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招待試合で沖縄尚学は智辯学園と4対4のドロー。この日も登板しなかった末吉良丞は夏の大会に間に合うのか。
夏の沖縄県高校野球大会の開催まであと1週間切ろうとしている時期、第55回沖縄招待野球試合が沖縄セルラースタジアムにて行われた。
この招待試合は、毎年選抜甲子園を沸かした強豪高校と試合を組む県高野連の強化プロジェクトだ。今年は、選抜甲子園準優勝した智辯学園を招いて、沖縄尚学、エナジック、興南、名護高校の4校が6月6、7日にそれぞれ2試合ずつ戦った。
梅雨真っ只中ということで天候が危ぶまれたが、第一試合の6日午前10時のプレーボールには曇天だった空に晴れ間が差し込む。
舞台は整い、前年度夏の甲子園優勝校の沖縄尚学対今春選抜準優勝校の智辯学園の試合が行われた。
この招待試合は、先のワールドカップ壮行試合キリンカップ日本対アイルランドのように、怪我人を出さないおざなりプレーで終わるのとはわけが違う。
対戦する両チームともレギュラー当落線上における選手たちの試金石のゲームでもあり、最後の夏に懸ける3年生の熱き思いで球場内を1充満させている。
選抜準優勝投手・杉本真滉の底知れぬポテンシャル
沖縄尚学の先発は、投手陣の底上げのためにも頭角を現して欲しいサスウポーの久高大瑚。
智辯学園はエースの杉本真滉。選抜甲子園で彗星のごとく現れ、MAX149キロのストレートと鋭く曲がるスライダーを武器に、準決勝の4試合に登板し35回で失点2(自責点1)。しかし、決勝の大阪桐蔭戦で7回までに7失点取られ球数制限により降板。
春の奈良県大会は疲労を考慮してのベンチ外で、この試合は選抜以来の先発を任されたマウンドだった。末吉を彷彿とさせる球の勢いとスライダーで6回被安打2、失点1の内容でマウンドを降り、選抜準優勝の立役者に恥じないピッチングを見せる。
背番号1新垣有絃、3イニングでエラー絡みの4失点
先発久高も毎回安打を許し得点圏にランナーを進めるも4回無失点で切り抜ける。そして5回からは背番号1を背負った新垣有絃がマウンドに立つ。
立ち上がりは無難に無失点に抑えるが、6回にヒットで出たランナーの送りバント処理の悪送球からリズムが狂い、その後の外野守備の乱れにより4失点を献上。
新垣はこの試合を振り返る。
「真っ直ぐは高めの球で空振りも取れてたんで良かったなと思います。ただ追い込んでからの決め球だったり、スライダーを当てられる高さに投げてしまったことで間を抜けたり、ヒットにされたりして失点に繋がったので修正して、次はやります」
沖尚は、智辯のエース杉山から代わった二人のピッチャーを攻め立てて小刻みに点を重ね、4対4の同点のまま9回規定により試合終了。
結局、この試合も末吉は投げなかった。というよりベンチ入りさえしていなかった。
末吉良丞、いまだ左肘に違和感あり!?
春のチャレンジマッチ、春の九州大会でも一度も登板がなかった末吉良丞について、いろんな憶測が沸き立っている。
そもそも九州大会においては、左肘に違和感があるためノースローと比嘉公也監督は決め込んだ。この違和感というのがクセモノ。親しい記者には「右肘靭帯損傷の疑い」と漏らしていることもあり、試合後比嘉監督に直撃してみた。
「多分、今僕が肘を診断しても“疑い”って出ると思うんです。炎症ですから大怪我ではないと思います」
別に何が原因で登板できないのかを暴きたいのではない。
正直、夏の大会までに間に合うのかどうか、だ。ストレートに訊いてみた。
「 “投げられる”とは言っているんですけど、将来がある身ですので……。多分、間に合うとは思うんですけど、様子を見ながらですね。
将来がある子なので表現が難しいですけど、目先にこだわらずに怪我をさせちゃいけないと思います。
彼も後悔はしたくないとは思いますし、将来を決めるうえでも投げてアピールしなきゃいけない部分もありますが、投げさせて怪我したら元も子もないですので。病院やいろいろな方々としっかりと相談しながらやっていきたいと思います」
最初歯切れが悪いように感じたものの、比嘉監督自身すでに先を見据えたうえでしっかりと言葉を紡いでいるのがわかった。
剛腕・末吉良丞の復活を僕らは信じている
この夏、末吉が投げる姿を誰もが期待をしている。だからといって、こちらの期待通りに物事が進まないのが世の常だ。
でもだ。かつての西川遥輝(現・北海道日本ハム)の例だってある。智弁和歌山入学直後の春の大会で3試合連続ホームランを放ちスーパー1年生として脚光を浴びた。
しかし夏の県大会中の練習で右手首を骨折し三回戦以降欠場を余儀なくされた。しかし、3年生の合言葉で「西川を甲子園に連れて行こう」で見事、甲子園大会から復帰したのである。
夏の大会初戦までは2週間しかないが、甲子園まではまだ2カ月もある。
どうしても投げる姿が見たいのではなく、あくまでも万全の状態で投げて欲しいという意味を込めてだ。
この招待試合開始前に、末吉は控えの選手たちと一緒にグラウンド整備を行っていた。
そして5回終了後に行うグラウンド整備も一目散に出ていって脇目も振らずに丹念に整備し、ベンチに戻ろうとした際、一瞬の交差があった。智辯のエース杉本から一声かけられたのだ。ほんの一瞬だけの会話だったが、二人のコントラストは無情にも儚かった。
「投げないのかよ」なのか「甲子園でな」なのか、杉本からどんな一言をかけられたのかはわからない。
ただ、杉本は選抜準優勝投手として間違いなく末吉を意識し、一緒に投げ合いたかったはずだ。
それは、末吉だって同じだ。
今週13日から全国トップをきって夏の沖縄県高校野球大会が開催される。
昨夏の末吉を見ると、僕らはまばゆい未来へとそそがれる思いしかなかった。
でも今は違う。たとえ遠回りになったとしても、それが必要な遠回りだと皆はわかっている。
もうすぐ、また熱い夏がやってくる–––––。
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