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長嶺 真輝

長嶺 真輝

元沖縄水産・大野倫さんに聞く!プロ野球キャンプ、2023年に注目の沖縄県勢選手は快挙を成したルーキー右腕ら

沖縄水産高校の元投手で現在野球指導者の大野倫さん
沖縄水産高校出身で元プロ野球選手の大野倫さん

今年も”球春”が迫ってきた。
 
沖縄の風物詩であるプロ野球チーム(日本野球機構=NPB)の春季キャンプが、2023年2月1日から県内各地ではじまる。今年の実施チームはセ・リーグ全6球団、パ・リーグ3球団のあわせて9球団。近年はペナントレース中も沖縄セルラースタジアム那覇で公式戦が数試合行われているが、NPB球団のない沖縄のプロ野球ファンにとって、キャンプは一流プレーヤーたちを身近に目にできる貴重な機会だ。

現在、沖縄出身の選手も多くの球団で活躍している。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本代表の内定選手30人中3人がウチナーンチュから選ばれ、代表選手の出身地では都道府県別で最多に。過去4度のWBCでは1人も選ばれていなかっただけに、沖縄野球のレベルが向上していることがうかがえる。

沖縄でキャンプを張るチームに所属する県勢選手で、今シーズン注目すべきはどのプレーヤーか。1990年、91年に夏の甲子園で沖縄水産高校の2年連続準優勝に貢献し、1996年のプロ入り後は読売ジャイアンツや福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)でプレーした野球指導者の大野倫さんに聞いた。

目次

筆頭は中日ドラ1の仲地礼亜!沖縄の大学から初のドラフト指名

真っ先に名前が挙がったのは、昨秋のドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受けたルーキー右腕、仲地礼亜投手(嘉手納高-沖縄大、背番号31)だ。1965年にドラフト制度が導入されて以降、沖縄県内の大学生が指名を受けたのは初の快挙で、しかも1位という評価は沖縄の野球ファンを歓喜させた。仲地は読谷村のオキハム読谷平和の森球場で行われる2軍でスタートする見とおしだ。

大野さんが監督を務める中学硬式野球チーム「うるま東ボーイズ」は、仲地が古堅中の頃に所属していた北谷ボーイズと同じリーグだったため、よく対戦していたという。当時は「たまに力があるかなっていう程度で、普通のピッチャーという印象でした。プロに行くイメージが湧く選手ではなかったですね」と振り返る。

だからこそ、沖縄の高校、大学で着実に力を付け、1位指名を勝ち取ったことは沖縄球児の未来に光を照らすパイオニアになれると見る。「地方の高校、大学でも力があればきちんと評価してもらえるということは、将来プロ入りを夢見る若い選手たちに勇気を与えたと思います。”純県産”の仲地君が沖縄でプロの第一歩を踏み出す姿を直接応援しに行くのはいいですね」

大学時代、下半身を中心にフィジカルを強化したことで、直球の最速は151キロ。スライダーやカーブ、チェンジアップなど多彩な変化球を持ち、投球の幅が広い。大野さんは「大卒での1位指名なので、球団としても即戦力という見方だと思います。ストレートも変化球も突出していないと1位指名はされないですし、彼はコントロールもいい。厳しいプロの世界において1軍で結果を残すことは並大抵ではありませんが、仲地君も1年目から結果を出していくつもりだと思います」と期待を寄せる。

ジャイアンツの”WBC捕手”大城卓三も必見

次の注目選手は、WBCの日本代表に内定しているジャイアンツの大城卓三捕手(東海大相模高-東海大-NTT西日本、背番号24)。WBCでは埼玉西武ライオンズの山川穂高選手(中部商業高-富士大、背番号3)、オリックス・バファローズの宮城大弥選手(興南高、背番号13)も内定しているが、西武とオリックスは宮崎県でキャンプを行うため、県出身のWBC戦士を沖縄キャンプで見られるのは大城捕手だけだ。

ここ数年、ジャイアンツで正捕手を務める大城は「打てる捕手」として評価は高い。プロ5年目となった2022年シーズンは115試合に出場し、打率は2割6分6厘、本塁打と打点は自身過去最多の13本、43点だった。これらの記録はリーグ全体の捕手のなかでも高水準だ。

一方、大野さんは「ライバルが多いなかで確実に成長し、結果も残している。バッティングが評価されていますが、『打つ』だけでジャイアンツで一番多くマスクを被れる選手にはなれません。リード面ももっと評価されてもいいのかなと思います」と指摘する。実際、守備能力も高く、2021年の盗塁阻止率は4割4分7厘でセ・リーグトップ、22年は3割4分9厘で2位の数字だった。

WBCを目前に控え、ほかの選手よりも前倒しして本格的な調整が必要になるため、沖縄キャンプにどれだけ参加するかは不透明だが、ぜひ地元からの応援で大一番の大会に送り出したいところ。大野さんも「去年はサッカーのワールドカップが盛り上がっただけに、野球界もWBCで盛り上がってほしい。日本のトップレベルにウチナーンチュが数多くいるので、彼らを見て子どもたちに『ああいう選手になりたい』と感じてほしいですね」と望みを語った。

ジャイアンツのキャンプは2月16日から沖縄セルラースタジアム那覇で行われる。

沖縄水産高校の元投手で現在野球指導者の大野倫さん

俊足に磨きをかける神里和毅 主力定着へ、再起誓う

3人目はアトムホームスタジアム宜野湾でキャンプを行う、横浜DeNAベイスターズの神里和毅外野手(糸満高-中央大-日本生命、背番号8)だ。走攻守が揃った選手で、2018年のルーキーシーズンから86試合に出場して、打率2割5分1厘、21打点、15盗塁と存在感を発揮。2年目は主力に定着し、123試合に出場して2割7分9厘、35打点、盗塁も再び15個を記録した。

しかし直近2年はプレー機会が激減し、代走や守備のみでの出場が目立つように。「プロは弱点を突いてくるから、そこに対応しながら安定した成績を収めることが求められます。神里選手は固め打ちをしたりして爆発力はある。あとはシーズンをとおして安定した成績を残せられれば、チームから信頼を勝ち取れると思います。年齢的にも29歳で、今年が勝負ですね」と見る大野さん。神里は帰省した1月、マスターズ陸上の短距離で金メダルを獲得したこともある譜久里武さんから自主トレで直接走り方の指導を受けるなどし、持ち前の俊足に磨きを掛けて再起を誓う。

昨シーズン、球団新記録となる本拠地での17連勝など脅威の追い上げを見せて、セ・リーグ2位に入ったDeNA。大野さんは「神里選手にはレギュラーに定着できる実力があるので、ひとつ殻を破り、今度こそ再びレギュラーの座をつかんでほしいです」と話し、今季日本一をめざすチームで主力として活躍する姿を想像した。

「解説者の気持ちで分析」も一興

そのほかにも、北海道日本ハムファイターズで投打の”二刀流”に挑戦している上原健太選手(広陵高-明治大、背番号20)や、1軍での出場機会をうかがう東北楽天ゴールデンイーグルスの内間拓馬選手(宜野座高-亜細亜大、背番号40)、阪神タイガースの岡留英貴選手(沖縄尚学高-亜細亜大、背番号64)など各球団で沖縄出身の選手たちが奮闘している。

また、球界随一のエンターテイナーである「BIG BOSS」こと新庄剛志監督率いる日本ハムや、昨シーズンにセ・リーグを2連覇した東京ヤクルトスワローズ、昨年28年ぶりに完全試合を達成した佐々木朗希投手を擁する千葉ロッテマリーンズなど、球団ごとでも見どころは数多い。

大野さんも「ファンとしては各キャンプ地でいろんな選手の動きを見て、野球解説者やチームの編成部長の気持ちになって分析するのもひとつの楽しみ方です。『この若い選手いいな』とか『今年はこのピッチャーが出てきそうだな』とか、そういうことを感じながらお宝探しのように回ってみてください」と勧める。

コロナ禍では無観客実施や来場の予約、PCR検査の実施など特別な対応が多かったが、2023年の春季キャンプはほぼ制限がない見とおしだ。気の向くままでに各球場へと足を運び、好きな球団、好きな選手を好きなだけ追い掛ける。キャンプ地の”メッカ”である沖縄だけに許された贅沢な時間が、やっと戻ってくる。

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