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くらしと経済編集部

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小さな線虫が秘める 大きな可能性

後間
こんにちは。後間秋穂です。
今回は「小さな線虫が秘める大きな可能性」について野村證券那覇支店支店長の宮里洋介さんに伺います。よろしくお願いします。

宮里
よろしくお願いします。

小さな線虫が秘める 大きな可能性

後間
「線虫」という名前は時々耳にすることがありますが、どのような生き物なのでしょうか?

宮里
はい。線虫はヒモのような形状の生物で、人に寄生する回虫や、海産物に寄生する「アニサキス」も線虫の仲間で、その種類は1億以上とも言われます。

線虫には、農作物に寄生して害をもたらすものもありますが、マウスなどと並んで研究などの対象となりやすいモデル生物でもあり、科学の発展に大きく貢献してきた種もあります。

中でも「シーエレガンス」という種類の線虫は、これまで3度、ノーベル賞を受賞した研究においても、重要な役割を果たしてきた線虫です。

シーエレガンスはコチラのように、体長1ミリメートルの透明な生物で、体内が透けて見えるため顕微鏡でも観察しやすく、冷凍して長期保存することもできます。
一つの個体にオス・メス両性を持ち合わせているため、交配をせずに自家受精で、クローンが誕生します。

重要な遺伝子の約7割が人間と共通していますので、人間の代わりのモデル生物として遺伝子の基本的な仕組みを調べるのに役立ちます。

さらに、近年注目されているのが、その嗅覚です。
匂いを感じる遺伝子の数が人間のおよそ3倍、犬のおよそ1.6倍あり、様々な物質を嗅ぎ分ける能力を持ち合わせています。

線虫・シーエレガンスの主な特徴

後間
嗅覚が優れた生物なんですね。
その性質はどんな取り組みに活かされているんですか?

宮里
はい。すでに実用化されているサービスを紹介しましょう。

線虫にはガンの匂いに引き寄せられるという特性があり、人の尿一滴から、ガンを調べるサービスがすでに商品化されています。

2019年9月現在、線虫は胃ガンや大腸ガンなど15種類のガンに反応することが分かっており、ガンの種類は特定できないものの、およそ86%の確率でガンになっているかどうかを判別できます。

また、従来の検査ではガンの早期発見は困難でしたが、線虫の嗅覚を使用した検査では、早期のガンも検知する事ができます。

利用者は尿を採取して運営会社に送るだけで検査ができるため大変手軽ですし、料金も1万円台とお手頃です。

後間
ガンの早期発見が可能になるのは医療業界において大きな進歩と言えそうですね。
医療現場以外でのステージでも進んでいる研究はありますか?

宮里
続いては、大阪の大学で進められている線虫を使ったアンチエイジングの研究例です。
人間の場合、カロリー制限がアンチエイジングのつながることが確認されていますが、線虫にゴマの希少成分である「セサミン」を与えると、人間のカロリー制限と同じメカニズムが線虫の体内で起こることが遺伝子レベルで確認されています。

また、線虫に高血圧治療薬の「メトラゾン」を投与すると、寿命が延びることも確認されています。
こうした研究成果がアンチエイジングの研究のヒントになるかもしれません。

線虫を活用した取り組み

後間
線虫にはまだまだ未知の可能性がありそうですね。
今回は「線虫が秘める大きな可能性」について宮里さんにうかがいました。
ありがとうございました。

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