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美里茉奈(みさまな)

美里茉奈(みさまな)

沖縄食材がアートなフレンチに!わざわざ行きたくなるレストラン「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

沖縄産のオーガニック食材が、一流シェフたちの手によって、見た目も美しく洗練された味わいに。そんな感動レストランが金武町に誕生した。その名も「Alo edesse(アローエデッセ)」だ。
料理長の山中シェフは、フランスの「ミシェル・ブラス」本店と「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」(共にミシュラン三ツ星)、さらにフランス、ノルマンディー地方の「サカナ」(ミシュラン二つ星)で研鑽を積み、友人と共同でで立ち上げたピレネーのレストラン「Sandikala(サンディカーラ) 」は、「持続可能な美食」に与えられるミシュラングリーンスターを受けている。
そんなシェフが沖縄の素材に魅せられて金武町に。肩ひじはらずに最高のフレンチが楽しめる空間を味わいたい。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

「Alo Edesse(アローエデッセ)」があるのは、金武町に2022年に開業したASBO STAY HOTEL(アスボステイホテル)。ギンバル地区の再開発に伴い、新たに建設されたホテルだ。金武ICから10分ほどの場所にある。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
シンプルな内装のレストラン。椅子の色や柄に遊び心がうかがえる。窓からは金武湾も見られる

ホテルのフレンチだとドレスコートが気になるかもしれないが、そこまで気張らなくても「ちょっとキレイ目」くらいで大丈夫だ。

公式サイトを見ると「短パン、ハーフパンツ、スポーツウェア、浴衣はご遠慮ください」とある。履物についても、スリッパやビーチサンダル以外であれば良いとのことだ。男性はシャツに長ズボン、女性はワンピースなどで問題ない。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

シンプルにセットされたフォークやナイフ、スプーンなどのカトラリー。お箸も用意してくれているのが嬉しい。どの料理にどのセットを使うか迷わないですむ。最初から最後まで同じものを使っても良いし、気になる方は、料理の途中でお願いすれば交換してくれるので安心だ。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

厨房はオープンキッチンになっていて、シェフたちの技を眺められるようになっている。

感動を呼び覚ます素材の組み合わせ

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

最初にアペリティフとしていただいたのは、金武町名物「金アグー」の自家製ハムだ。

「金アグー」は琉球在来豚「アグー」の証明を受けた雄雌アグー豚から生まれるアグー純血統。手前が肩ロース、奥がロースである。色合いが違うのは、手前が軽くスモークしているからだ。

端っこのカリっとした食感と、真ん中の生ハムのようななめらかさ。アグーの脂身のヘルシーなうま味。そしてスモーキーな香りがフワッと鼻に抜ける。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

ここではぜひワインなどを合わせたいところだが、私はアルコールが得意ではないので「季節のスカッシュ」をいただく。

使われていたのは「ジャボチカバ」という聞き慣れないレアなフルーツだ。ブラジル南部原産のフトモモ科の果物で、ブドウのようなベリーのような甘酸っぱい味わいがある。

甘いのに低カロリー、ビタミンCなど栄養素が豊富。ブルーベリーよりも豊富なポリフェノールを含むスーパーフルーツだ。

収穫後すぐに食べないと味わいが失われてしまう。アローエデッセでは、金武町の前田農園で生産されたものを使用して新鮮なままスカッシュにしている。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

こちらは、コースの最初に必ず供されるスペシャリテ「パスカード」。パンケーキのような見た目で、ほのかな甘みがあるクレープスフレだ。

最初は食感。フチはカリっとしていてカラメル風味。次に、トリュフオイルの芳醇な香り。最後に爽やかな風味が来た。「これはなんだろう?」と思っているとまさかの「ネギ」。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
よーく見るとネギが載っていることがわかる

「ぜひお土産に持って帰りたい」と思ったが、アローエデッセのパスカードは、予約時間に合わせて生地を作り、焼きたてを提供している。「一番美味しいタイミングで食べてほしい」という料理長・山中シェフのこだわりだ。

ぜひレストランで直に味わうべきだろう。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

パスカードそのものは、フランスのオーヴェルニュ地方の郷土料理。それをアレンジして今の形にしたのは、山中シェフの師匠、アレクサンドル・ブルダスだ。

「パスカード」で検索すると、甘味について書いてあることがほとんどだが、実はこれはブルダス氏の実家のアレンジ。「本来はお好み焼きみたいな料理」だと山中シェフに教えてもらった。

面白いのは、ブルダス氏はパリでも「パスカード」というレストランを開き、フランスにおけるパスカードの味の認識すらも変えてしまったことだ(現在は閉店)。なお、副料理長の水本シェフは「パスカード」でも副料理長を務めていた。つまり、アローエデッセは日本一ブルダス氏のパスカードを味わえる場所といえるのではないかと思う。

まるで絵画!複雑な味の絡み合いがもたらす感動

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

次はスープが登場した。
「スープとは……?」と言葉の定義を考えてしまいそうだが、これはスープなのである。

沖縄県産カボチャの鮮やかな黄色を背景に、海ぶどうとエディブルフラワー、そしてスパイスで描かれた世界。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

崩すのがもったいないが「混ぜるのが美味しさの秘訣」とのこと。儚くも可愛らしい世界を崩し口に運ぶ。

すると。
混ぜたはずなのに、それぞれの味と香りが段階的にやって来る。

カボチャのスープの甘みに、ヨーグルトのやや酸味のある甘みが加わる。海ぶどうとカボチャの種の食感を楽しんでいると、次にやってくるのはオレンジ、そしてミントの香りだ。

カボチャとミント……どうにも一緒になれそうにない気がするが、その間をオレンジがつなぐことで、食材同士の新たな交流が生まれている。そして「美味しい」のだ。自分の味覚の新たな楽しみ方も生まれた気がする。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
すくいきれないスープやスプーンについた残りは、ためらわずにこのパンでぬぐって食べて良いことになっている

パンもこだわりのホテルメイド。おかわりするごとに違うものが出てくる。しかも毎回種類が違う。しかし食べすぎると最後のデザートまで完走できなくなるので要注意だ。

自家製のパンは一階でお土産としても購入できる。ここでは登場しないが、クロワッサンが絶品だったので、パン好きな人は一見の価値アリだ。

沖縄ならではの「ガルグイユ」ここにあり

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

続いては野菜料理。沖縄の自然が育んだ30種類以上もの素材を使う贅沢な一皿だ。素材は、おもに金武町の農家が生産したハーブや野菜である。産直市場で気軽に買えるものも多い。

この美しい一皿を見て「ガルグイユ」をイメージした人は、かなりの食通だろう。「ガルグイユ」とは、フレンチの世界では知らぬ人はいないトップシェフであり21世紀を代表すると言われる料理人、ミシェル・ブラスが故郷の野菜や花、ハーブを使って生み出した独創的な野菜料理のことである。

フランスの「ミシェル・ブラス」本店があるのは、アヴァロン県のライヨール村。パリから国内線を乗り継いで、最寄りのトゥールーズから車で約5時間かかるという不便すぎる場所だが、世界中から食通が訪れるほどの名店だ。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
野菜の下には、金アグー生ハムのバターソテーが隠されていた。

料理長の山中シェフは、フランスの「ミシェル・ブラス」本店と、かつて北海道のザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパにあった世界で唯一の支店「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」両方での勤務経験がある。
(前述のアレクサンドル・ブルダス氏は「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」の初代料理長)その流れを汲み、沖縄ならではの食材を用い、新たな味わいの世界を皿の上に創り出しているのだ。

食材は、生もあれば、茹でたもの、ソテーしたもの、和えたものなどそれぞれ調理法が異なる。上に散らされた生の野菜やハーブは、口にすると、サラダのようにシャキッとした食感を保っている。つまり、提供直前の盛り付けでこのアートを作り出しているのだ。感嘆するほかない。

この料理も、どこから食べるとか、どれを合わせて食べるという決まりはない。だが、ソースも含めて「何の食材が使われているのか?」「どんな調理法なのか」を推測してみるのも楽しい。いつも使っている食材の新たな食べ方のヒントも生まれそうだ。

メインまで食べて後悔したこと

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

メインは、県産鶏肉・海の幸・金アグーの3種類から選べる。今回は海の幸にした。赤マチ(ハマダイ)に、つけあわせはやんばる産のしめじと小松菜だ。
(やんばるとは、沖縄県北部の豊かな自然があふれる森林地帯。2021年7月にはユネスコ世界自然遺産に登録されている)
皮目の焼き加減と青菜の彩りがこれまた美しい。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

口に入れるとまた驚きが。ふわっとしっとりした赤マチにかかっているのは、ココナッツソースなのだ。ここに来てまさかのアジアンテイストである。
ライムとみかんオイルの香り次に来るのはバジルの香り、そして最後にはスぺアミント。最後まで爽やかだ。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
ランチコースは県産豚肉・海の幸・金アグーのいずれかからチョイス。魚料理+本部牛ランプの2種類が楽しめる シェフスペシャルランチメニューも

ここまで食べての後悔は「なんで、メインが一品のコースにしてしまったんだ……魚と肉両方のコースにしておけば……」ということだ。次回はスペシャルランチに挑戦したい。

デザートまで駆け抜けて

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

デセール(と書きたかった)の皿は、焼き菓子メインの盛り合わせ。もちろんここでもすべてに沖縄県産素材が使われている。

口の中を爽やかにしてくれる、自家製のチョコレートアイスや、マンゴーソースのパンナコッタ。

そして、焼き菓子はどれも一口で食べられるフィンガーサイズ。しっとりとした島バナナケーキ、サクサクの紅芋&ゴマちんすこう、そしてドリンクでも楽しんだジャボチカバのタルトはふわっとした食感……それぞれの菓子の食感は全て異なり、最後まで楽しませてくれる。

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

写真を見て、右下のこちらが気になった人も多いと思う。こちらは名護勝山の完熟シークヮーサーを使ったチョコレートだ。中にはシークヮーサーのジュレとガナッシュが封じ込められ、ホワイトチョコレートと共に口の中で初めての味わいを創り出す。

アローエデッセには、専属のショコラティエ兼パティシエがいて、旬の食材を使ったオリジナルショコラがいただける。こちらのショコラは2ヶ月ごとに5種類セットで購入が可能。食事と共にチョコレートを予約し、食後にお土産として持ち帰るのもおすすめだ。

詳しくは関連記事「ATELIER CHOCOLAT」にて

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)

店名の「Alo edesse(アローエデッセ)」 とは 「食を育む」という意味のラテン語だ。古代ローマで用いられていたラテン語は、現在は学術用語やバチカン市国の公用語として使われているのみだが、フランス語やイタリア語の元でもあり、現代でもその語彙が使われることは珍しくない。

「方言と同じように『古き良き事を忘れてはならない』という意味を込めました」と山中シェフは語った。昔から食べられてきた、あるいは忘れかけられている沖縄の食材を皿の中に発見する喜び、新たな味付けや調理法で味わう感動、食べることで自分の食の可能性が広がる。アローエデッセは、世界の味と沖縄をつないでくれる。「わざわざ行って食べたいレストラン」のこれからが楽しみだ。

Information

「Alo Edesse(アローエデッセ)」(金武町)
Alo Edesse(アローエデッセ)
住所
〒904-1201 沖縄県国頭郡金武町字金武10907 ASBO STAY HOTEL (アスボステイホテル)2F
電話番号
098-989-4919
営業時間
𝐋𝐮𝐧𝐜𝐡 11:30-15:00
𝐃𝐢𝐧𝐧𝐞𝐫 18:00-22:00
定休日
月曜日・火曜日
駐車場
あり
カード
電子マネー
一部可(事前にご確認ください)
URL・SNS
公式サイト
Instagram
チョコレート「ATELIER CHOCOLAT」(アトリエショコラ)

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