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長嶺 真輝

長嶺 真輝

沖縄ハンドボール界をけん引する新たな“兄弟”、「東江」を見て育った「伊禮」が台頭 弟・颯雅が琉球コラソンでホームデビュー

琉球コラソン
攻撃の司令塔として相手ディフェンスを崩しに掛かる伊禮颯雅=12日、那覇市の沖縄県立武道館アリーナ(長嶺真輝撮影)

沖縄のハンドボール界をけん引する「兄弟」と言えば、真っ先に思い浮かぶのは東江兄弟だろう。

日本ハンドボールリーグ(JHL)の強豪・ジークスター東京に所属する弟の東江雄斗(興南高校ー早稲田大学出身)は、今年のパリ五輪で36年ぶりに自力で出場権を獲得した男子日本代表で主将を務める。兄の東江太輝(那覇西高校ー日本体育大学出身)も琉球コラソンの主将を担い、地元チームを引っ張っている。

この2人に続き、存在感を高めているのが「伊禮兄弟」である。

兄の伊禮雅太(いれい・うた、興南高校ー中央大学4年)と弟の颯雅(いれい・そあ、興南高校ー中央大学2年)は、昨年11月の全日本学生選手権(全日本インカレ)で中央大学を初の3連覇に導き、2人とも7人のみが選ばれる大会優秀選手賞に輝いた。主将を務めた雅太は2、3年時に短期契約していたジークスター東京に入団。颯雅は大学での活動を中断し、2月にコラソンと契約を結んでトップリーグでプレーしている。

目次

颯雅「パスとシュート」で存在感 自らコラソン希望

琉球コラソン
パスカットからのワンマン速攻でシュートを放つ伊禮颯雅

颯雅は今月12日、那覇市の沖縄県立武道館アリーナであった琉球コラソン対トヨタ紡織九州レッドトルネード佐賀でホームデビューを飾った。試合は現在3位のトヨタ紡織を相手に25ー39で完敗したが、主に後半でコートに立った颯雅はステップシュート(飛ばずに相手ディフェンスの隙を突いて打つシュート)などで2得点を挙げたほか、パスでも存在感を見せた。

自己評価は「アシストとかでまわりを生かすプレーができました。個人としてもディフェンスからの速攻や、セットプレーのオフェンスからのステップシュートで決められたのは良かったです」と及第点。母校である興南高校の生徒や小学校時代の友人らが応援に駆け付けていたといい、「たくさんのファミリアが来場している中で初めてホームで試合ができて、すごい応援をされているという実感が湧きました」と笑みを浮かべた。

主にセンターバックを務め、攻撃の司令塔としての評価が高い。神森小中学校時代に全国制覇を果たし、興南高校では主将として全国ベスト8。前述の通り、大学で再び全国の頂点に立ち、U16、U19、U21の世代別日本代表にも選ばれている。

2つ上の雅太にくっ付いていく形で、4歳でハンドボールを始めた。今シーズンで創設16年目となるコラソンの試合は小さい頃からよく観戦していて、小学生の時にはコラソンジュニアでもプレーした。

今回の契約は大学の監督とも相談した上で、自ら希望したという。「地元のチームで小さい頃からコラソンの試合を観ていて、いつかユニホームを着てみたかったです。あとプレータイムをもらうことで、いい経験を積めると思いました。活躍して、チームを勝利に導きたいです」。大学の春季リーグは出場せず、JHLのレギュラーシーズンが続く5月までコラソンに帯同する。

東江太輝主将「もっと積極的に打ちに行っていい」

琉球コラソン
試合後、ファンの前で挨拶する東江太輝主将

まだ20歳ながら頼もしいプレーを見せる颯雅に対し、チームからの期待感は大きい。

東江兄弟の父である東江正作監督は「2日前の大崎電気戦ではちょっと戸惑いも見えましたが、その時の不甲斐なさを払拭するような強い気持ちでプレーしていました。(リーグ戦が再開する)3月の終わり頃には物凄く良くなっていると思います」と高く評価した。

同じく攻撃の司令塔を務める東江太輝主将も「球離れが良すぎてパサーになってしまうことがあるので、『もっと積極的に打ちに行っていい』ということは練習中から伝えています。今日もワンマン速攻やステップシュートをしていたように、彼は点を取れる力を持っているので」と話し、さらなる成長を期待する。

「東江兄弟に負けないくらいリーグを盛り上げたい」

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試合後に子ども達からサインを求められる伊禮颯雅

颯雅はこれまでにJHLで3試合に出場したが、自らも乗り越えるべき課題が徐々に明確になってきているようだ。

「1対1でのフィジカルの強さは学生とは違うし、攻撃時の緩急の使い方も違う。個人として1対1から決め切るフィジカル面、相手キーパーとの駆け引きなどのシュート能力は課題に感じています。自分はまだ学生で若いので、運動量を生かしたディフェンスやルーズボールに飛び込む姿勢など、一生懸命ガムシャラにプレーしたいです」

日本代表経験者が多いジークスター東京でプレーする兄の雅太も、12日にあったアウェー戦で2得点を記録した。4月21日には沖縄県立武道館でジークスターとの試合が組まれている。これまで味方としてプレーしてきた兄との対決は「そんなに意識はしないです」と言うが、「戦う以上はチームとしても、個人としても勝ちたいと思います」と闘志を見せる。

同じ浦添市出身の東江兄弟は幼い頃からの憧れの存在だったが、今は同じ土俵でプレーするようになった。「僕たちは東江兄弟のハンドボールを見て育ってきました。2人に負けないくらい、僕たち兄弟も頑張って日本リーグを盛り上げたいです」と気を引き締める。東江雄斗のように代表で活躍することも目標に掲げ、「世界でも通用するようなプレーヤーになりたいです」と大きな夢を語った。

沖縄ハンドボール界の次世代の“顔”になることを予感させる「伊禮兄弟」の活躍に注目だ。

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