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OTV報道部

選挙のたびに市民を分断 移設問題の源流は レポート②~シリーズ・名護市長選挙2022~

基地の受け入れの是非をめぐり繰り広げられてきた名護市長選挙。

日本の安全保障という重いテーマを背負わされ、日本全体で考えていかねばならない問題をなぜ名護市民ばかりが選択を迫られるのか選挙のたびに市民が分断される歴史は20年余り前に遡ります。

米兵少女暴行事件で反基地感情のマグマが噴出

1995年、アメリカ兵が起こした少女暴行事件をきっかけに「反基地感情」が爆発し8万5000人が結集した県民総決起大会

戦後50年、基地の重圧にあえぐ沖縄の怒りは日米両政府を動かし基地の整理・縮小を検討する日米特別行動委員会・SACOが創設されます。
(95年12月)

名護市長選2022
名護市長選2022

普天間基地返還 条件付きで合意へ

当時の橋本首相は沖縄の要望を汲み、「世界一危険」と称される普天間基地を返還するようアメリカに直訴。
1996年4月、橋本首相、モンデール駐日米大使は普天間基地について5年から7年以内で返還すると合意しましたが、その条件は既存の米軍基地にヘリポートを建設することでした。
このSACO最終報告が今に続く移設問題の源流です。
最終報告の翌年、政府は辺野古沖への海上ヘリポート建設計画を地元に提示します。

名護市長選2022

全国初 基地移設の是非を問う市民投票

これを受けて名護市では、移設の是非を問う市民投票が全国で初めて実施され市民は基地問題という大きなうねりに巻き込まれることになりました。

全国が注目した投票の行方は、反対票が上回るも当時の比嘉鉄也市長が結果に反する形で建設受け入れを表明し辞任します。

名護市長選2022

名護市における米軍へリポート基地建設の是非を問う市民投票

(1997年12月12日執行)
投票率82.45%

▼賛成・・・2,562票
▼環境対策や経済効果が期待できるので賛成・・・11,705票
合計・・・14,267票(45.33%)

▽反対・・・16,254票
▽環境対策や経済効果が期待できないので反対・・・385票
合計・・・16,639票(52.86%)

名護市長選2022

市長選・知事選ともに 移設容認派が勝利

その2ヶ月後の市長選では、比嘉前市長が受け入れを表明したことで、結論は出ているとして、後継の岸本建男氏が初当選。

名護市長選2022

名護市長選挙(1998年2月8日執行)

投票率82.35%

岸本建男・・・16,253票 当選
玉城義和・・・15,103票
辻山清 ・・・  44票

さらに、11月に行われた県知事選挙では、稲嶺恵一氏が「15年の使用期限」と「軍民共用空港」を条件に移設を容認すると訴え、当時の大田昌秀知事を破りました。

岸本市長は翌年、稲嶺知事が提案した15年の使用期限などに加えて、市民生活の安全や環境への配慮、日米地位協定の改善など7つの条件を提示し、
この1つでも欠けた場合は白紙撤回もあり得るとして受け入れを表明。
3年後の市長選でも条件付き容認の立場で再選を果たします。

いっぽう、地元の受け入れ条件のハードルの高さや、住民の抗議活動により計画が進みません。

名護市長選2022
名護市長選2022

沖国大ヘリ墜落事故 普天間基地返還の声高まる

そんななか2004年8月、宜野湾市の沖縄国際大学の構内にアメリカ軍の大型ヘリが墜落します。
「世界一危険」と形容される普天間基地の所属機が起こした事故に県民の基地返還を求める声は再び高まります。

名護市長選2022
名護市長選2022

こうしたなか2005年10月、外務・防衛による日米安全保障協議委員会、いわゆる2+2は地元・名護市と協議することなくキャンプシュワブの沿岸案で合意します。

しかし、この沿岸案は滑走路の延長線上に学校や住宅地があり市民生活にも影響が大きく、岸本市長との約束を真っ向から否定するものでした。
岸本市長の後継として2006年の選挙に出馬した島袋吉和氏は沿岸案に反対の立場であるものの、政府が修正案を示せば協議に応じると訴えて当選します。
選挙から3か月後、当時の額賀防衛庁長官との協議で島袋市長はV字型滑走路付の沿岸案に基本合意します。

名護市長選2022

名護市長選挙(2006年1月22日執行)

投票率74.98%

島袋吉和 ・・・16,764票 当選
我喜屋宗弘・・・11,029票
大城敬人 ・・・4,354票

政府は2006年5月、現行のV字型案を閣議決定。
結局、稲嶺知事や岸本市長が政府に付した15年の使用期限や7つの条件は一方的に全てなかったことにして、V字型案の基本合意のみが残る結果となりました。

名護市長選2022

民主党政権で再び混迷した移設問題

こうしたなか移設問題が大きく動いたのが2009年の9月。
最低でも県外・国外移設を唱えた民主党の鳩山政権の発足でした。
翌年に行われた名護市長選挙では、辺野古移設に反対を掲げる稲嶺氏が初当選。

名護市長選2022

名護市長選挙(2010年1月24日執行)

投票率76.96%

稲嶺進 ・・・17,950票 当選
島袋吉和・・・16,362票

一向に進まなかった長年の懸案事項に解決の道筋が見えたかと思われましたが、鳩山総理はその後、辺野古に回帰することを盛り込んだ日米共同声明を発表。
移設問題は振り出しに戻る結果となりました。

名護市長選2022
名護市長選2022

その後、民主党政権は倒れ、2012年に辺野古移設を推進する安倍内閣が発足し、2013年3月に県に対して辺野古の公有水面埋め立てを申請。
当時の仲井真知事がこれを承認したことにより、2014年の名護市長選挙は改めて地元の判断に注目が集まる選挙となります。
結果は稲嶺市長が再選。しかし、政府は地元の民意を顧みることなく移設計画を進め、その後、移設に反対する翁長県政が誕生しても見直すことはなく工事を進めました。

移設問題は法廷闘争へ

2015年10月に当時の翁長知事が公有水面埋め立て申請の取り消すなど移設問題は県と国とによる法廷闘争に突入していますが、取り消し訴訟では最高裁で県の敗訴が確定するなど、軒並み県にとって厳しい結果となっています。
前回、2018年の市長選挙では政府与党が支援する渡具知武豊氏が辺野古への移設問題については「裁判の行方を見守るとして」態度を示さず、経済振興などを前面に訴え勝利しました。

名護市長選2022

名護市長選挙(2018年2月4日執行)

投票率76.92%

渡具知武豊・・・20,389票 当選
稲嶺進  ・・・16,931票

辺野古への移設工事は、埋め立て海域である大浦湾に軟弱地盤が見つかり、政府が設計変更を県に提出していますが、玉城知事はこれを認めず移設問題は新たな局面を迎えています。
普天間基地の返還合意から20年あまり、その間、6度の選挙が行われ、移設容認・反対と苦しい決断を迫られてきた名護市民。
選挙のたびに安全保障という思いテーマを背負わされている構図は変わっていません。

名護市長選2022

レポート報告:島田直弥
<略歴>沖縄県沖縄市出身 昭和薬科大付属高校卒業後 明治大学に進学
2005年にOTV入社 2011年から報道部在籍 県政担当記者を経て現在、報道デスク

Information

2022年1月23日よる7時55分頃から 開票LIVE配信

2022 名護市長選挙 開票速報 OTV Live News イット インターネット特別番組
YoutubeにてLIVE配信予定。

名護市長選2022

「国防」を背負わされ続けた街 レポート①

普天間基地の辺野古移設計画の「賛否」が常に争点となってきた名護市長選挙。1999年に条件付きで移設受け入れを表明した岸本建男市長(当時)は、こう述べていた…

>~シリーズ・名護市長選2022~レポート①

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