「首元だけでも、覚えてください」【リップサービス金城晋也の「こちら舞台袖」】

金城晋也です！すみません。申し早まりました。（「いやいや、申し遅れるパターンは聞いたことあるけれども！」と、ひとツッコミ入れてあげてください。）

改めまして、今回よりこのコラムを担当することになりました、お笑いコンビ「リップサービス」の金城晋也です。石垣島出身の現在36歳、主にテレビや舞台で…あ、はいはい！よくお気づきで！そうです、沖縄テレビ主催「O-1グランプリ2021」のチャンピオンです。えっへん。

O-1グランプリ2021優勝リップサービス — O-1グランプリ優勝時の一枚。2年前なので、まだ味しますね。

このコラムでは沖縄のお笑い界、はたまた僕の日常なんかをつらつらと書いていくつもりです。
みなさまには、舞台袖からちらっと覗くような、そんな気軽で、そして温かい気持ちで楽しんで頂けたらと思っています。

リップサービス金城晋也の「こちら舞台袖」どうぞ宜しくお願いします。

沖縄のお笑い　リップサービス　表舞台の様子 — こちらは華やか？な表舞台の様子。

どっちがボケで、どっちがツッコミ？

自己紹介の際にコンビ名を伝えると、大抵の場合こんな質問が返ってきます。
ちなみにこれはお笑い界あるあるの1ページ目です。芸歴15年、僕もこれまでに何百回と聞かれてきました。
ちなみに僕は、ここまでの愉快な文章からも分かる通り「ボケ担当」です。（異論は認めます。）

「どっちがネタ書いてるの？」これもよく聞かれます。
僕らは基本二人でネタを書いていますが「面白いネタは僕、そうでないネタは相方が書いてますねぇ。」と割と真顔で答えています。（反論は認めます。）

10年以上前の話です。とある現場で自己紹介をするタイミングがありました。いつもの流れでコンビ名を伝えると、これまたいつもの流れで例の質問が返ってきました。
「ボケ担当です！」いつものようにキリッとした表情で回答を済ませると、なんとびっくりの反応が返ってきたんです。

「え〜！見えな〜い！」

これは初めてのリアクションでした。

「◯歳です！」「え〜！見えな〜い！」このパターンなら皆さんも経験がありますよね？実年齢より上に見られたり、下に見られたり。そこから広がる会話があると思うんです。

「ボケ担当です！」に対する「え〜見えな〜い！」にはどう反応することもできませんでした。

「そうっすかねぇ、へへへ。」とヘラヘラするのが関の山。
こんな返しをしているようじゃ、そらボケに見えんわな…なんて反省していたところさらに衝撃の事実が。

よくよく聞いてみると「”お笑い芸人”に見えな〜い！」という意味だったことが判明しまして。どなたかのマネージャーか、どこかの広告代理店の方かなと思っていた、とのことでした。

華がない

思い起こせば、デビュー当初からよくこんな事を言われていました。「ネタはいいんだけどなぁ…華がなぁ…」と。

「華がない」「特徴ない」「売れる気配がまるでない」吉幾三もびっくりのリズム。「おらこんな顔いやだぁ」と思わず続きを歌いそうになります。

リップサービス　デビュー当時 — 中列右端で謎の阪神中日戦を繰り広げる、デビュー当時の僕ら(リップサービス)。華がなぁ…

こうなったら！と、見た目に特徴がないことを活かしたネタを書いたこともあります。

相方が、僕扮する犯人の特徴をダイイングメッセージとして書き残そうとするも、特徴が無さすぎて何も書けない、というコントです。
これがまたウケにウケまして。このネタで賞レースも勝ちました。

コント「ダイイングメッセージ」の一幕。この犯人の特徴、あなたならなんて書き残す？

「笑い」というのは即ち「共感」。

「特徴がない」というコントがウケるということは、お客さんもそう思っていたということになります。「そうそう！こいつは特徴がないんだよ！よくぞ言ってくれた！」と。
ウケればウケるほど、僕は少しずつ傷ついていく。なんとも新しい感覚でした。

蝶ネクタイ

この由々しき「芸人に見えない問題」を解決すべく取り出したのが「蝶ネクタイ」です。
だって、あのヒゲダンスの衣装が蝶ネクタイなんですよ？じゃあ絶対に面白く見えるでしょ！そんな安直な理由から、僕の蝶ネクタイ生活が始まりました。
でも蝶ネクタイっていいんですよ。
正統派漫才師としての格好は崩れることなく、ちゃんとひょうきんにも見える。素晴らしいバランスです。少なくとも、マネージャーや広告代理店の方には見えないはずです。