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琉球ゴールデンキングス

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“最強”から勝利をもぎ取った「5.5秒」の価値 #30 今村佳太<上>

2022-23シーズン、僕たちは初めてBリーグの頂点に立つことができた。シーズン序盤はチームの連係がうまくいかない時期があり、西地区も大混戦で最後まで厳しい戦いだった。それでもチャンピオンシップ(CS)を無敗で勝ち上がり、ファンと共に「団結の力」でチャンピオントロフィーをつかめたことは、本当にうれしい。

 個人としては責任と覚悟を持ってプレーし続け、シーズンが進むごとに大事な場面でボールを任せてもらうタイミングが増えた。中でも、忘れられない試合がある。
4月2日にアウェーであった千葉ジェッツ戦だ。

 1点差で負けていた第4Q残り5.5秒の場面で、僕が逆転のミドルシュートを決め、昨シーズンの中で初めて千葉Jから勝つことができた。その後のファイナルで戦うことになる相手だったから、本当に大きな白星だった。僕が思う、あの「5.5秒」の価値を記す。

ここで負けたらリーグ優勝は無理だろうな、と思っていた

レギュラーシーズンが終盤に差し掛かった47試合目だった。3月の天皇杯決勝では個の力を見せ付けられて完敗。4月の連戦も初日は勝ちゲームだったけど、ディフェンスがあまり良くなくて、最後の最後で逃げられて落としてしまった。

 千葉JはCSで当たる可能性があるチーム。

「ここで2連敗したら目標のリーグ優勝は絶対に無理だろうな」

 そのくらいに思っていた。少しでも千葉Jに対する苦手意識をなくしておきたいという思いもあったから、第2戦は意地でも取らないといけない。厳しい気持ちで試合に臨んだ。

 試合は第1Qからリードしていたけど、徐々に追い上げられて第4Qは1点を争う接戦になった。残り50秒を切った時、75ー76で負けていた場面で僕が24秒ギリギリで片足で飛びながら3Pを打ち、入った。感触的には間に合っていたから、「よっしゃ」、と。でもビデオ確認でスコアは認められなかった。タイミングが際どかったから、「まあ、仕方ない」というくらいの受け止め。まだ試合は終わってない。引きずることはなかった。

 残り13秒でヴィック・ローがドライブを仕掛けてきて、フリースローを獲得された。「ちょっとしんどい展開だな」と思ったけど、2本とも落とした。会場の緊迫感はすごかった。あれは大きかった。

 リバウンドをつかんだAD(アレン・ダーラム)が自分で運んで、そのままリングにアタックした。でも原さん(原修太)にブロックされて、ボールがエンドラインに出た。得点は75ー76のままで、残り5.5秒、キングスボール。あの場面だ。

正直、桶さんに言われる前から、自分に打たせてほしいと思っていた

ここでウチがタイムアウトを取って、桶さん(桶谷大HC)がボードに僕がシュートを打つ用のフォーメーションを書いて「佳太でいこうか」と言った。正直、この時は言われる前から自分に打たせてほしいと思っていた。その前の3Pもカウントされなかったから。

 まず、僕が左のローポストからハイポストにいるAD(ダーラム)にスクリーンをかけた。それで相手がスイッチしたらADが空くけど、それはデコイ(おとり)。案の定、ローがADにバンプ(体を当てて進路を塞ぐこと)してきた。

 次に僕がジャック(ジャック・クーリー)のスクリーンを使って右サイドへ行き、その動きにジョン・ムーニーが反応したら、ジャックが空く。そうなると、僕に付いていた小川君(小川麻斗)とジャックがミスマッチになるけど、相手もそれはしない。ただ小川君がジャックのスクリーンに完全に掛かっていたから、僕がペイントエリア外の右90度でフリーになった。

 それでエンドラインから隆一さん(岸本隆一)のパスを受けて、キャッチ&シュートで打った。左側から文男さん(西村文男)がヘルプに来るのが見えてたけど、僕は右利きで、ブロックするためには左側を越えないといけないから、打ち切れると思った。シュートが入らなかったとしてもフリースローをもらえるかもしれないと思った。

 結果的にフォーメーションがきれいにはまってシュートが決まり、フリースローももらえた。気持ち良かった。あのシチュエーションは相手もメンタル的にくるし、いいシュートだったと思う。我ながら。

隆一さんのストレートパスが足を合わせやすかった

アーチを高くしたのは、ムーニーがブロックに来た場合を想定していたからだ。あの距離のシュートはチームの戦術的にあまり試合では打たないし、中途半端な距離で難しいけど、練習はしているから自信はあった。

 あと、隆一さんのパスがとても良かった。あの場面はバウンドパスだと難しいけど、ストレートで出してくれると打ちやすい。ワンバウンドだとボールが減速してそれに足を合わせないといけないけど、あれなら流れの中で打てる。好みもあるとは思うけど、僕は打ちやすかった。

 先述したが、あの時はやっぱり自分が打ちたかった。キングスはああいう場面で隆一さん、AD、それで最後のオプションが僕という感じだったけど、シーズンを通してショットクロックがギリギリの時に自分が持っていれば打ち切るということは続けていたから、シーズン後半にかけて自分を選択してくれることも増えた。

 あの時期は「こういうシチュエーションいいな」「楽しいな」というメンタル。「やった。打てる」。桶さんの指示を聞いた時もそう思った。もともと、ああいう場面が好きなタイプでもある。学生時代はチーム自体はそこまで強くはなかったし、僕が打つ場面が多かった。ああいうシュートは担いたいし、チームではその責任が自分にはあると考えている。

気持ちの部分も含め、あの「5.5秒」は一番いい形になったと思う。

“最強”から勝利をもぎ取った「5.5秒」の価値 #30 今村佳太<下>に続く

#30 今村圭太

1996年1月25日生まれ。新潟県出身。
2020-21シーズンにキングスに加入し、チームのエースとして活躍。
一度乗り出すと止まらない3ポイントシュートや、豊富なスタミナと体の強さを活かしたディフェンスが武器。
座右の銘は「向上心なくして成長なし」。

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