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不安のない学校生活を”当たり前”に。沖縄が第1号!陽明高校・高等支援学校で「どこでも生理用品が手に入る社会」を目指す取り組み
NPO法人「レッドボックスジャパン」が、2025年11月からユニ・チャーム株式会社と連携し、生理用品提供の新たなモデル構築に乗り出している。
レッドボックスジャパンは「赤い箱」に詰めた生理用品を学校へ寄付し、すべての学生が生理期間中も安心して学校生活を送ることができるようサポートに取り組んでいて、これまでに全国で540校、沖縄県内でも多数の小中高・支援学校に生理用品の寄付を実施してきた。
今回、県立陽明高校・高等支援学校(浦添市)が新しい取り組みの実証導入の“第1号”となった。新たな試みの中での学生たちの利用状況、学校現場で見えてくる現状や課題などについて、同校の校長と担当教諭に話を聞いた。
目次
安心して学業に集中できる環境を「当たり前」に
レッドボックスジャパンの核となる活動は、生理用品を学校に寄付することで、すべての女子学生が不安なく学業に集中できる学習環境を整備すること。
近年は生理用品の購入に困難さが生じる「生理の貧困」が社会問題として注目されている現状があるものの、その深刻さについての社会的な理解は依然として不十分なままだ。
さらに言えば、そもそも殊更に「貧困」という経済的状況に注目せずとも、自分の意思で抗うことのできない生理的な現象によって、学生の学びの機会が制限されてしまうような事態があってはならないはずだ。
そうしたことに煩わされず、全ての学生が安心して学校で過ごせることこそが健全な状態だし、それを「当たり前」にできる環境をしっかりと築くことが未来を担う学生たちを取り巻く“大人たち”の役割だろう。
しかし、残念ながら「安心して学べる環境」はまだ多くの場所で実現できていないと言わざるを得ないのが現状だ。
陽明高校・高等支援学校が「どこでもソフィ」をいち早く導入
そんな中、レッドボックスジャパンとユニ・チャームが連携し、陽明高校・高等支援学校で生理用品を提供する新たな取り組み「どこでもソフィ」の実証導入が始まった。生理用品を必要な時に衛生的に提供する持続可能な運用モデルを学校現場で検証することが目的だ。
レッドボックスジャパン理事の照屋健太郎さんは「今回1個ずつ生理用品が取れるディスペンサーを開発したソフィーさんとパートナー関係を結んだのですが、いち早く反応して全国で初めて導入してくれたのが陽明高でした」と説明する。
同校は以前からレッドボックスの支援に申し込んでおり、その延長線上で今回の取り組みにも応募した。11月から保健室のトイレに「どこでもソフィ」のディスペンサーを設置し、現在稼働中だ。
ディスペンサーには完全密閉型個包装ナプキン(『ソフィSPORTS羽つき』)が採用されており、個包装によって衛生面にも配慮された形で提供されている。
同校で養護教諭を務める大嶺美希さんは、女子学生たちが気軽に保健室に訪れていることについて触れながら、設置してからの様子について以下のように語る。
「トイレにあるからどうぞ、という感じで学生たちに伝えているのですが、そうするとみんな気負わず使ってくれています。今日もナプキンを補充したばかりですが、着実に減っていて、ちゃんと需要があるんだなと感じています」
大事なのは「本当に必要とする学生に届ける」こと
大嶺さんは「実際の困窮家庭においても、困窮しているという理由での受け取りはあまり聞いたことはありません。忘れてしまったとか、急になったからという理由が多い」として、困窮の有無にかかわらず誰もが利用できる環境の必要性を語る。
同校の赤嶺信一校長も大嶺さんに賛同した上で、本当に支援を必要とする学生に届くための工夫が重要だと強調した。「誰でも利用できる環境を作らなければ、本当に欲しい人まで届かないと思います」
また、特に上の世代の男性からは生理用品が“恥ずかしいもの”として認識されてしまいがちな現状についても言及する。
「大人よりも学生たちの方が全然違和感なく対応しているように感じます。大人の方がね、少し困っちゃってますね。『こんな商品を学生たちに見せていいの?』と言ったりして(苦笑)」
こうした認識そのものや、この認識に基づいたさまざまなルールによって女子学生たちが直面する困りごとの多くは、社会制度が男性の目線に偏って設計されていることに要因があると言っていい。今回のような取り組みは、そうした“歪み”を可視化し、解きほぐすための契機になるはずだ。
「どこでも生理用品が手に入る社会」へ向けて、広がりを
赤嶺校長はこうした活動について「当たり前のように広まっていけば良いこと」と述べて、学校教育現場、ひいては社会全体への拡大を期待する。
「学校現場では何か新しいことを入れるのはすごく敷居が高い。『また負担が増えるの?』と思われがちですが、今回の取り組みについて本校では大嶺さんの姿勢もあって『みんな普通にやってること』ということで、すんなりと導入出来ました。こうした動きが波及していくと、学生の皆さんにとっても社会にとっても良い動きになると思っています」
今回のレッドボックスジャパンとユニ・チャーム協働の取り組みは「どこでも生理用品が手に入る社会」の実現に向けた一歩で、学生たちの学業と健康を守る重要な“インフラ整備”という意味で、意義は大きい。
ただし、今後さまざまな場所への広がりがなければ、大きな変化は訪れないのもまた事実だ。学生たちが自身の能力を最大限に発揮できる教育環境を作り上げていくことは、長い目で見れば社会全体が良くなることへとつながっていく。
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