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真栄城 潤一

真栄城 潤一

終戦を知らず木の上で生き延びた日本兵は何を思ったか?戦後80年、沖縄と戦争を考える。映画『木の上の軍隊』

終戦を知らず木の上で生き延びた日本兵は何を思ったか? 戦後80年、沖縄と戦争を考える 映画『木の上の軍隊』

2025年、戦後80年を迎える。日本で唯一の地上戦が展開された沖縄では、戦争を二度と繰り返してはいけないという反戦・平和への願いが色濃く、そのこともあって沖縄戦をテーマとして描く作品も数多い。
堤真一さんと山田裕貴さんをダブル主演に迎え、1945年の伊江島を描いた映画『木の上の軍隊』が6月13日に沖縄先行公開される(全国上映は7月25日)。監督は『ミラクルシティコザ』を手掛けた平一紘さんで、全編沖縄でのロケを敢行し、実際に伊江島の樹上での撮影も行った。
終戦を知ることなくガジュマルの木の上で2年間を生き延びた日本兵2人の実話を基にした物語には、戦争の愚かさや残酷さ、取り返しのつかない選択をしてきた後悔など、辛く苦しい場面を目の当たりにせざるを得ない時間も多々ある。しかし、それゆえに受け取ることができるメッセージも確かにあるはずだ。

試写会で舞台挨拶をした平監督は「この映画が戦後80年の年に沖縄から日本、そして世界に発信されていくということの意味を強く感じています」と述べ、1人でも多くの人が劇場に足を運ぶように呼びかけた。

〈あらすじ〉
太平洋戦争末期、戦況が悪化の一途を辿る1945年。飛行場の占領を狙い、沖縄県伊江島に米軍が侵攻。激しい攻防戦の末に、島は壊滅的な状況に陥っていた。宮崎から派兵された少尉・山下一雄(堤真一)と沖縄出身の新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は、敵の銃撃に追い詰められ、大きなガジュマルの木の上に身を潜める。仲間の死体は増え続け、圧倒的な戦力の差を目の当たりにした山下は、援軍が来るまでその場で待機することを決断する。戦闘経験が豊富で国家を背負う厳格な上官・山下と、島から出たことがなくどこか呑気な新兵・安慶名は、話が嚙み合わないながらも、二人きりでじっと恐怖と飢えに耐え忍んでいた。やがて戦争は日本の敗戦をもって終結するが、そのことを知る術もない二人の“孤独な戦争”は続いていく。極限の樹上生活の中で、彼らが必死に戦い続けたものとは――。(公式WEBサイトより引用)

戦後80年、沖縄から発信することの意味

終戦を知らず木の上で生き延びた日本兵は何を思ったか? 戦後80年、沖縄と戦争を考える 映画『木の上の軍隊』
舞台挨拶する平一紘監督

一般公開に先駆けて開催された試写会では、上映後に平監督が登壇して舞台挨拶を行った。

「最初にこの映画を制作する話をいただいた時は『僕にできるのかな…』と思いながらも、ふたつ返事でOKするような素晴らしい内容でした」と平監督。テーマが戦争、沖縄戦なだけに、その事実の重さを踏まえてリサーチを進めていったという。その中で「自分がいかに不勉強で、いかに戦争を題材にした作品を自分が見ようとしていなかったかということに気づきました」と噛み締める。

戦後80年の年の「慰霊の日」直前に公開されることについて「今、特に沖縄という場所がいかに戦争に近いのかということを、日々のニュースを見たりする中で実感しています。この映画がこの年に沖縄から日本、そして世界に発信されていくということの意味を強く感じています」と感慨がこもった声で語った。
その上で平監督は「本作のような質の高い映画を撮れるスタッフがこの沖縄にいるということも全世界に知らせたいと思っています」と強調し、「1人でも多くの皆さんに届けていきたいです」と決意を表明した。

舞台作品を映画化、主題歌は伊江島出身のAnly

終戦を知らず木の上で生き延びた日本兵は何を思ったか? 戦後80年、沖縄と戦争を考える 映画『木の上の軍隊』

本作の原作となったのは、2013年に東京Bunkamuraシアターコクーンで上演された同名の舞台で、作家・劇作家の井上ひさしさんが生前に書き残した2行のメモを基に、劇作家の蓬莱竜太さんと演出家の栗山民也さんが作り上げたもの。

井上ひさしさんの娘で、本作のプロデューサーにも名を連ねる井上麻矢さんは「この作品の根底に流れているのは『平和』です。枝や幹が複雑に絡み合う生命の木であるガジュマルの上で生き抜こうとした二人の兵士の姿を通して、生きることを真摯に描くこと、それがこの混沌とした時代に届ける今を生きている私たち一人一人の使命だと思います」とコメントを寄せている。

また、主題歌の「ニヌファブシ」を手掛けるのは、映画の舞台となった伊江島出身のシンガーソングライターAnlyさん。コメントでは「私は伊江島に生まれ育ちました。穏やかな島の風景の端々に影を感じるときがあります。戦争の傷跡は人の心、自然、建造物、あらゆる所に80年経った今も残っています」と生まれ故郷である島の空気について触れている。
さらに、沖縄の言葉で北極星を意味する「ニヌファブシ」をタイトルにした楽曲については「相手を理解しようとする姿勢や、共に考える仲間がいるから様々な視点で物事を捉えることができることを学びました。それは平和への一歩だと思いました」と制作意図を語った。
映画『木の上の軍隊』は6月13日沖縄先行公開、その後7月25日に全国で公開される。

OKITIVEでは、映画公開にあわせて主演の堤真一さんと山田裕貴さんのインタビューも掲載予定!

Information

終戦を知らず木の上で生き延びた日本兵は何を思ったか? 戦後80年、沖縄と戦争を考える 映画『木の上の軍隊』
映画『木の上の軍隊』

主演:堤真一 山田裕貴
脚本・監督:平一紘
原案:井上ひさし
主題歌:Anly「ニヌファアブシ」

6月13日 沖縄先行公開
7月25日 全国公開

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