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長嶺 真輝

長嶺 真輝

エース今村佳太、死闘で見せた”断固たる決意” 琉球ゴールデンキングスが悲願の初優勝に王手

琉球ゴールデンキングス_エース今村佳太
ゴールに向かってドライブを仕掛けるキングスの今村佳太(左)=27日、神奈川県の横浜アリーナ©️琉球ゴールデンキングス

プロバスケットボールBリーグのチャンピオンシップ(CS)ファイナル第1戦が27日、神奈川県の横浜アリーナで行われた。西地区1位の琉球ゴールデンキングスが2度にわたって延長に突入した接戦を制し、96ー93で東地区1位の千葉ジェッツ(以下、千葉J)を破って先勝。悲願の初優勝に王手をかけた。

ファイナル史上初の延長までもつれる”死闘“となった50分間で、最後の最後に強い存在感を発揮したのがエースの今村佳太だ。この日のシュート成功率は20%台と低迷し、第4クオーター(以下、Q)が終わった時点で得点はわずか7点。しかし、勝負の懸かった再延長の5分間にチームが挙げた14点のうち6点を奪取し、大事な初戦の勝利に大きく貢献した。

「選手からボールを託されることには責任がありますし、覚悟がある中でプレーしています」。2連敗で終えた昨年のファイナルで大きな悔しさを味わった今村が、優勝への”断固たる決意”を胸に大舞台に戻ってきた。

試合前のロッカーでチームを鼓舞

試合前のロッカールーム。

「一つ良いですか」

ミーティングで桶谷大HCがホワイトボードを使って戦術の話をし終わり、選手、スタッフが中央に集まって拳を重ねようとするのを制止し、今村が立ち上がって口を開いた。

「レギュラーシーズンからチャンピオンシップまでずっと『我慢』という言葉を使ってきて、我慢はできるチームになったと思ってる。ただファイナルという舞台は、千葉という相手もそうだけど、我慢してて自分たちのところに勝ちがくる舞台でもないし、相手じゃないと思う。40分間、自分たちの時間にできるように、奪い取る気持ちでやっていきましょう」

大一番を前にしたエースの言葉が、チームを強く鼓舞したことは間違いない。試合後、桶谷HCが記者会見でその場面を振り返り、こう言った。

「こういうゲームはもちろん戦術もあるけど、メンタルの部分はすごく大きい。チームとして(調子が)落ちるシーンが何回もあった中でも、それを乗り越えて、乗り越えて、前を向いてプレーできた。(今村の言った)メンタリティーが今日の試合に出たと思ってる」

桶谷HC「佳太がこれを乗り越えた時、日本一になれる」

琉球ゴールデンキングス_エース今村佳太
相手エースの富樫勇樹をマークする今村©️琉球ゴールデンキングス

桶谷HCが言ったように、試合は流れが行ったり来たりする大接戦となった。第1Qこそ小野寺祥太のスティールからの速攻や、松脇圭志のスリーポイント(以下、3P)など連続17得点で二桁リードを奪う時間帯があったが、日本代表ガードの富樫勇樹を中心に千葉Jに徐々に追い上げられ、第3Qに逆転を許す。

その後はシーソーゲームとなり、第4Q最終盤で3点をリードした。しかし残り10秒で千葉Jのヴィック・ローに3Pを沈められて同点に追い付かれ、延長へ。一度目の延長も突き放すチャンスはあったものの、この試合を通してチームで課題となっていたフリースローの成功率がここでも上がらず、勝ち切れず。それでも再延長で今村やアレン・ダーラムがけん引し、勝利をつかみ取った。

今村は試合を通してリーグ屈指のディフェンダーである千葉Jの原修太の厳しいプレッシャーに苦しみ、第2Qと第3Qは無得点に抑え込まれた。特に武器である3Pの精度が上がらなかったが、第4Qでは果敢なドライブから味方にアシストして3Pを演出したり、ファウルをもらいながらレイアップを決めたりとプレーの幅を広げてチームに貢献。前述の通り、再延長でさらに輝きを増した。

「3Pは自分の武器だけど、気持ち良く打てなかったし、タイミングもつかめなかったです。去年の僕であればそのまま終わってしまう部分はあったけど、今シーズンはその中での状況判断を1年間しっかり磨いてきたつもりです。ああいうシチュエーションでペイントアタック(ゴール下のエリアに攻め込むこと)していくことが相手にとってプレッシャーになると分かっていたので、積み重ねが出たと思います」

シュートタッチに苦しんでいたエースに対し、桶谷HCも信頼して勝負所でボールを託し続けた。指揮官の言葉には、今村への厚い信頼がうかがえる。

「佳太のところでボールが触れないシチュエーションが前半と後半の最初にずっと起こっていたので、後半の次に出る時に「佳太、ピック(スクリーンを使ったプレー)でいくぞ」という話をして、そこからいつもチームでしてるプレーができました。佳太はやっぱりこのチームのエースなので、エースがちゃんと最後に仕事をする。これを佳太が乗り越えた時に初めて日本一になれると思うので、乗り越えてほしいと思います」

それを受け、今村も答えた。

「試合を通して乗り切れなかったけど、最後は自分にボールを集めてくれました。ボールを託されたことに責任がありますし、覚悟もある中でプレーしています。そこは去年とは違う部分だと思うし、その気持ちが最後のプレーにも出たと思います。(プレッシャーを)乗り越え、最後に日本一になれるように準備していきたいです」

1年前に見た悔しい“光景”「もう見たくない」

今シーズン、エースとしてキングスを引っ張ってきた今村には、ある「光景」が脳裏に焼き付いている。昨シーズンのファイナルで優勝を決め、歓喜の中で優勝トロフィーを掲げる宇都宮ブレックスの選手たちの姿だ。今村はその光景を、コートサイドで目を赤くしながら、じっと見詰めていた。「去年のファイナルで見たあの光景はもう絶対に見たくない」。悔しい思いを糧に、プレー、メンタルの両面で大きく成長した。

第1戦後の記者会見では、ファンに対する思いも口にした。

「僕たちは沖縄のチームです。飛行機をとって、自分たちのために横浜アリーナを白で埋め尽くすくらいの応援をしてくれて、本当に大きな支えになっています。きつい時も何回もありましたけど、ブースターさんの声を聞くだけでもう一回上を向いて戦えました。それに感謝して、プレーで恩返しがしたい。ブースターさんと一緒に、チーム一丸になってやっていきたいです」

勝てば球団初のBリーグチャンピオンが決まる第2戦は、横浜アリーナで28日午後1時10分にティップオフを迎える。確固たる自信と覚悟を胸に宿したエースが、キングスをさらなる高みへと押し上げる。

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