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長嶺 真輝

長嶺 真輝

バスケW杯の期間中、沖縄で初開催された“世界基準”のトレーニングとは… キングスU18も参加

「UA NEXT JAPAN」“世界基準”のトレーニングとは… キングスU18
キャンプに招聘された琉球ゴールデンキングスU18の須藤春輝選手

沖縄、そして日本全体を熱狂の渦に巻き込んだFIBAバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)の期間中、次世代アスリートの強化を目的に“世界基準”のトレーニングキャンプが浦添市で開かれた。対象はプロバスケットボールBリーグの各チームが保有するU18チームの有望選手たち。琉球ゴールデンキングスU18からも3人が参加した。

プログラム名は「UA NEXT JAPAN」。スポーツ用品メーカー「UNDER ARMOUR(アンダーアーマー)」(本社・米国)の日本総代理店である株式会社ドーム(本社・東京)が主催した。

様々な競技において、アンダーアーマーはこれまで同様な催しを海外で開いてきたが、国内では今回が第一弾。日程は8月24〜26日の三日間で、バスケW杯で世界から注目を集める沖縄を開催場所に選定した。グローバルブランドの名を冠したトレーニングとは、どのような内容だったのか。リポートする。

「テンション上がる」本格的ロッカールームを特設

「UA NEXT JAPAN」“世界基準”のトレーニングとは… キングスU18
特設されたロッカールームでトレーニングの準備をする参加選手

沖縄アリーナでバスケW杯の1次ラウンドが開幕した8月25日午前、ANA SPORTS PARK 浦添。一歩足を踏み入れると、夏場における沖縄の体育館特有のむわっとした空気に体が包まれるのと同時に、中央に設置された黒い物体が目に飛び込んできた。遠目で見ると、奥のコートの半分が見えなくなるほど大きな直方体だ。

これは何か?早速担当者に聞いてみた。

「このキャンプ用に設置したロッカールームです。トレーニング内容もそうですが、環境も“世界基準”にしたいという思いがあり、NBAのようなロッカーを再現しています」

内側も黒を基調に重厚感のあるつくりで、入った瞬間に思わず筆者も「おぉっ」と唸ってしまった出来栄え。参加した12人に一カ所ずつロッカーがあてがわれ、それぞれ白のローマ字で名前が記されていた。贅沢な環境に、選手たちは「テンション上がりますよね」と笑みをこぼしていた。

「心技体+頭」を鍛える 日本代表コーチの鈴木良和氏が指導

「UA NEXT JAPAN」“世界基準”のトレーニングとは… キングスU18
身振り手振りを交えながら、細かい状況判断の仕方を選手たちに伝える鈴木良和氏(中央)

今回コーチを務めたのは、2016年から21年の東京五輪まで男子日本代表のサポートコーチを務めた鈴木良和氏。現在も女子日本代表のアシスタントコーチを務める“世界を知る”コーチだ。

プログラムの初日は、コート脇に設置したモニターでプロ選手のプレーを一緒に見ながら正しい状況判断を解説したり、スマートフォンを使い、2人1組で互いのシュートを動画撮影してフォームを改善する練習法を紹介したりした。

筆者が訪れたプログラム2日目の25日は、主にハーフコートのチームオフェンスを練習していた。初日と同様に、プレー中や合間に鈴木コーチから多彩な指示が飛んだ。

「オフボール(ボールを持ってない状態)で相手ディフェンスを交わそうとする時、1歩目を踏み出した時の状況で裏を取れるか判断した方がいい。無理ならスクリーンを使う。1歩目で相手ディフェンスの横に並んだら、そのまま裏に行った方がいい」

「キックアウトしたらすぐに広がる。でないと、次にドライブする選手の邪魔になる。その辺りの意識をしっかり持とう」

「自分のアンテナを張って、ディフェンスの動きを掌握する。例えば『自分がこうしたら、相手は手を挙げる』とか。相手を操作しに行く。そうすれば、ルカ・ドンチッチ(NBAのスーパースター)のようになれる」

目まぐるしく変わる状況を瞬間的に認知し、適切なプレーを判断する。その繰り返し。バスケで一流プレーヤーになるための要素を、プレーに対する考え方や細かい動きの解説を通して選手たちに伝えていた。

今回のイベントを運営したドームブランドマーケティング部の喜田剛さんは「心技体に加え、より頭を使う世界基準のバスケを選手たちに感じてほしいという思いで、今回のトレーニングキャンプを開きました。これからも次世代アスリートの成長のきっかけづくりに力を入れていきたいです」と開催の意義や今後に向けた展望を語った。

W杯も観戦 選手たちに強い刺激

「UA NEXT JAPAN」“世界基準”のトレーニングとは… キングスU18
連動したプレーを見せる選手たち

実際に鈴木コーチの指導を受けた選手たちはどう感じたのか。キングスU18の宜保隼弥選手(高校3年)は、こう振り返った。

「鈴木コーチはオフェンスとディフェンスの駆け引きとか、状況判断を一つ一つ細かく丁寧に教えてくれたので、身に付いた部分もあると思います。自分は身長が小さいので、相手ディフェンスのサイズが大きい時にフェイクや駆け引きをしっかりして、今回学んだことを生かしながら戦ってきたいと思います」

2日目のトレーニング後、選手たちは沖縄アリーナへ向かい、W杯の日本対ドイツ、フィンランド対オーストラリアを現地観戦。その他にも、米軍嘉手納基地内のチームと練習試合を行ったり、沖縄の青い海を横目にヨガで体を整えたりもした。
 
千葉ジェッツU18の林空翔選手(高校1年)はW杯の試合から強い刺激を受けたようで、「例えばドイツの選手たちは全員シュート力が高く、インサイドに入ればほとんど決めてくる。そこが日本との違いだと感じました。自分もシュート力を磨いていって、身長の高い相手でも決め切れるようなスキルを身に付けていきたいです」と決意を新たにしていた。

“世界基準”のトレーニングを行い、世界トップのプレーを目の当たりにした選手たち。普段なかなか味わえないような得難い経験を糧に、成長速度がさらに増していくはずだ。今回参加した12人の中から、W杯で活躍した日本代表選手たちのように、将来日の丸を背負って日本バスケを力強くけん引するプレーヤーが出てくる可能性も十分にあり得そうだ。

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