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長嶺 真輝

長嶺 真輝

スピーディなハンドボールに“高さ”を加えた琉球コラソン、15日にホーム開幕戦。新外国籍3人との融合が躍進のポイント

琉球コラソン ホーム開幕戦
新外国籍選手の(左から)イェスペル・ブルーノ・ブラマニス、ウー・ユクシー、パン・エンジャー

日本ハンドボールリーグ(JHL)の2023-24シーズンが開幕した。

昨季、8勝13敗1分の7位と前のシーズンから勝ち星を2倍に伸ばした琉球コラソンは今季、勝敗数を逆にして13勝以上を目標に掲げ、9シーズンぶりのプレーオフ進出(13チーム中4位以上)を目指す。

さらなる躍進に向け、チームはエストニア出身で身長192cmのイェスペル・ブルーノ・ブラマニス、同じく192cmで台湾出身のパン・エンジャー、182cmで台湾出身のウー・ユクシーという3人の外国籍選手を獲得。昨季は190cm台のコートプレーヤーは一人もいなかったが、今季は武器とする豊富な運動量を生かしたスピーディなハンドボールに“高さ”を加えた。

8日にアウェーであった開幕戦は早速ブラマニスが出場したものの、まだ連係が未完成で、チームもトヨタ紡織九州レッドトルネード佐賀に23ー34で完敗。ただ、15日に那覇市の県立武道館で行われる大同特殊鋼フェニックスとのホーム開幕戦にはエンジャーとユクシーもベンチ入りする予定のため、今シーズンのコラソンを占う上で注目の一戦となる。

テーマは「エボリューション」 攻守に“幅”期待

琉球コラソン ホーム開幕戦
就任2年目となる東江正作監督

今季のチームテーマは、進化を意味する「エボリューション」。全体のサイズアップにより戦い方の幅を広げ、チーム力の底上げを図る狙いだ。6月下旬に開かれた新シーズン前の記者会見では、就任2年目の東江正作監督が意気込みを語った。

「プレーや成績など、いろんな部分で昨シーズンを上回るという意味を込め、エボリューションを掲げました。アグレッシブなオフェンスとディフェンスで見る者の心を熱くするプレーができれば、必然的に白星は積み上がっていくと思います」

コートプレーヤーに高さが加わることについては、攻撃で「遠目から打つディスタンスシュートも打てるようになるので、今いる選手の機動力やスピードに新しい要素がマッチしてくると、相手にとっては焦点が絞りきれなくなる。攻撃に様々なバリエーションが生まれます」と期待。守備の面でも「2枚目(両サイドから2人目の選手)のアグレッシブなディフェンスで相手を中央に集め、高さで抑え込むこともできるので、ポストプレーをある程度守れるようになる」と見通した。

攻撃の司令塔を務める東江太輝主将も「外国人選手が活躍できる前提で考えると」と前置きした上で、こう展望した。

「僕はガンガン点を取りに行くというよりも、バランサーとしてまわりの選手に点を取らせて、その隙間で自分も点を取ることがやりたいプレーです。もしかしたら、今シーズンはそれができるのかなという期待はあります」

昨シーズンはボールや人の流動性が停滞した時、相手ディフェンスを崩せていない中で自ら打たざるを得ない場面も散見されたため、より全員で攻める効率的なオフェンスを描いている。

開幕戦は23ー34で大敗 コミュニケーション不足は否めず

琉球コラソン ホーム開幕戦
ホーム開幕戦を前に練習に励むコラソンのメンバー

しかし、昨季まで小柄でも素早い連係とハードワークを武器に戦ってきたチームに、新しい選手がすぐに馴染むことは容易ではない。

迎えた開幕戦。合流したばかりのブラマニスが早速スタートからコートに立ったが、高い位置でボールを持って個で崩そうと前のめりになり、なかなかパス回しがスムーズにいかない。各選手の動きも重い中でミスが目立ち、さらに開始約3分でブラマニスがラフプレーで2分退場に。一気に流れを持っていかれ、0ー7と苦しい立ち上がりとなった。

その後、昨シーズンから所属する日本人選手のみとなった時間帯に連係が改善し、ボールの流動性が生まれて一時2点差まで詰め寄って前半を11ー15で折り返した。後半は東江太輝や石川出らベテラン勢の得点などで我慢を続けたが、最後まで攻守ともにプレーの強度が上がらず、ミスも散見されて終盤に突き放された。

“ナイスガイ”のブラマニス「連係は良くなっていく」

琉球コラソン ホーム開幕戦
ポストのディフェンスで体を張るブラマニス

躍進を掲げる中、厳しい出だしとなったコラソン。新加入選手との連係が不足し、ちぐはぐさに引っ張られるように全体の戦う姿勢が減退していた感は否めない。11日、ホーム開幕戦を前に練習に汗を流すチームを訪ね、ブラマニスに初戦の感想を聞いてみた。

「ヨーロッパと日本のハンドボールはプレースタイルが大きく異なるので、一緒にトレーニングして数日でコミュニケーションが機能することはなく、驚くことはありません。相手が積極的なディフェンスをしてる中で、少しパニックが起きました」
 
試合を冷静に分析する表情に、結果を悲観している様子はない。確かに、激しく体を当ててゴールを狙う欧州のハンドボールに対し、コラソンは人とボールが素早く動きながら相手ディフェンスの間や裏からゴールを狙うため、いきなり順応するのが難しいことは明らかである。だからこそ、マインドは前向きだ。

「あなたはこれはをやる、私はこれをやる、というように、もっとコミュニケーションをシンプルにしないといけないと感じてます。次の試合はチームメートともっと会話ができるようにしたい。連係は毎週良くなっていくと思います」

記者に対して「こんにちわ」と片言の日本語で挨拶し、笑顔を絶やすことなく応じた“ナイスガイ”のブラマニス。質問に対する回答の内容も明確であり、メンバーからは「彼は頭が良くて、チームメートにいい影響を与えると思う」との評価も聞かれる。自身は順応までに「おそらく2、3カ月くらい」と見通していたが、それよりも早く主力に定着する可能性は十分にありそうだ。

“コラソンらしい”ハンドで初勝利を

琉球コラソン ホーム開幕戦
チームをけん引するベテランの石川 出

15日のホーム開幕戦では、エンジャーとユクシーも初めて出場する見通しだ。エンジャーは長い距離のディスタンスシュートが強烈で、同じ192cmのブラマニスと共に遠い位置からゴールを狙うことができれば、そこに相手ディフェンスが引き付けられて他の選手がフリーにする効果に期待したい。

サイドプレーヤーで、コラソンでは貴重な左利きのユクシーは高い身体能力を生かしたジャンプ力が魅力。今季、成長を見せている同じく左利きの髙橋友朗と競い合い、存在感を発揮したい。

ただ、個の能力に頼り過ぎてハードワークを失い、運動量が豊富でスピード感のあるコラソンらしいハンドボールが影を潜めてしまうことだけは避けたい。それは、相乗効果でチーム力を底上げすることが困難になることに加え、東江監督が目指す「見る者の心を熱くするハンドボール」からも遠ざかってしまうからだ。

開幕戦でチームトップタイの4得点を挙げた石川は、危機感も含めて今後をこう展望する。

「彼らの身長は今までのコラソンにはない武器なので、もちろん期待感はあります。しっかりチームにフィットすれば、昨シーズンとは違うチームになるのかなと思います。ただ、外国人選手が増え、コミュニケーションは本当に密に取らないと厳しい。その辺りは不安な部分もあるので、僕らのように今までいたメンバーが、彼らがやりやすいような環境をつくらないといけないと思います」

外国籍選手が持つ高さやパワーをうまくチームに融合させ、新生コラソンとしてさらなる高みへと歩みを進められるか。まずは15日のホーム開幕戦。まだチームとしての完成度は高くなくとも、ファンにその可能性を示し、なんとしても今季初勝利を掴み取りたい。

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