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小林 美沙希

小林 美沙希

首里城の赤瓦をふたたび

小林美沙希アナウンサー(OTV 沖縄テレビ)のみさきいろ

2021年10月31日で首里城の焼失から2年が経ちました。

2019年の同日、早朝から昼頃まで炎に包まれ崩れ落ちていく首里城の様子を中継でお伝えしていたあの日のことは今でも鮮明に覚えています。

かつての荘厳な首里城
かつての荘厳な首里城

火災を目の当たりにした一人として、再建に向けての過程を追いかけていきたいと考え、私が今年取材していたのが「首里城正殿の赤瓦」の復元についてです。

実は、1992年に再建された際に首里城正殿の赤瓦に使用されていた土が、現在はほとんど採れる可能性がないことが分かり、当初「全く同じものを作るのは難しい」と言われていたのですが技術の進歩もあり、現在瓦の試作が進んでいるんです。

沖縄県工業技術センターにて取材の様子
沖縄県工業技術センターにて取材の様子

土の調査や配合などの研究を進めている沖縄県工業技術センターの花城主任研究員にくわしくお話を伺いました。

沖縄の赤瓦は従来吸水率が高いのですが首里城は巨大な木造建築のため、水を含んで重くなってしまうと構造に影響を与える恐れがあったため吸水率を下げることが課題でした。

今回、県内さまざまな場所の土を調査したところ那覇市首里・石嶺から採れるクチャが吸水率を下げる特性があることが分かり、原料についてある程度の目途が立ちました。

首里城正殿の試作瓦の原料
首里城正殿の試作瓦の原料

原料は赤土・クチャ(現在一般的な赤瓦によく使用されているもの)・石嶺クチャ・そしてシャモットが配合されることになりました。
“シャモット”とは、赤瓦を砕いたものなのですが、前回の平成の再建に使われた赤瓦のうち、焼け残ったものを再活用していて、人々の想いを繋いでいこう、という願いが込められています。

これらの原料を使って、今年9月から瓦の試作が進められています。

この先、実際に赤瓦の製作を担っていくのは赤瓦事業協同組合に加盟している瓦工場になるので今回は組合の代表を務める八幡さんの工場で瓦がプレス成型されました。

八幡瓦工場にて 写真左・花城主任研究員 右・八幡昇代表
八幡瓦工場にて 写真左・花城主任研究員 右・八幡昇代表

プレス成型された瓦をじっくり2日間かけて焼き、赤瓦が出来上がります。

窯から出した直後の首里城正殿の試作瓦
窯から出した直後の首里城正殿の試作瓦

問題なく焼けているということで、これからさらに技術検討委員会で色味の検討など詳細を決めていき、実際に首里城の屋根に葺かれる瓦の製作が進んでいきます。

土や原料の研究だけでも1年以上かかっていて、製作に入るにはまだ時間がかかりますが…

ただ、一歩ずつでも首里城再建に向けて進んでいるのだと知っていただくきっかけになれば嬉しいです。

再建には様々な意義があると思いますが、こうした研究が進められることや、技術の進歩、他にも伝統工芸を担う人材の育成に繋がることなど形あるものを作る以上に多くの成果をもたらすものだと感じています。

これからも、“令和”の首里城再建のあゆみを見守り、伝えていけたらと思います。

1回目のコラムは真面目な内容になりましたが、今後はのんびりとした内容になると思いますので、どうぞ気楽にお付き合いください!!

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