台風にも停電にも負けず！なぜ食べ続けるのか？島豆腐チャレンジが1000日の節目　豆腐愛にあふれる男性

3年前の2020年から、毎日欠かさず島豆腐を食べ続ける男性が、このほど1000日を達成し、一つの節目を迎えた。

男性は、なぜ島豆腐を食べ続けるのか…その思いを取材した。

このままなくなってしまうのが本当に怖い

伊志嶺哉さん
「2020年の豆腐の日（10月23日）から毎日、豆腐を食べてフェイスブックにあげようと決めました。今日が984日目になります。温かい豆腐を食べるのは、日本で沖縄だけなので、一人の島豆腐ファンとして、このままなくなってしまうのが本当に怖いんです」

古くから沖縄の食文化を支えてきた島豆腐（しまどうふ）。

スーパーでは、できたてのあちこーこー（熱々の）豆腐が並び、買物客は温度を確認しながら豆腐を購入する。

いまでは見慣れた光景だが、2021年に温かい島豆腐の販売に新たな基準が設けられた。

HACCP義務化で製造をやめる豆腐店も

国際的な食品衛生管理基準・HACCP（ハサップ）が義務化されると、島豆腐に対し「温度が55度を下回ったら、3時間以内に消費するか冷蔵する」というルールが適用された。

これにより、スーパーでの販売時間が短くなり、売り上げに影響が出るとして、あちこーこー豆腐の製造をやめる豆腐店もあった。

那覇市に住む、伊志嶺哉（ちかし）さんは、「毎日、島豆腐を食べる」というチャレンジを続けている。

伊志嶺哉さん
「島豆腐は、みんなが買わなくなるとなくなってしまうよということを伝えたくて、まずは私から食べようと思いました。基本的には、ごはんの代わりみたいにいろいろなものをのせて、カレーをかけてみたり、餃子をのせてみたりしています」

2020年から始めたチャレンジは、この日984日目を迎えていた。

伊志嶺哉さん
「温かい豆腐を食べるのは、日本で沖縄だけですので、一県民として一人の食品衛生のプロとして守っていきたいです」

こんな厳しい基準だと潰れてしまう

食品検査会社を経営していてしている伊志嶺さんは、HACCP義務化に向けて、島豆腐の手引書の作成にも携わった。

大学教授や豆腐店でつくる組合の役員などと議論を重ね、これまで曖昧だった保存期間を明確化し、安全に温かい島豆腐を販売できる「55度を下回ってから3時間」という基準を作った。

伊志嶺哉さん
「安全を考えると、どんどん厳しい方向に向かっていきましたので、『55度』『3時間』が最大限のバランスをとったものになりました。この条件だと、豆腐店を守れるんじゃないかと思いました」

しかし、豆腐店からは厳しい意見が上がった。

伊志嶺哉さん
「こんな厳しい基準だったら、潰れてしまうというふうにお叱りといいますか、『たいへんなんだよ』っていう声をいただきました」

原料の高騰や後継者不足。それでも続ける理由

一力食品 前川朝稔さん
「大豆は5年前の2018年より倍、燃料やガス関係もみな上がってきていますけれども、豆腐も2022年は一年に2回値上げしたんですが、その分では追いつかないんですよ」

原料となる大豆の価格高騰や後継者不足など、豆腐店を取り巻く環境は厳しく、HACCP義務化は業界にさらに追い打ちをかけた。

一力食品 前川朝稔さん
「HACCP前の売り上げから、一気に3割は落ち込んだんですね。せっかく作って店舗に持って行っても、検温で55度以下だと納品できないんですよ。これじゃあ商売にならないと思いました」

一度は店をたたむことも考えたという前川さんだが…

一力食品 前川朝稔さん
「この、あちこーこー豆腐をなくすわけにはいかない。守っていこうと思いました」

一力食品では、温度管理の対策として、小売店に保温機を設置。

販売時間を伸ばして、食品ロスを減らし、商売を続けることができた。

一力食品 前川朝稔さん
「チャンプルー（島豆腐と野菜の炒めもの）や、揚げものをつくるとしても、料理ができる豆腐はやっぱり沖縄の島豆腐しかないんですよね。そういう意味では、ほかの食材には負けず劣らずで愛してほしいと思います」

1000日の節日はまさか台風！チャレンジを通して業界を支援

2023年8月5日、ついに1000日を達成！

1000日目は、家族みんなで豆腐を食べた。

伊志嶺哉さん
「1000日目に、まさか台風が来て停電している状況で、お祝いをやるなんて想像もしていなかったのですが、それが沖縄らしくていいのかなと思います」

伊志嶺哉さん
「HACCP導入で、豆腐店が困っているというところから始まった豆腐チャレンジなんですが、毎日朝早くから豆腐を作って、小売店に届けてくれているからこそ、私たちが豆腐を食べられています。みなさん一人ひとりが豆腐を食べてくれることが、一番の豆腐屋さんの応援になるので、1000日と言わなくても少しでも豆腐を食べる回数を増やしてくれたらうれしいなと思います」