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くらしと経済編集部

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地球環境の新たなキーワード「ネイチャーポジティブ」

後間
今回は、地球環境の新たなキーワード「ネイチャーポジティブ」について、野村證券那覇支店長の宮里洋介さんにうかがいます。

宮里
よろしくお願いします。

地球環境の新たなキーワード「ネイチャーポジティブ」

後間
ネイチャーポジティブという言葉になじみがないですが、どのような意味の言葉なのでしょうか?

宮里
近年、暮らしや産業、地球環境などの未来に関して、持続可能な開発目標を意味する「SDGs」や、環境・社会・企業統治を意味する「ESG」など、さまざまなキーワードが登場しています。
こうした中で、今後注目されそうなキーワードのひとつが「ネイチャーポジティブ」です。

ネイチャーポジティブは、自然や生物多様性の損失を食い止め、むしろ環境にとって「ポジティブ=プラス」の状態にしていくことを意味します。

生物多様性に関する報告書によりますと、動植物のうち、およそ25%の種に絶滅の恐れがあり、対策を講じなければ数十年の間に絶滅に直面します。
また、1970年から2018年までの間に野生生物の個体群が平均69%、淡水に棲む個体群が平均83%減少したという報告もあります。森林や海洋などの自然は経済活動や暮らしの基盤であり、世界の総GDPのおよそ半分が自然に依存していると言われます。
生物多様性の損失を食い止めることは、まさに世界にとって喫緊の課題なのです。

後間
ネイチャーポジティブの実現に向けて、具体的にはどのような動きがあるのでしょうか。

宮里
生物多様性に関する国際会議「COP15(コップフィフティーン)」では、2030年までに、世界全体の陸と海の30%以上を健全な生態系として保全することを目指す「30 by 30」(サーティー・バイ・サーティー)が目標に設定されました。

日本も2023年3月に閣議決定した生物多様性についての国家戦略のなかで、「30 by 30」に関する目標を設定しています。

後間
生物を絶滅から救う有力な手段のひとつが「陸と海を保全すること」というわけですね。

宮里
日本の場合、国立公園など保護地域を増やすといった方法で保全してきました。
この保護地域を30%まで拡大するためには、企業が独自に自然保護を行っている所有地などについても、生物の多様性に貢献していると国が認定し、重要な場所の見える化を行い、官民共生で取り組みことが必要です。
国の認定を受けることは、環境活動に積極的な企業としてアピールできるメリットもある、というわけです。

後間
企業や地域の力を結集して、ネイチャーポジティブを実現しようということですね。

宮里
環境省では、ネイチャーポジティブの実現を目指す事業などが盛んになることで、2030年には国内で波及効果を含め最大でおよそ125兆円の経済効果があると推計しています。
官民をあげての取り組みは、まだ始まったばかりですが、生物多様性の回復はもちろん、日本経済の活性化にもつながっていくことに期待したいところです。

後間
生物多様性の回復への歩みが、今後、大幅に進んでいくとよいですね。
今回は地球環境の新たなキーワード「ネイチャーポジティブ」について宮里さんにうかがいいました。

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