公開日
OTV制作部

OTV制作部

アパレル業界で起こっている3つの変化

後間
今回は、昨今アパレル業界で起こっている変化について、野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんにうかがいます。

後間
早速ですが、いったいアパレル業界にどのような変化が起こっているのでしょうか。

宮里
はい。アパレル業界では、洋服の製造や廃棄に至る過程で地球環境に大きな負荷をかけていることが課題視されていて、その解決に向けて大きな変化が起こっています。
「国連貿易開発会議」では、最も環境への負荷が大きいのは石油産業で、それに続くのがアパレル産業だとしています。

後間
そうなんですね。どのような負荷がかかっているのでしょうか。

宮里
アパレル産業による主な環境負荷として、まず土壌や水質への影響が挙げられます。
例えばコットンの原料となる綿花を栽培する農地は、世界全体の農地の2.5%から3%程度の面積でありながら、世界で使われる殺虫剤の16%が使用されています。
また海ではマイクロプラスチックの問題が課題となっていますが、近年は化学繊維でできた衣料を洗浄する際に、表面の摩耗などによって発生したマイクロプラスチックが年間およそ50万トン海へ流出しているといわれています。

次に大気への影響です。
アパレル産業が排出する温室効果ガスの量は、2015年に二酸化炭素換算で合計およそ12万トンに達していて、国際線の航空便と海上運送からの排出量の合計を上回っています。

続いて水資源への影響です。
例えばTシャツ1枚の生産には、合計2720リットルもの水が使われているといわれています。

最後に廃棄の問題です。
世界中で年間に廃棄されている繊維の量は9200万トンにおよび、2030年にはさらに6割増加して、およそ1億4800万トンになると予測されています。
これは2000年代に入って、衣料品を低価格で大量に販売し、品揃えを目まぐるしく変える「ファストファッション」がトレンドとなったことが要因で、環境や社会、経済に多くの悪影響をもたらしているとみられています。

こうした背景から、EUの欧州委員会は、2022年3月に「持続可能な循環型繊維戦略」をまとめ、「大量生産・大量消費が前提のファストファッションは時代遅れ」と訴えました。

後間
SDGsへの関心も高まるなか、世界のアパレル産業が大量生産・大量廃棄からの脱却に向けて動きだしているということですね。

宮里
はい。日本国内でもアパレル産業の新しい未来を目指す3つの変化が生まれつつあります。

宮里
まず1つ目は、補修サービスの拡充です。
カジュアル衣料品を製造販売する大手アパレルでは、昨年10月、東京都世田谷区の店舗で自社商品の補修専用スペースを設置しました。できるかぎり当日中に、穴やほつれなどの補修に対応しています。
ほかにもアウトドア関連メーカーでも補修サービス充実化の動きが加速しています。

続いて2つ目の変化は受注生産の拡大です。
昨年あるタレントが立ち上げたブランドでは完全受注生産を掲げていて、動画配信サイトでのPR動画をもとに販売を行うスタイルをとっています。アパレル業界の現状理解を深めるスタイルが共感を呼び、初回販売分、追加分ともに即完売したということです。

最後に3つ目の変化は「衣料品の交換」です。
この「衣料品の交換」は、あるアパレル会社が始めた取り組みで、参加者は自分が着なくなった衣料品を交換会場へ持ち込み、持ち込んだ数と同じ分だけ他の衣服を選んで持ち帰ることができる仕組みとなっています。

宮里
このような交換イベントを続けることで、社会の持続可能性や、社会・環境に配慮する「エシカル消費」への関心が高い消費者層を引きつけやすくなり、アパレル業界の課題を消費者と一緒に解決していくことにもつながっていくと思います。

後間
今回は、アパレル業界で起こっている3つの変化について、宮里さんにうかがいました。ありがとうございました。

あわせて読みたい記事

HY 366日が月9ドラマに…

あなたへおすすめ!