仲座「細かい話、2022年度内なんですよ。発売が1月18日で、年度は3月31日まで。だから実質2ヶ月と10日ちょい。ハードですよね。」
護得久「これ、ガチだからね!テイチクくんがぜひやってくれと。実質2ヶ月って、私が知らないのは問題だけどね。」
仲座「護得久先生は何も知らないけど、2023年は馬車馬の馬より働かせる予定です(笑)」
――ノルマはCDですか?それともデジタル配信サービスもあわせてですか?
仲座「配信サービスはカウントせず、CDだけで1,000枚です。配信は配信でまた別の話。なかなかです。だいぶヤバい。」
護得久「そうなん!?配信サービスはカウントしないの!?このご時世ね!!音楽は圧倒的にダウンロードでしょ!!??ちょっと、もう一回話し合おう??みんなスマホで聞くから、CDプレイヤーを持っている人、少ないよね。いやいや、配信ダウンロード数もカウントしよう。一瞬にしてゴールが見えなくなったよ。」
仲座「盤を作るんですから。作ったものは売らないといけないでしょ?だから馬車馬の馬以上に働かせるんですよ。」
護得久「馬車馬の馬以上。笑うしかないね、ほんとに(笑)」
――この記事を掲載するOKITIVEの読者は20~40代が多いです。その年代向けにセカンドアルバム収録曲のおすすめを教えてください。
仲座「ヒヌカンを拝む日の曲、1&15(ワンアンドフィフティーン)がおすすめです。結婚したばかりの新婚さんや、お子さんが生まれたばかりのとき、トートーメーを継いだとき。そんなときに一日、十五日にヒヌカンのうさげてウートートーするなんて、意外とわからなかったりするから。今回のアルバムには旧暦やヒヌカンなど、沖縄の文化に親しむ曲があるので、ぜひ聞いてもらいたいです。」
護得久「ウチナー文化の歌だからね、みんな10枚くらい買って勉強しなさい。配信のダウンロードはノルマのカウントにならないから、絶対ダメだよ!わかるよね~!」
――セカンドアルバム制作にあたり、どんなところにこだわりましたか?
護得久「うん、わたしはないね~。」
仲座「護得久先生はそういうミーティングには全然参加しないから。」
護得久「そう。もちろん15曲入りということも、半分くらいの曲に私がかかわっていないことも、知らなかったね。
ある日、レコーディングで呼ばれて行ったら、別の歌い手さんもいるわけさね。それで私の出番は一言二言で終わり。それで『これ、護得久栄昇のアルバムのレコーディングだよね!?メインってなんだろう…』と思いながら録って。できあがった曲を聞いたら、私はほんとに一言二言しか発してない。」
仲座「ほかにも護得久先生がほぼ歌ってない曲や、別の歌い手さんがメインの曲、さらにまったく関与してない曲もあります。なんなら現場に来ない日もあった。曲の制作過程も知らないし、曲も聞かずに一言だけ録って『はい、完成』っていうのもありました。」
護得久「もし法律でアルバムの基準が定められて『全部歌ってないとダメ』とかだったら、私、完全に訴えられるよ?!(笑)」
仲座「琉球古典音楽家のよなは徹さんがつきっきりでプロデュースしてくれています。かれこれ5~6年の関係なので、よなは徹さんの護得久栄昇の遊び方が極められていて。今回のアルバム制作ではよなは徹さんから『こんなことやってほしい』とガッツリなオーダーもありました。よなは徹さんの実力と護得久先生のキャラクターがいい感じに混ざり合って、聞いてる方も楽しめるはずです。
あとは前川守賢さんや山川まゆみさんも参加してくれて。これまでの護得久先生の歩みとはまったく違うベクトルになっています。今回のアルバムはすごい仕上がりです。」
――沖縄の著名な歌い手さんがかかわって、文字どおり「本人以外、すべて本物。」ということですね。となると、余計にノルマが達成しなければ、本当にマズいのでは…。
護得久「だからよね~!話を聞けば聞くほどプレッシャーだよ!」
仲座「みんなの想いを背負い、結果を出すのはすべて護得久先生ですから。3月末までは睡眠時間があると思うなよ。しに眠らさんよ!必要ど!」
護得久「人間の三大欲求だよ(笑)」
沖縄の伝統芸能と三線と
――最近、仲座さんは三線に取組まれていますね。お父さんが三線をお得意とされているそうですが、仲座さんご自身も幼い頃から親しまれてきたのですか?
仲座「父親はもう30年くらい三線を習っているんでしょうかね。父親の三線はずっと家で聞いていましたが、僕は教わってはいないです。4年前のお盆のときだったかな、三線をやってみたいと話したら、父親が『じゃあこれ持っていけ。あげるよ』と譲り受けて。それがきっかけですね。護得久先生の歌のうしろで三線を弾く曲もあるので、これを機に先生の曲もと思って始めました。」
――去年の南風原ふるさと博覧会では、地方(じかた)として参加し、三線を演奏されていましたね。
仲座「僕は南風原町の喜屋武出身で、以前から生まれ育った地元のいろんな行事に参加してきました。演者やスタッフとしてお手伝いしてきたんですが、若い世代の邪魔はしたくないですし、そうなるとかかわる角度がだんだんなくなってきて。
そんななか手薄だったのが地方(じかた)だったんです。地域の方に『最近三線触っているからちょっと教えて?』、『地方に入らせてもらえない?』みたいな感じで、すっと地方デビューさせてもらいました。タイミングもよかった。」
――地域のお祭や行事って、なんとなく格式高く入りにくい気がしますが、地方デビューはどんなお気持ちでしたか?
仲座「緊張しましたけど、それ以上にとっても楽しかったです。なんならこれで生きていきたいくらい。たしかに格式が高く感じていたんですけど、でも護得久先生と一緒で、高く見えるだけで実は違った(笑)」
護得久「おい!(笑)」
仲座「実際、入り込むと意外とヨレヨレだったりするんですよね。そのほうがリアルで僕はいいと思うんです。格式は思ったより高くないし、誰でも入りやすいように門戸は開いていたほうがいい。門戸って開き方が上手な人と上手じゃない人がいるじゃないですか。それと地域も同じで。護得久先生は『誰でも入っていいよ~』みたいな開き方が得意なんですよ。」
護得久「基本ウェルカムだからね。」
仲座「伝統芸能は門戸の開き方が上手じゃないところも多い。だから次の世代のためにも、もっと広く開いていけたらと思っています。」
――護得久先生は三線はお得意ですか?
護得久「三線は後輩に譲っているよね。ここまできたら触る必要がないかなってね。」
仲座「一時期、護得久先生も頑張ったことがありました。ラジオ沖縄さん主催の新唄大賞(みーうたたいしょう)という音楽コンテストがあって、そこでデビュー曲『愛さ栄昇節』を歌って三線を弾こうとエントリーしました。練習を重ねて、コンテスト当日もリハーサルして。でも緊張でガクガクで。」
護得久「人前に出ると手が震えて動かんよって(笑)」
仲座「その日もサポートだったよなは徹さんが『僕が三線弾くので、先生はやらなくて大丈夫』と。おかげで新唄大賞の大衆賞をいただきました。」
おふたりに聞く、2023年にやりたいこと
――2023年の抱負をお聞かせください。まずは護得久先生からお願いします。
護得久「そうだね、いまでもみんなに喜んでもらっているけど、今年はもっと護得久栄昇のいじり方を知ってもらいたいね。護得久栄昇の遊び方をどんどん広めて、さらに話しかけてくれるファンを増やそうね。」
――実は… ゆいレールのなかで護得久先生をお見掛けしたことがあるんです。近くのオジーが普通に話しかけて、先生をいじっていました。あんなノリで問題ありませんか?
護得久「大丈夫だよ。もちろん、ほかのお客さんに迷惑をかけるのはチンダミするけど、小さい声で『これカツラね?』『地毛だよ』みたいな会話をするのは楽しいし、ありがたいことだよ。一緒に写真を撮るのだってうれしい。みんなが喜んでくれるのが一番だよ。」
――仲座さんはいかがですか?
仲座「ここ最近の自分のテーマは『マクロじゃなくてミクロ』です。ずっと沖縄で活動してきて、ウチナーンチュ芸人として『沖縄とは?』って考えてきました。でも最近は『沖縄』というくくりですら大きく感じてしまって。沖縄って自分が簡単にいえるほど単純なものじゃないと思い始めたんです。
それで地元の南風原町、さらには喜屋武地区とどんどんミクロに寄っていき、自分の足元、根っこの部分を理解しようと思ったんです。その結果、地域行事への参加にも繋がっていった。なにも武器を持たず、手ぶらで『沖縄』っていうことがむず痒くてしょうがなかった。だから足元を掘り下げることで、はじめて『沖縄』が見えるんじゃないかと。
護得久先生とアルバムを持って41市町村を回りたいと思ったのも、その一環です。沖縄の人といっても那覇と国頭村じゃ違うと思うんです。だから全市町村の人たちの顔を直接見に行くのが大事で。このぐっとミクロに寄せる考え方で、2023年は活動をしていきたいと思っています。」
あなたの「だから沖縄が好き」とは?
――最後の質問です。護得久先生と弟子の仲座さん、おふたりにとっての「だから沖縄が好き」を教えてください。
護得久「私はね~、ウチナーのゆるいところだね。良くも悪くもだけど、そのゆるさがいい感じにね。キチキチにならないほうがいいよ~。」
仲座「人間の生活習慣やリズムってやっぱり、旧暦が一番しっくりくると思うんです。それを大事にしている沖縄が大好きですね。」
――護得久先生、弟子の仲座さん、本日はありがとうございました!
2023年1月18日(水)ついにメジャーデビュー!
護得久栄昇2nd.Album「護得久栄昇大全Ⅱ」TECL-1003(全15曲入り)
サウンドプロデュース:よなは徹
テイチクエンタテインメントより発売。
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