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「負けは楽しくない」キングス・渡邉飛勇 日本代表ビッグマンを支える“負けん気の強さ”と“強い自覚” | バスケW杯(FIBAバスケットボールワールドカップ2023)
8月25日に沖縄アリーナなどで開幕するFIBA男子バスケットボールワールドカップ(以下、W杯)が、いよいよ目前に迫ってきた。
国際強化試合を重ね、大一番に向けて着々とチームづくりを進めている日本代表(FIBAランキング36位)にあって、琉球ゴールデンキングスに所属する身長207cmの渡邉飛勇がビッグマンの一人として強烈な存在感を放っている。
今月2、4の両日、群馬県のオープンハウスアリーナ太田で行われたニュージーランド代表(同26位)との強化試合では、身長200cm以上で代表の二大エースである渡邊雄太とジョシュ・ホーキンソンを欠く中で躍動。優れた走力と高い跳躍力を生かし、特に第1戦では20分44秒の出場で10得点、7リバウンドを記録し、ホーバスジャパンにとって欠かせない存在である事を印象付けた。
河村勇輝との“合わせ”でインパクト
第1戦で大きなインパクトを与えたのはオフェンスだ。先発で出場すると、第1クオーター(以下、Q)からフィジカルの強さがあるニュージーランドを相手にオフェンスリバウンドを奪取したり、エースガードの一人であるPG富樫勇樹主将のドライブを巧みなスクリーンで誘導したりと、ビッグマンとしての役割を愚直にこなした。
第2Qでは、この試合で約2カ月ぶりに実戦復帰した、昨シーズンのBリーグMVPであるPG河村勇輝にスクリーンをかけ、河村がゴールにドライブしたのと同時に自身もゴールへダイブし、合わせのパスを受けてイージーなゴール下シュートを決めた。第4Qには、中央をドリブルで割った河村からエンドライン側からゴール下へ飛び込んでパスをもらい、豪快なワンハンドダンクで会場を沸かせた。
この試合は日本が第2Qにディフェンスの強度を高めて追い付き、後半に抜け出して79ー72で先勝した。
第2戦では強烈ブロックも悔しさ滲ませる
第2戦はニュージーランドがディフェンスやリバウンドでプレーの激しさを一気に向上させ、日本がリバウンドの本数で21対45と大差を付けられて75ー94で敗戦。2試合続けて先発出場した渡邉も16分57秒の出場で2得点2リバウンドと封じ込まれた。一方で、高さのある強烈なブロックを披露するなど持ち味を見せる場面も見られた。
ただ、試合後には「負けは楽しくない」ときっぱり。今年2月にプロデビューしたばかりで、インサイド陣の層が厚いキングスでは昨季レギュラーシーズンは約6分の平均出場時間にとどまった。代表では多くのプレータイムを得られていて「本当に楽しい」と言うが、「本当に勝ちたい。負けは本当に嫌だ」と繰り返し、負けん気の強さをうかがわせた。
ニュージーランドとの2試合については、こう総括した。
「第1戦はベストゲームだと思うけど、第2戦は攻守のスムーズさが全然足りなかった。相手の(得点力の高い)2番の選手に対するディフェンスもダメだった。フィジカルは全然悪くないけど、チームでのプレーができなかった」
二大エースの合流で絞られる役割
敗戦直後ということもあって反省を多く口にしたが、2戦を通してリバウンドやスクリーン、ブロックなどでチームや観客にインパクトを与えたことは間違いない。それらの役割は自身も強く自覚しており、今後渡邊雄太とホーキンソンが合流すれば、より自分の仕事に対する集中度を増す必要性を感じている。
「ホーキンソンと雄太は素晴らしい選手だから、グラビティ(引力=バスケではその選手に相手ディフェンスが引き付けられることを意味する)がある。だから、僕の役割はもっとシンプルになる。スクリーンとリバウンド。もっと集中してやらなくちゃいけない。僕の役割をしっかりとやらなかったら、日本のオフェンスが崩れてしまう」
7月8、9の両日にあったチャイニーズ・タイペイ戦では試合直前にコンディションを崩して欠場し、同22、23の両日に行われた韓国戦も「まだコンディションが悪くて、(エナジーが)足りなかった」と振り返る。しかしニュージーランド戦では徐々に感触も戻り、「次の試合は100%に戻ります」と心強い。
今後、日本は8月15日にアンゴラ(FIBAランキング41位)、17日にフランス(同5位)、19日にスロベニア(同7位)と東京の有明アリーナで国際強化試合を行い、25日にあるドイツ(同11位)とのW杯1次ラウンド初戦に挑む。その過程で、日本代表は現在候補に残っている15人の選手から最終的に12人にまで絞られる。
熾烈な代表選考争いを乗り越え、渡邉が自らの“ホームコート”である沖縄アリーナにアカツキジャパンのジャージを着て降り立つ瞬間を、多くの沖縄のファンが待ち望んでいる。
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