公開日
長嶺 真輝

長嶺 真輝

琉球ゴールデンキングスのDFに綻び———「正しい方向の努力を…」荒川颯が抱く課題感と決意に見る改善ポイントは

琉球ゴールデンキングスのDFに綻び———「正しい方向の努力を…」荒川颯が抱く課題感と決意に見る改善ポイントは
フットワークを生かして激しいディフェンスを仕掛けるキングスの荒川颯=12月24日、沖縄サントリーアリーナ(長嶺真輝撮影)

Bリーグ1部(B1)西地区の琉球ゴールデンキングスは12月24日、沖縄サントリーアリーナで東地区の川崎ブレイブサンダースと今季第26戦を行い、90-96で敗れた。失点数は今シーズン最多。クリスマスイブの夜、ホームに集結した8,000人超のファンに勝利を届けることはできなかった。

通算成績は17勝9敗で西地区4位につけるが、足元の状況は厳しいと言わざるを得ない。川崎は現在、東地区で13チーム中11位。2試合前のアウェー戦でも西地区最下位の富山グラウジーズに80-90で敗れている。

スコアを見れば一目瞭然だが、最大の課題は失点の多さだ。今シーズン、失点が90点以上に上ったのは3試合のみだが、そのうちの2試合がこの川崎戦と富山戦である。直近の3試合はヴィック・ローが不在の中、ジャック・クーリーとアレックス・カークという重量級ビッグマンのプレータイムが伸び、機動力に翻弄される場面が目立つ。

改善のポイントは何か。

篠山竜青が25得点13アシスト、ゲーム支配される

琉球ゴールデンキングスのDFに綻び———「正しい方向の努力を…」荒川颯が抱く課題感と決意に見る改善ポイントは
ベンチから小野寺祥太に指示を送る桶谷大ヘッドコーチ(長嶺真輝撮影)

「ずっとつかみきれない感じのゲームになってしまった」。川崎戦後、桶谷大ヘッドコーチ(HC)は苦い表情を浮かべ、この試合を振り返った。

川崎のエースガードで、今季の3ポイントシュート成功率が40%を超える篠山竜青に対し、序盤からハードショー(スクリーナーのディフェンダーが相手ボールマンにプレッシャーをかけること)を仕掛けてボールを離させるように仕向けた。しかし、「後ろの連動がなかなかできなかった」(桶谷HC)とペイントエリア付近にパスを通され、スコアを重ねられた。

ビッグマンが高い位置に出れば、当然ゴール下付近は手薄になる。そこを他の選手がどうカバーするか。チームとしての連動で埋めなければならない部分が、なかなか噛み合わなかった。

結果、篠山は前半だけでアシスト9本。後半はドロップ(スクリーナーのディフェンダーが下がって守ること)気味のディフェンスに切り替えたが、今度は篠山に後半だけで4本の3ポイントシュートを決められる。

第4Qにフル出場した荒川颯が主にマッチアップしたが、難しいプルアップシュートもことごとく沈められた。第4クオーターでは190cm以上のサイズがある脇真大をつける場面もあったが、状況が大きく変わることはなく、最終的に篠山に25得点13アシストを許した。

脇はハンドラーとして縦に切り裂く力がある一方、この試合でターンオーバーが三つ。一方、荒川はハーフコートにおけるピックプレーに対するディフェンスなどで課題があるが、この日は3ポイントシュートを3本決めてタッチが良かった。

それらを念頭に、何を優先事項に置くかという部分で、桶谷HCは「今日は自分の中で『うーん』という采配になっちゃったところもあります」と、ラインナップの最適解を探る中で試行錯誤があったことを明かした。

篠山は第3Q終盤でファウルが四つとなった中、勝負どころの第4Qにフル出場し、このクオーターだけで15得点2アシストを記録。桶谷HCのコメントを借りれば、「あっぱれ」な活躍だった。ただ、キングスとしてはファウルをしてでも勢いを止めるようなディフェンスや、意図を持って篠山から五つ目のファウルを引き出すようなオフェンスをやり切れなかった部分は、悔やまれる部分だろう。

荒川颯が語る「ハードワーク」の意味

琉球ゴールデンキングスのDFに綻び———「正しい方向の努力を…」荒川颯が抱く課題感と決意に見る改善ポイントは
ドリブルでボールをコントロールする荒川颯(長嶺真輝撮影)

警戒していた篠山を乗せてしまった要因として、指揮官の指摘にもあったように、前半にハードショーを仕掛けながら、パスを回された後の「連動性」が低かったことが挙げられる。ローが不在の中、機動力が高くはないクーリー、カークのところのマッチアップをスピードで狙われたり、ピック&ポップから3ポイントシュートを決められたりする場面は多く、いかにスムーズなローテーションを維持するかは大きな課題だ。

守りのズレを、コート上の感覚で言語化したのが荒川だ。

ディフェンスの改善点を聞かれ、「連動性だと思っています。例えば、アレックスやジャックがハードショーに出た時に、その後に連動性をもってチームでどう守るかが本当に足りていない部分です。そういったハードワークが大事だと思います」と語った。

ここで言う「ハードワーク」は、運動量の多さのみを示しているわけではない。攻守において、裏方的な役割を含めて、いかにチームファーストで動くことができるか、ということである。チーム内での競争も激しい中、荒川はこの部分を徹底する必要性をより強く感じている。

「今のキングスは、チームとして勝つという部分とは違う方向に行ってしまっていると感じます。これだけ選手がいて、プレータイムが少なくなる選手もいる中、『もっとできる』という気持ちは全員が持っていると思います。チームが強くなるためにどう努力をするか、どう準備をするか。正しい努力の仕方を、全員が責任を持ってやっていかないといけないと感じています」

より具体的なコメントを発し、強い決意を示した。

「目に見えて評価される部分として、たくさん点を取るとか、1対1のディフェンスをハードにやるとかはもちろん大事ですが、それ以外の部分で、どうやったら全員が気持ち良くバスケットをできるかが重要です。今は悪循環に陥っていると感じます。ディフェンスの連動やオフェンスのスペーシングなど、基本的な部分を僕が一番意識して、表現できたらなと思います」

年末年始のホーム4連戦へ、天皇杯前に改善できるか

琉球ゴールデンキングスのDFに綻び———「正しい方向の努力を…」荒川颯が抱く課題感と決意に見る改善ポイントは
一体感を向上が求められるキングス(長嶺真輝撮影)

岸本隆一も「もっと一体感を生んでいかないと、なかなかチームディフェンスは機能しないと思います」と語り、荒川と同様な課題を感じているようだ。改善に向けた以下のコメントは、異口同音な指摘だろう。

「隣りの選手の良さを理解して、『良いところを引き出してあげよう』『補ってあげよう』という気持ちがあれば、おのずとチームディフェンスにつながっていくと思います。具体的な話じゃないかもしれませんが、僕はそういうチームの雰囲気を信じているタイプです。それがどういったきっかけで生まれていくのかは正直分からないですが、そういうところが大切だと思っています」

川崎戦では同じような得点パターンで失点が続く場面も多かった。「連続して同じことを繰り返しやられていることは、事実、問題としてあるので、チームとして早めにリアクションしていかないといけないと感じます」と試合中に修正する重要性にも触れた。

キングスは12月27、28の両日に仙台89ERS、年明けの1月3、4の両日にシーホース三河と、いずれもホームで対戦する。その直後には、東京で集中開催される天皇杯全日本選手権(1月6〜12日)が控えているため、この年末年始の4試合でいかに立て直すことができるかは、タイトルの懸かる大一番に向けた鍵になるはずだ。

岸本も「年末年始はホームゲームが続くので、必ず皆さんが『観に来て良かった』と思えるような試合ができたらいいなと思います」と決意を語る。ディフェンスの綻びと真正面から向き合い、「正しい努力」を重ねて改善できるか。注目だ。

OKITIVE公式インスタグラムはこちら!
OKITIVE公式インスタグラムはこちら!

あわせて読みたい記事

あなたへおすすめ!