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長嶺 真輝

長嶺 真輝

ハンドボールでも「冬の沖縄キャンプ」?! 琉球コラソンの強化と県外からの誘客に繋がるか

琉球コラソンの強化と県外からの誘客に繋がるか
シンガポールや台湾からもチームを招いて開かれたハンドボールのウィンターキャンプ=1月24日、ANAアリーナ浦添(長嶺真輝撮影)

沖縄スポーツの冬の風物詩といえば、プロ野球(NPB)やJリーグのプロチームが集結するキャンプを思い浮かべる人は多いだろう。

シーズン真っ盛りである今の時期は県内各地で国内トップ級の選手たちがトレーニングや練習試合に励んでいる。子どもたちと交流して夢を与えたり、県外からの誘客に貢献したりして、沖縄にとっては欠かせない冬の“イベント”の一つだ。

そんな中、日本ハンドボールリーグ(JHL)の琉球コラソンが新たな試みを始めた。JHLやアジアのチームを沖縄に招き、合同で練習を行う「2024 HANDBALL WINTER CAMP IN OKINAWA」(ウィンターキャンプ)である。1月23〜27日に浦添市と沖縄市で開催。創設16年目のシーズンを戦っているコラソンとして、同様な取り組みは初めてという。

狙いや今後の展望は…。

オフ期間に対外試合「実戦練習が最大のメリット」

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福岡ゴールデンウルブスと実戦形式の練習に取り組む琉球コラソンの選手たち

キャンプは沖縄県の「スポーツイベント支援事業」の補助金も活用して開いた。JHLからコラソンと福岡ゴールデンウルブスが参加し、台湾とシンガポールからもチームが来沖。シンガポールのチームにはマカオの選手も加わった。コラソンと台湾のチームはジュニア世代も交流した。

会場はANAアリーナ浦添と沖縄市体育館。23〜26日にチーム練習やジュニアクリニックを行い、最終日の27日はコラソン対福岡ゴールデンウルブス、シンガポール対台湾などのエキシビジョンマッチを行った。

以前から台湾やシンガポールのハンドボール界と交流を続け、今回のキャンプ開催につなげたコラソンの水野裕矢CEOは「1月はシーズン中ではありますが、国際大会もあってJHLの試合がありません。県外に比べて温暖な季節ということもあり、沖縄でキャンプをするのには適した時期です。参加チーム同士で切磋琢磨して強くなることも一つの目的です」と開催の意図を説明する。

筆者が取材に訪れた1月24日もチーム同士でゲーム形式の練習を多く行っていた。コラソンは所属する台湾人選手3人が代表としてアジア選手権に出場していて、人数が少なかったこともあり、東江正作監督は「シーズンがオフの時期に実戦形式のトレーニングをできることが最大のメリットです。今は人数が少なくて実戦が不足していたので、いい練習ができています」と手応えを語った。

「強くなること」で強豪も呼び込めるか

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練習で選手たちに指示を出す東江正作監督

今回は初めての開催で準備期間が短かったこともあり、JHLからの参加はコラソンの他に福岡のみ。コラソンは現在、JHLで13チーム中11位、福岡は最下位に沈んでいる。ただ、今後も毎年継続してキャンプを開き、この時期に複数チームでキャンプを行うメリットが伝われば、強豪クラブが参加することも見込めるかもしれない。

ハンドボールは野球やサッカーと違い屋内競技ではあるが、練習以外の時間も含めて温暖な沖縄でキャンプを張ることは、選手の身体的負担の軽減やメンタル面のリフレッシュ効果もあるだろう。

冬のキャンプについて「可能性しかない」と期待感を語る東江監督は「今後リーグからの参加が2チーム、3チームと増えていくと活気が出てくるし、どんどん発展していく。ただ、そのためにはウチが強くならないといけない。『コラソンとやりたい』と思われるチームにならないと。そういう意味でも、継続してやっていきたいです」と意気込む。

今回練習に関しては全て無料で公開し、来場を呼び掛けていた。日本の男子ハンドボールは今夏のパリ五輪で36年ぶりに自力で出場枠を獲得し、今年9月には新リーグの開幕も予定している。リーグや選手の人気向上に合わせ、将来的にはファンの誘客にも繋げたいところだろう。

「底を脱して」攻守が改善 世代別日本代表・伊禮颯雅も追加登録

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ディフェンスで体を張る峰岸勁志郎(中央)ら

2月4日にアウェーで6位のジークスター東京と対戦し、約2カ月ぶりにリーグ戦が再開するコラソン。今シーズンは新加入の外国籍選手との連係を深めるのに苦労し、12試合を終えた現時点で2勝9敗1分と厳しい戦いが続くが、今の状態はどうなのか。東江監督はこう語る。

「どん底から脱してはいるので、キャンプ期間中にいるメンバーである程度固めて、戻ってきたメンバーでさらに補完していきたい。ディフェンスは少しずつ攻撃的な守りができてきているし、オフェンスもスピーディな展開ができつつあります」

1月末には、昨年の全日本大学学生選手権大会(インカレ)で3連覇を果たした中央大学の2年生で、世代別の日本代表にも選ばれている伊禮颯雅(興南高校出身)が追加登録され、ジークスター戦から出場が可能になる。

それを念頭に、指揮官は「颯雅は球持ちがいいし、パスも出せる。そうすると(東江)太輝が生きてくるので、相乗効果が出てくると思います」と期待感を語った。今シーズンはチームの連係が安定せず、攻撃の司令塔を務める東江主将が難しいシュートを自ら打たざるを得ない場面も多かったため、伊禮の加入で攻撃に厚みが増すことが期待される。

最大の課題となっている外国籍選手との連係については、ポストのディフェンスで体を張る峰岸勁志郎は「まだ完全ではないけど、ようやくフィットしてきたと思います。彼らも横の動きに対する対応が初めより良くなってきました」と手応えを感じている。

今シーズンはオフェンスの得点力不足もあるが、ディフェンスでも失点が30点以上に上る試合が多いため、「25点以下が理想で、30点がデッドライン。自分のできることを全力でやっていきたいです」と気合を入れる。

2月は4日と10日にアウェーで試合を行った後、12日には沖縄県立武道館アリーナでホーム戦があるコラソン。ウィンターキャンプで蓄えた力を発揮し、一つずつ白星を積み重ねていきたい。

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