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長嶺 真輝

長嶺 真輝

「富樫」対策、セカンドユニット、試合の出だし… 16日に天皇杯決勝、千葉Jに“リベンジ”を誓う琉球ゴールデンキングス 注目ポイントは?

2024バスケ天皇杯決勝_琉球ゴールデンキングス
3月16日に行われるバスケットボール天皇杯決勝は、昨年と同じ琉球ゴールデンキングス対千葉ジェッツという顔合わせとなった

バスケットボール男子の第99回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会が2024年3月16日午後3時から、埼玉県のさいたまスーパーアリーナで行われる。Bリーグの琉球ゴールデンキングスは2年連続で最終決戦の舞台に駒を進め、昨年同じ舞台で苦杯をなめさせられた千葉ジェッツ(千葉J)に対し、リベンジに挑む。

両チームとも、今シーズンは東アジアスーパーリーグ(EASL)も含めて三つの大会の日程を同時並行でこなしてきたため、厳しいスケジュールの中でBリーグの前半戦は苦しい時期もあった。ただ、キングスは1月末にアレックス・カークが帰化したことを発端に劇的にチームの連係が改善し、千葉Jも新戦力の外国籍選手がフィットして今月あったEASLのファイナル4(決勝トーナメント)で優勝を飾り、ケミストリーを高めている。

Bリーグの順位はキングスが30勝12敗で西地区1位、千葉Jは27勝15敗で東地区3位(ワイルドカード1位)となっており、いずれも計8チームが進出するチャンピオンシップ(CS)進出圏内につける。昨シーズンのBリーグファイナルでも相まみえた両チームは、今シーズンは天皇杯決勝が初の顔合わせ。ハイレベルな好ゲームが期待される。

キングスにとって初の天皇杯タイトル奪取が懸かる大一番を前に、試合の見どころを探る。

最も警戒すべきは“日本代表キャプテン”富樫勇樹

2024バスケ天皇杯決勝_琉球ゴールデンキングス
メディア向けの公開練習でコミュニケーションを取る桶谷大HC(左)とヴィック・ロー=2月28日、沖縄アリーナサブアリーナ

まず一つ目は、やはり日本代表のキャプテンも務める千葉Jのエースガード富樫勇樹をどう止めるか、であろう。富樫は現在、Bリーグにおける平均スタッツの個人ランキングで得点(19.5点)、アシスト(5.1本)とも4位の数字を残しており、EASLでも大会MVPに輝いて際立った存在感を放つ。素早いモーションで打つスリーポイントシュート(3P)や切れのあるドライブは脅威であり、勝負強さもピカイチだ。

2月14日にホームで行った川崎ブレイブサンダースとの天皇杯準決勝後、同日に行われたもう一試合の準決勝でゲームハイの29得点を挙げた富樫について聞かれた岸本は、自身がマッチアップする可能性も念頭に「簡単に止められる選手ではないので、もちろん僕も頑張りますし、チームみんなで協力しながらチームディフェンスで守りたいです」と見通していた。

千葉Jは富樫の他にも、今シーズン途中に加入したオーストラリア代表のゼイビア・クックス、昨シーズンBリーグベスト5に選ばれ、今月チームに復帰したクリストファー・スミスなど内外で得点を決められる選手を揃える。対するキングスもヴィック・ロー、松脇圭志、今村佳太、小野寺祥太など個のディフェンス力が高い選手が多いため、選手同士のマッチアップも気になるポイントだ。

キングスにとって直近の試合となった今月6日の京都ハンナリーズ戦後、桶谷大HCはこんな話をしていた。

「どこが相性がいいかはまだ分からないですけど、昨シーズンのファイナルでは松脇がスミスに対して一番いいディフェンスをしていました。松脇のままで対応できるのか、今村やヴィックに変えないといけないのか、そこら辺は見ながら考えたいと思います。スタートで松脇とヴィックがいて、もしスミスと富樫が出てきたら、ヴィックが富樫につくかと思います」

本番10日前のコメントであり、その後の詳細なスカウティングも作用してくるため、本番でどういうスターティング5やマッチアップになるかは分からないが、コーチ陣同士の采配が見ものだ。

優位に立つベンチの“厚み” 勝負所を見極めたい

2024バスケ天皇杯決勝_琉球ゴールデンキングス
ベンチに厚みをもたらす(左から)田代直希、小野寺祥太、荒川颯

次に挙げるのはセカンドユニットの“厚み”だ。一発勝負では力のある少数の選手が長い時間コートに立つ事も多いが、タイトル戦は張り詰めた緊張感の中で激しい試合になることが予想され、時間の経過と共に心身が大きく削られていくため、チームプレーの質を高く保つためにもベンチメンバーのレベルが高いことに越したことはない。

その点で分があるのはキングスだろう。

カークが帰化して、アレン・ダーラム、ローと先発で“3BIG”を形成するようになり、最近は過去に3度リバウンド王に輝いているジャック・クーリー、日本代表の今村、中心格の小野寺がベンチスタートとなっており、他にも今村と同じく日本代表の渡邉飛勇、ハンドラーの牧隼利、生え抜き8年目でベテランの域に入ってきた田代直希、成長著しい荒川颯など多彩なメンバーが控える。

一方の千葉Jはスミスや経験豊富な西村文男、日本代表の金近廉、ハッスルプレーヤーの小川麻斗らがベンチスタートになると見られる。

キングスは6日の京都戦でベンチに入った12人が全員得点を挙げ、チームで戦うスタイルが目に見えて浸透してきている。試合後、岸本は天皇杯決勝に向けて「正直やってみないと分からない」と前置きした一方で、自信に満ちたコメントを続けた。

「どういう状況に置かれても自分たちが戦う術がたくさんあると思っています。特にオフェンスは、ボールが回りながらみんながプレーに関わり、点数が増えている。強みに変わってきたと思います。オフェンスでもディフェンスでも、どういう状況でも活路を見出すことができると思うので、こういう状態で決勝に臨めることがすごく楽しみです」

誰が出てもコート上の5人のレベルが下がらない強みを生かし、勝負所を見極めて一気にリードを奪いたいところだ。

昨シーズンの経験「糧」に“出だし”を改善できるか

2024バスケ天皇杯決勝_琉球ゴールデンキングス
アンソニー・マクヘンリーAC(左端)の話に耳を傾けるアレックス・カーク(同2人目)、ジャック・クーリー(同3人目)、アレン・ダーラムの強力なインサイド陣

一方で、この記事で最後に取り上げる見どころは、キングスにとって最大の課題である試合の「出だし」だ。以下は、強度不足や連係ミスで序盤に先行を許した京都戦後の田代直希主将の言葉だ。

「今日も立ち上がりのところで少し望む展開ができなかったので、一発勝負の時こそ立ち上がりが大事だと思います。出だしで自分たちがやりたいバスケットをエナジーを持ってやれるかが大切。昨シーズンの天皇杯決勝も出だしで少しもたついてた印象があったので、その二の舞にならないようにしたい。昨年はかなり悔しい経験をしたので、それを糧に『今年は絶対に取るぞ』という気持ちを持って準備をしたいです」

田代が言うように、昨年の決勝は岸本が先制点となる3Pを決めて以降、プレーの強度で上回られ、その後は試合終了まで一度もリードを奪うことができずに76ー87で敗れた。

2月28日にあったメディア向けの公開練習後、岸本が昨シーズン初めてBリーグ王者になったことを念頭に「優勝を経験したことは必ず(天皇杯決勝に)生きてくると思います」と言ったように、大一番に臨む際に良いメンタルを保てる選手は多いかもしれない。昨シーズン千葉Jに所属したローは天皇杯優勝も経験している。ただ、こればかりはコートに立ってみないと分からない部分なため、試合開始から数分の攻防にはより注目したい。

Bリーグになってから天皇杯に参戦しているキングスにとって、今回の第99回は7度目の挑戦となる。プロ・アマが参加して日本一を決める伝統ある大会だが、天皇杯のトロフィーが沖縄に渡ったことは一度もない。生え抜き12年目の岸本はこう決意を語る。

「取っていないタイトルなので、是が非でも取りたいです。次へのステップにするような大会ではありませんが、(Bリーグの)レギュラーシーズンの途中でもあります。これを勝ち取るからこそ、自分たちがまた次の段階に進めると思う。勝って、天皇杯を沖縄に持ち帰ってこれたらいいなと思います」

第96回からの直近3大会はベスト8、ベスト4、準優勝と、一つずつ着実に頂点への階段を登っているキングス。高く、険しい道のりを乗り越え、栄光への「あと一歩」を踏み出すことができるか。歴史を変えるための戦いは、もうすぐだ。

KINGS_PLAYERS_STORY
https://www.otv.co.jp/okitive/collaborator/ryukyugoldenkings/

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