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琉球ゴールデンキングス

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“サイクル”の楽しさと、芽生えた「危機感」と… #14 岸本隆一<上>

この話をいただいた時、初めに「何について書きますか?」と相談を受けた。最近はキャリアを重ねてきたことや家族ができたことも影響してか、SNSも含めて自分から何かを発信する機会が減ってきていたから、少し考え込んでしまった。

 僕は沖縄県出身のプレーヤーだから「沖縄のバスケットボールと私」とか、「自分にとっての3ポイントシュートとは」とかいろいろな提案を受けたけど、まず優先的に考えたのはオフシーズンの今しか書けないこと。それで真っ先に頭に浮かんだことが「連覇」だった。

 もしかしたら優勝は今後のキャリアでもチャンスがあるかもしれない。でも、連覇のチャンスはそう何度もはないはずだ。このテーマが浮かんだのは、僕自身がキングスでbjリーグ時代にも2度優勝を経験したが、連覇は一度も達成できていないことも影響しているかもしれない。1回大きな山を越えて、次は何がしたいのか。自分の次の野望は何なのか。この機会に整理をしてみる。

 シーズンが始まるとどうしてもポジティブな発言が増えるけど、この時期は個人としても、チームとしても何も始まってないので、言葉選びも含めて無敵な状態。気ままに書いてみたい。

昨シーズンの途中までは「優勝しなきゃ」という張り詰めた思いがずっとあった

まずは昨シーズンの振り返りから。

 途中までは「優勝しなきゃ」という思いがあり、ずっと張り詰めていた。その前のシーズンで当時のB1歴代最高勝率を残して、あれだけ勝ったけど最終的には優勝できなかった。本当に何があるか分からない。レギュラーシーズンの成績はほとんど関係ない。それがチャンピオンシップ(CS)という場所だ。

 「優勝できるかも」と思っても、翌日には「これで大丈夫かな」と心境が変わったりする。目標に対して常に半信半疑な状態。それをずっと繰り返していた。仮に優勝できなかったら、またあの悔しい思いをして、ゼロから積み上げていかないといけない。

 課題や修正、そういうところからまたもう一度始まる。あの時期を振り返ると、いろいろなことを考えて、そこにエネルギーを使っていたように思う。

妻と話しているうちにやることが明確になり、終盤の大阪戦の頃には気持ちが安定していた

4月中旬にあった島根スサノオマジックとのアウェー戦で「ちょっと風向きが変わったな」と感じた。あの試合は一つのポイントだった。西地区優勝争いをしている強敵に対して自分たちがやりたいバスケをして勝ち、チームの完成度が上がってきた中で「これで優勝まで行けなかったら、もう仕方ないよね」くらいの感覚にはなっていた。

 シーズン終盤にホームであった大阪エヴェッサとの連戦の頃には、もう完全に気持ちが安定していた。目の前の試合に勝っても負けても、すぐに別の試合がきて、準備をしていく。西地区で1位を取れなくても、またすぐに別の試合がきて、準備をしていく。

 結局、自分がやるべきこと、マインドは変わらない。結果が付いてこなくても、キャリアが終わるわけでも、人生が終わるわけでもない。もう100%バスケに集中できている状態だった。

 変化のきっかけの一つに妻の存在がある。

僕はキャリアを重ねてきて、自分の発言が後輩たちにも少なからず影響を与える立場になっている。だから気持ちを整理する時とか、人生観や価値観については妻と話すことが多い。相談というよりは、雑談。「これで大丈夫かな?」という感じ。メンタルが安定してなかったレギュラーシーズンの終盤も、いつもみたいに話をしていた。

 意図しない内にまわりの雰囲気とか意見に影響されていないか。自分のパフォーマンスを上げていって、勝つ。それだけでいいのではないか。妻と話すうちにそう思えてきた。

 毎年、ゼロから始まるわけで、結局やることはそんなに変わらない。僕の中で家族との時間は本当に大事。自分に対する評価を勘違いしてしまいやすい職業だし、「家族がいなかったら自分はどうなっていたんだろう」と本気で思うことがよくある。妻と話しているうちにやることが明確になり、それに伴って気持ちも落ち着いていく。本当にありがたい。

 CSに入ってからは緊張感がある時もリラックスしている時もあり、普段通りの振る舞いができて、ずっと自然体でいられた。もちろん油断はなくて、大一番では「一つのミスが命取りになる」という気持ちでプレーできていた。思い詰めてる訳じゃないけど、力を抜き過ぎてる訳でもない。不思議な感覚だった。

 ファイナルもよく「1戦目が大事」と言われるけど、1戦目を取ったとしても2戦目も楽じゃない。当然、1戦目を落としたら2戦目は負けられない。そう考えると、結果に自分の気持ちが左右されるべきじゃないし、やることも変わらない。レギュラーシーズンの終盤で気持ちが安定してから、ずっと同じメンタルでプレーができていた。

いろんな人の気持ちを背負ってるつもり。優勝した瞬間、多くの選手の犠牲や苦労が報われた

優勝した瞬間は本当にうれしかった。満足感も達成感もあった。

 これまでいろんな選手とキングスで一緒にプレーしてきた中で、チームを出て行くことになった選手もたくさんいる。それが何かのきっかけで状況が変わり、自分が出ていっていたかもしれない。そうしたら、キングスはもっと早くBリーグで優勝していたかもしれない。そういう考えをすることが多い。自分たちは、どうあがいても選ばれる側だから。

 僕は移籍をしたことがないから想像でしかないけど、自分が出ていったチームの成績が伴わなかったりすると、選手心理として納得いかない部分もあると思う。そういう思いを抱いても不思議じゃない。僕は少なからず、いろんな人の気持ちも背負ってキングスでプレーしているつもりだ。優勝をした瞬間は、多くの選手の犠牲や苦労が多少なりとも報われたと感じた。

 優勝後はいろんなイベントに呼ばれたり近い友人から食事に誘われたりして、改めて成し遂げたことの大きさを実感させられた。それこそ「これで人生全てうまくいくんじゃないか」くらいの気持ちになっていた

 ただ、その状態も優勝してから1〜2週間くらい。3〜4週間が経った頃には、全く違う心境になっていた。

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#14 岸本隆一

1990年5月17日生まれ。沖縄県出身。キングス一筋12シーズン目。代名詞ともいえる3ポイントシュートと鋭いドライブを武器にキングスを牽引し続ける。背番号「#14」の由来は兄が「#13」をつけていたのでその次の「#14」にした。

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