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OTV報道部

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容疑者を発見!直ちに尾行せよ

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

「被疑者、職場ビルから出てきた」
「マル被、ファミマに入った」
「交差点わたる」
「頭に白いサングラス」
「白いナイキシューズ」
「パチンコ店に入った」
「尾行引き継ぐ」
「俺も入る」
「現認」
「目が合った。注意」
「パチンコ店出ました」
「ゆいレールで尾行を継続」
「記者を駅に配置」
「俺は終点で待ち構える」
「気づかれた?」
「いえ、車内でずっと携帯いじってる」
「尾行に気付かれたら離脱せよ」

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

このやり取りは、公務員による業務上横領事件の取材で、報道部員3人が交わした実際のラインメッセージです。
容疑者が職場から出てきたことを確認した記者は尾行の間、その動向から目を離さず、その日の人着(着衣や身に着けているもの)を素早くラインに打ち込んだのです。

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

ほかの報道部員は職場周辺に散っていました。
パチンコ店に入ったものの、すぐに店を出てモノレールで移動した容疑者。
記者もまた交互に、その背中を追い続けたのです。

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

犯罪捜査手法を取材で実践

「地取り」「鑑取り」と呼ばれる警察の犯罪捜査、メディアの警察担当記者たちも似たような手法で事件取材を続けていきます。
「地取り」とは犯行現場周辺の目撃情報など「聞き込み」をすること、「鑑取り」とは容疑者を始め事件関係者の周辺から端緒を得るための捜査です。
冒頭の業務上横領事件では、「容疑者が那覇市内某所に住んでいる」「職場は那覇市内某所」という情報が「鑑取り」取材で得られ、顔写真の入手にも成功しました。
横領した公金は数千万円と多額で社会的反響も大きな事件です。
取材班にとっては、警察が「着手」する朝に任意同行の様子をカメラで捉えるため自宅を割り出すことが喫緊の課題となっていたのです。

雑踏の中で容疑者を探す「見当たり」

容疑者の顔写真を手に記者たちは連日、那覇市内の某駅に張り込みました。
膨大な数の乗降客の中から容疑者を探し出す日々を過ごしました。

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

このような手法は警察で「見当たり捜査」と呼ばれています。
この公金横領事件では、雑踏の中で容疑者を見つけ出すことに成功し、その後も尾行がばれることなく自宅を割り出して直撃インタビューに成功しました。
聞き込みで情報を得て、容疑者周辺を取材し、あわよくば直撃インタビューを敢行。
このように取材がスムーズに展開することは稀なケースで、大半は「無駄」と思われることの連続です。
警察の捜査を真似、地道に実践して得られた情報はどうするか?

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

以前、この欄で紹介した「夜討ち朝駆け」で捜査員に確かめていくのですが、記者たちは小説のようにドラマティックな展開を望みつつ、「夜回り」に伴う悲哀を味わい、打ちのめされる夜が多いのです…

容疑者を発見!直ちに尾行せよ

「夜討ち朝駆け」 時代遅れ…と言われても

俗に「夜回り」とも称される取材手法は若手記者にとって避けては通れない登竜門です。
とりわけ警察担当記者は日々、「守秘義務」という鉄壁の…

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執筆:末吉 教彦
略歴
沖縄県出身 沖縄尚学高校卒業後、早稲田大学へ進学 1998年にOTV入社
県警、県政取材キャップ、報道デスク、編集長を経て現在、報道部長

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