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チャンレンジマッチ沖尚 対 エナジックはエース末吉が登板せず沖尚が勝利。比嘉監督の選抜敗退について自戒の念を込めた鼓舞とは
「負けて得るものってないと思ってますから」
試合後、サッカー界の名将ジョゼ・モウリーニョでも放たない言葉を発した沖縄尚学監督の比嘉 公也の顔は、一度も緩むことはなかった。
4月12日に第19回チャレンジマッチ、選抜出場校の沖縄尚学と春季高校野球優勝校のエナジックが対戦し、3対1で沖縄尚学が勝った。点差だけを見ると接戦の試合に思えるが、両チームともフォアボールで塁上にランナーを溜めつつも得点チャンスにいい当たりが真正面に突いたり、牽制死、盗塁死が重なったりと、俗に言う“しょっぱい”試合内容。
沖尚の先発“第3の男”田場典斗は2回裏に1死満塁になったところで大城諄来にスイッチ。その後、饒平名、津嘉山と小刻みに継投し、3対1とリードしたところで8回からは新垣有絃がマウンドに上がった。
それまでの4投手の簡単にフォアボールを出すなどの落ち着かない投球内容と違って、新垣は2回パーフェクト2奪三振とまったく危なげない投球で試合を締めくくった。
この勝利により沖縄尚学は夏の県予選の第一シードを決めた。
無駄なフォアボールが多すぎで戦う以前の問題
比嘉公也監督は、この試合について投手陣のフォアボールの多さを言及した。
「フォアボールが多すぎるっていうのは 戦う以前の問題で、とにかく無駄なファウルボールが多すぎました。牽制やキャッチャーが刺したりしたことで失点を最少得点に抑えられた感じであり、“何のために練習してるの?” と今日のミーティングで聞いてみようと思っています」
簡単にフォアボールを出していくことが一番試合を壊す要因でもあることは、野球のイロハの“イ”だ。そんなことは小学生でもわかることなのに、繰り返してやってしまう。だから野球は難しくもあり、奥が深い競技でもある。
「二人(末吉、新垣)に頼りすぎている学年なので、そういった意味でも他のピッチャーからしたら公式戦の場慣れみたいなのが少し足りない部分はありましたし、誰がいつ怪我によって投げられなくなるかわからないので、実戦経験は大事かなといいと思います。
末吉に関しては、別に無理させる時期でもないので今日は投げさせませんでした」
末吉温存の前にエラーなくす守備率100パーセントを目指す
およそ3週間前の選抜甲子園初戦敗退について訊くと、険しい顔がより濃くなった。
「基本的には負けて学ぶもの得るものってないと思うので、勝ってからしか得るものはない。そこを凌いだとか、少ないチャンスをものにしたとか、あの場面でのアウトの取り方など、勝ってからしか学べてないと基本的には考えてます。
あの負けは、単純に力を出せなかったらこうなるっていう、ただただ後悔だけの試合だったんじゃないかなと思います。
前年度の選抜では、戦う前から横浜をあまりに上に見過ぎていた部分があり、あの負けから“とにかく十分やっていける”っていうことをミーティングで言い続けました。
要するに負けの内容なんです。今回の選抜では、 一生懸命やっていいプレーしたけど相手のほうが勝っていたというゲームではないです。
ミスってただただ自滅なので、力を出さなかったらこうなるっていう教え以外、何の学びもないと思います。まず“際の強さ”というか、自分のエリアは100パーセント捕る。
バッティングは10球のうち3本打てばいいバッターですけど、守備は10回来たら10回捕って当たり前な世界で、ひとつでもミスしたら下手くそ扱い。
それぐらい僕らは守備に重きを置いているため、守備率100パーセントを目指していきたいと思います」
勝って兜の緒を締めすぎるほど比嘉公也監督に妥協点は見当たらない。
夏までに現状のチーム力をどう上げていくか、ひとつは九州大会の出来にかかっているといえよう。
最後の夏の甲子園は、背番号1をつける
右のエースの新垣有絃は、背番号20を背負って囲み取材に答えてくれた。
「8回からの登板ですが、自分が崩れてしまうと流れが相手に行ってしまうと思ったので、しっかり三振を取って流れを相手に渡さない気持ちで投げました。
変化球でどんどんカウントを取れて、真っ直ぐでもインコースにしっかり最後踏み切れていたので、このコンビネーションはいい収穫になったと思います。
とにかく、自分と勝負するんじゃなくて相手バッターをしっかり見ながら投げられました」
チェンジアップだろうと、ツーストライクからのフィニッシュだろうと、緩急を使い分けながらのピッチングをすることで、流れを渡せずにゼロで抑えきろうという意識で投げたという新垣。
蚊の鳴くような声でもしっかり自己分析でき、ゲームでの役割をしっかり果たせられたことに及第点をつける。ただ、スピード的には140キロに届くかどうかで、その部分が一番の反省点でもあった。
「甲子園に出て注目される立場であるんですけど、それを上回って自分の力を出したいなと思います。
どんな舞台でも緊張はするんですけど、甲子園に3回も出させてもらったことで変に力むことなく投げれているところは成長したなと感じますし、今は真っ直ぐの質をもっと上げていって、真っ直ぐでも空振りを取れるピッチャーを目指します。
最後は背番号1を背負って甲子園に立ちたいです」
常に謙虚に控え目に、時折伏し目がちに答える新垣だが、最後の言葉だけは真っ直ぐ目を見据えて言った。
盤石の二枚看板・末吉と新垣の内に秘める決意
全国トップレベルの高校2年のピッチャー2人を擁して夏の甲子園を優勝したのは、1世紀を超える甲子園史の中でも沖縄尚学ただ一校である。
全身ゴムまりの体つきの愛嬌満載でチビッコに大人気の左の剛腕・末吉良丞と、バネの利いたスレンダーボディに甘いマスクで母性本能をくすぐる右の快腕・新垣有絃。すべてにおいて好対照の二人は入学時から切磋琢磨し続けている。
栄光の夏から一転して昨秋に背番号1を新垣に譲った末吉は、冬から春にかけて試行錯誤しながらもなんとか感覚を取り戻して調子を上げていった。
一方、新垣は背番号1を奪還したはずに見えたが、選抜甲子園では背番号10、そしてチャレンジマッチでは背番号20を背負った。それゆえに、絶えず自己分析しながら球の質をあげると同時にスピードも上げていくことを念頭に置いている。
幾つかの強豪校の情報によれば、左右の打者関係なく決め球を持っている新垣のほうが攻略しにくいという声もあがっている。
とにかく、プロ注目の超高校級の二人だけに、今夏はどのようなストーリーを描いていくのか。最後はどれだけ闘志を秘め、力に変えられるかにかかっている–––。
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